「報告書」の発表を行なったAV人権倫理機構は出演強要問題が話題になった2017年10月に弁護士や大学教授ら有識者で設立された。
「女優の人権を守る動きは急速に広がっています。それを支えるのがIPPA(知的財産振興協会)という事務所やメーカー、販売店までもが所属する審査団体です。所属する事務所は女優との契約書でも“出演は本人の意志”といったことを確認しなければならず、制作現場でも“AV出演を強要していない”“性感染症にかかっていない”ことを示す書類をメーカーや共演者に見せる必要があるなど厳格なルールが定められている」(業界関係者)
だが、こうした取り組みも万全とはいかない。ある事務所幹部が実態を語る。
「性感染症の検査費用は原則、事務所が負担する。大手となれば100人以上所属しているため、検査代だけで毎月100万円以上かかる。また、最近の女優は小遣い稼ぎで1、2作品しか出ない“素人”が多いため、性感染症への意識が低い。事務所も強く言えず、“仕方ないか”で済ませている面はある」
過激化するAVの内容も出演者にとってはリスクが増す。
「最近流行のネット配信はIPPAに所属してない個人や同人制作によるものが多く、事務所も性病検査の提示義務はない。それでいてギャラはいいから、アルバイト感覚で出演する女性が増えている。事務所も提示義務のない撮影に女優を出演させてはいけない決まりだが、必ずしも守られているわけではない」(同前)
今回のHIV感染発覚後の対応が混乱を招いたことは否めないものの、一方では業界内外でHIVへの誤解と偏見が拡大しないよう苦慮した形跡も見える。