ソーシャルディスタンス(他者との距離)を促す街頭の大型画面(時事通信フォト)
神奈川県在住の飲食店店員・城内まり子さん(50代)も、今年6月に新型コロナウイルスに感染。症状はほとんどなかったというが、城内さんが何よりも悔やんでいるのは、自らが知人にうつしてしまった可能性があることである。
「十年来の友人と食事をしたんです。まさか私たちがかかるわけがない、かかっても死にはしない、そんな軽い気持ちでした」(城内さん)
食事の一週間後に、職場同僚の感染が発覚。濃厚接触者である城内さんも、検査の結果陽性だった。
「保健所や病院から聞き取りを受けて、知人と食事をした事も話しました、知人にはごめんね、とメールをしていいたのですが、まさかかかってはいないだろう、うつしてはいないだろうと思っていました。後日、知人の結果も陽性だとわかり、本当になんて事をしたのだろうと涙が止まりませんでした」(城内さん)
城内さんの友人、実は夫に先立たれ、認知症気味の母親と二人暮らしだったため、親族を呼び寄せたり、デイサービスを探したりと大変な苦労をしたという。
「知人は『気にしないで』と言ってくれましたが、気にしないわけがない。私のせいですから…。退院してからも、本当に治っているのか、また再発するのではないかと思うと、家から出られない。家族にうつしてしまい、家族が辛い思いをしたらと思うと、部屋からすら出られない。夫が心配して、心療内科に連れて行ってくれたりしましたが、側から見ると、私はそういう状態なのかとショックでした」(城内さん)
いまだ有効なワクチンもなく、症状の全貌、後遺症の有無など、わからない事だらけの新型コロナウイルス。疑心暗鬼になる人々が増え、ますます萎縮してゆく社会生活。仮に有効ワクチンが開発されたとしても、一度形成された人間感情や社会通念が以前のように元通りになるには、より多くの時間がかかりそうだ。