買い物袋を持つ姿も目撃されていた
“真実”に蓋をして、つとめて明るく振る舞う石村の姿に自分を重ねたときがあったのかもしれない。三浦さんが番組に寄せたコメントが、悲劇の死を遂げた後だと一層、重く響く。
《散る事を見据え、残された日々をどう過ごすべきか…
家族に対して気丈に振る舞う学徒出陣兵がどれだけ辛かったか‥
若くして、自分が居ない未来に希望を託す青年の想いを役を通して考えさせられました》
命、人生、そして死。解けない難題に対峙する姿や、その重みを感じさせまいと無理にでも笑う瞳までもが、『僕のいた時間』で向き合った澤田拓人という役柄でもあり、三浦さん自身でもあった。
自分の人生から目を逸らしたいとき、いろんな人格になれる役者という居場所を見つけた三浦さんだったが、いつしか、役柄の人生と自分の人生とが重なり合い、離れなくなっていった。
捜査関係者が唇をかむ。
「三浦さんが自宅に遺した日記のようなものには、自らの命と向き合う言葉がいくつも連なっていました。NHKに寄せたコメントと同じ、『散ることを見据えてどう過ごすべきか』というはじまりから書かれた日記も。『役の石村裕之について』と続き、『戦時中に肺の病気で役目を果たす事なく帰郷したが、前線で体験した壮絶な体験を顔に出すこと無く作った笑顔で日々を過ごすべきか。苦悩する姿に自分を重ねている』との言葉が記されていました」
三浦さんが演じた石村は、ドラマの中で、精神を蝕まれ入水自殺を試みる。昨年9月、京都・京丹後市でのロケで、死を覚悟して海へと入ってゆく三浦さんの胸には、どのような思いが去来していたのだろう。
「三浦さんは役者としてかなり完璧主義のかたですよね」とは、精神科医の片田珠美さん。
三浦さんは生前、雑誌のインタビューで自分の性格について分析を繰り返していた。
《以前、あるマネージャーに「あなたは完璧主義だから、いい意味でもっと適当にしなさい」と言われたことがあるんです。それで最近は「自分は別に完璧じゃないんだから、100点を出せなかったとしても幻滅しないように」と思うようにしています》(PHPスペシャル2019年1月号)
《困った時は『助けて』と周囲に言えるようになったし、ダメな自分を許したことで、すごくオープンな性格になったと思います》(MORE 2019年10月号)