結婚発表の直後に、別に10年交際していた女性の存在明るみに出たゴールデンボンバー鬼龍院翔。配信生放送で罰ゲーム謝罪をした(時事通信フォト)
詳しい話は控えるが、かつて女性は利用されても諦めるのが珍しくなかった。インターネットの普及期、スマホもSNSもない時代である。
「多くの女性はそうだったと思います。声を上げる手段なんてありませんでしたから」
富田さんは短大卒業後、都内の一般企業に勤め一人暮らしを始めた。もちろんそのミュージシャンが転がり込んできた。年齢を重ねるとバンドの実態すら怪しい状態になってしまった。女性には出産という問題もある。それなのに捨てられ、彼女曰く「売れ時」を無駄にしてしまった。彼はこつ然と消えて、もう数年会っていない。
「行方不明ですね、失踪です。ある日突然いなくなって、どこに消えたのか」
女、借金、狭い業界内の不義理――ありとあらゆる悪い噂のオンパレードだった彼がどうなったか、長年のつき合いだった富田さんすらわからない。当時の仲間の話では彼の北海道にあったはずの実家(公営団地)はすでに引き払われていたという。両親も高齢のはず、すでに亡くなっているか、施設暮らしなのかもしれない。
「死んではいないと思いますけど、どこか住み込みとかで働いてるんでしょうか。おじさんになってから完璧にヒモでしたから。交通費すら私のお金でしたから」
この20年の間、会社員として何度か転職、表立って言えないような夜の仕事もしたという富田さん。この年月もお金も心も、男が逃げてしまえば全部チャラにされてしまう理不尽、さすがに違和感は拭えない。
「でもね、いまは違うじゃないですか、私は自業自得だけど、女性も声を上げられる。恋愛だから許されるって間違ってますよ。金爆もそうでしょう」
金爆とは人気バンド、ゴールデンボンバーのこと。10年つき合ったあげくに捨てて別の女性と結婚したと報じられたメンバーの鬼龍院翔もこのケースだろうか。彼に限らず、近年では女性側が声を上げるケースが増えた。SNSで拡散しやすいことも要因だろう。
「10年ってかわいそうですよね。私は20年ですけど」
結婚に至らず、ズルズルと男女の関係を持ち続けてしまうのはミュージシャンに限った話ではない。売れないころから、無名のころから長年連れ添った伴侶を捨てて新たなトロフィーワイフ、若い女に走る男はいる。アマゾンの共同創設者ジェフ・ベゾスやマイクロソフト会長ビル・ゲイツの離婚騒動などは記憶に新しいだろう。糟糠の妻や彼女を捨てるミュージシャン、なんて例は枚挙にいとまがないが、以前に比べて社会的な批難を目にする機会は間違いなく増えた。DV含め、自由恋愛だからと他人を蹂躙する行為は当人同士の問題であっても社会的には許されなくなった。
「いまも若い子が利用されてるんでしょうね。私のようになってはだめだし、声を上げてほしいです」
ホストまがいの行為で悪質に少女を利用するバンドマンもいる。もうそれが音楽シーンのひとつ、バンド文化というだけでは済まなくなっている。