近年は劇団民藝の舞台を中心に活躍、『SOETSU』は三年におよぶ人気公演となった。俳優キャリアは五十年を超える。
「よくここまで続けてこられたな、というのが実感です。俳優が面白いのは、やろうと思えば誰でもできるところです。たとえば昨日までスポーツ選手だった人が演技で賞を取る。でも、昨日まで俳優だった人間がいきなりスポーツ選手にはなれないんですよね。俳優という仕事にはいろいろな分野から来た人たちがいるわけです。
そういった意味で、俳優は素材の部分が多いんでしょうね。昨日まで素人だった人が監督の言われた通りにやれば何十年やってきた人より素敵に映ることがある。そんなところがとても面白い。そういう中で、僕に仕事が来るのはありがたいことです。
台本をもらった時、初めて『映像化が決まったんだな』と確信が持てます。話はあっても流れることはたくさんありますから。夏八木勲さんは台本をもらうと必ず神棚に置いていたそうです。若い頃にその話を聞いた際は『随分と大層なことをするな』と思いましたが、今はその気持ちがよく分かります」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/渡辺利博
※週刊ポスト2018年11月9日号