暴対法反対デモには暴力団も参加した(時事通信フォト)
溝口:竹中武は、野球賭博を開いてカネを儲けたという容疑で逮捕されたが、自分は金を取ったことはないと主張しました。警察は「こんなでっかい財布にカネを入れるのを見た」という元幹部の目撃証言を持っていて、1984年7月何日と具体的な日付も特定していた。ところが、この財布は竹中武が世間に1万円札の新札が出た1984年11月1日に合わせて、その新1万円札を500枚収められるように岡山駅前の高島屋に特注したものであったことを、注文票の控えから証明した。警察が出してきた日付の矛盾を突き崩し、無罪を勝ち取ったんです。このロジックは弁護士ではなく、竹中武自ら考え出したと言います。
鈴木:竹中兄弟は武闘派のイメージがあるから誤解されやすいかもしれないけど、そもそもヤクザってめったやたらに法律を破っているわけじゃないんですよ。ふだんは遵法精神があって、法律をしっかり守る。肝心なところで破るだけ(笑い)。
◆暴対法は憲法違反?
溝口:そうそう。その線引きがしっかりしている。憲法と言えば、山口組が、「暴対法(暴力団対策法)は憲法違反である」と兵庫県公安委員会を訴えたこともありました。1992年、暴対法に基づく「指定暴力団」とされたことを不服とし、神戸地裁に「暴対法は憲法の『結社の自由』(第21条)に違反している」と主張したのです。
鈴木:会津小鉄会(京都)、工藤会(北九州)も同じように訴えたんですよね。
溝口:そのとき山口組は、学生運動出身の遠藤誠という左翼系弁護士をつけた。
鈴木:暴対法反対の理論的支柱となった人ですね。
溝口:権力に対して戦ってくれるということで、ヤクザは共産党系の弁護士に頼むことが多かったんです。
鈴木:敵の敵は味方、みたいな話ですね。
溝口:最近は共産党系が弱体化したこともあって、あまりやってないようですが。