菅官房長官はネット中傷に適切に対応すると会見で発言(時事通信フォト)

菅官房長官はネット中傷に適切に対応すると会見で発言(時事通信フォト)

◆匿名の誹謗中傷も特定される

 もし、インターネット上で誹謗中傷したとしても、ネットで悪態をついている自分が誰なのかは自分にしか分からないし、何か具体的に咎められることはないと思っているかもしれない。

 だが、インターネット上での匿名の書き込みは、見かけだけで実際には実名と紐付けられている。スマホでもPCでも、それがネットに接続すると必ずIPアドレスという、ネット上の住所がつく。このIPアドレスから匿名で発言しているユーザーが契約している携帯電話会社やプロバイダがわかり、そこへ発信者情報開示請求すれば契約者を特定できるからだ。情報開示請求をするためには、プロバイダに対して問題が発生している該当の発信があるURL、掲載された情報、人権侵害になる理由などをまとめて連絡すればよい。

 木村さんの悲劇が報じられたあと、木村さんに限らず有名人を誹謗中傷していたユーザーはアカウントを消して逃亡するという動きが多く見られた。もう問題発言は消してしまったし、だいたい匿名だったんだし、自分は匿名のまま逃げられると思っているかもしれないが、そんなに都合よくはいかない。

 アカウントなどが削除されていても、そのユーザーが接続した記録であるアクセスログが残っている場合は、情報開示請求ができる。Twitterの場合は1ヶ月間残っているため、すぐに行動すれば対処できる可能性があるのだ。ならば1ヶ月経過すれば責任が追及される心配はないのかというと、そうとは限らない。アクセスログが消去される前にログ保存要請を被害者側がしていた場合は、1ヶ月を超えて保存されていることもあるからだ。

 とはいえ、残念ながらSNSは、誹謗中傷する側に都合よくできている。ネットで匿名は見せかけで、実際には実名と紐付けられてはいるが、そこにたどりつくには時間もお金もかかるし、何より精神的な負担が大きい。インターネット上で顔が見えない複数の人に誹謗中傷されると、世界全てに否定されているような気持ちになりがちだ。SNSの名誉毀損で係争した例をみると、実際は非難批判してくる人は一人で複数のアカウントをつくっているケースがほとんどだ。だが、スマホの中では周囲の皆から攻撃されているように感じてしまうため、精神的に追い詰められてしまいがちなのだ。

 Facebook Japan、LINE、Twitter Japanなどが参加する一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)は、名誉毀損や侮辱するコンテンツ禁止を利用規約に記載することを発表。禁止事項についての啓発広報を実施する他、禁止事項等に該当する行為を把握した場合、全部または一部のサービスの利用停止などの措置を徹底するという。

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