まるで「多様性の押し付け」ではないかと憤った笹原さんは、すぐさま学校へ乗り込んだ。

「学校に行くと、担任や教頭、校長にまで平謝りをされ、講師の指導や、その指導を良しとしてきた学校側に責任がある、と認めました。ただ私としては、学校だけでなく、講師の責任もあるのではないかと思い、講師と直接話をさせてほしいと訴えました。でも、それだけは勘弁してくれと、担任の男性教師が泣き出す始末でした」(笹原さん)

 のちに判明した事実だが、件の講師は業界ではある程度の知名度があるらしい。公表されているプロフィールによれば有名大卒のカウンセラーなどとあり、著作もある有力者で、地域の学校での授業や、自治体のシンポジウムなどにも登壇。教師たちの思いとしては「大ごとにしたくない」ということではなかったかと、笹原さんは振り返る。

「多様性を否定はしませんが、娘のように中学生で多感な時期に、権威のあるように見える人から”あなたは男性の方が良い”などと言われたら戸惑うに決まっています。自己形成もまだ未熟な子供に、大人でさえ理解が難しい多様性をどこまで考えさせるべきなのか疑問です」(笹原さん)

 筆者も、多様性を否定するつもりはない。性自認についても、男になりたい、女になりたい、どちらにも分類されたくないというのは個人の自由だろう。明らかに人の邪魔をしたり不快にさせない限りは、どんな格好をしても自由で、極論は勝手にすれば良い。だが、自分の論理や価値観を、まして社会経験が乏しく、思考能力に限界のある子供たちに一方的に今すぐ決めることを「良いことである」と教え込み、子供たちを戸惑わせるようなことがあってはならないはずだ。

モテたくてわざと女っぽくしていたのに

 過去に笹原さんの娘のように「戸惑ってしまった」ことがあるという大学生の新庄翔太さん(20代・仮名)も、自らの経験を振り返る。

「姉2人、妹2人という家族環境で育ったせいか、小さい頃から仕草や言動が女の子っぽいと言われてきました。高校の時、LGBTQに関する授業があって、その最中にクラスの男子が”新庄は女っぽい”と囃し立ててきたんです。そしたら、担任が”新庄くんが女っぽくて何が悪い”と怒り出したんです。僕にとって友達の発言は冗談でしかなかったのですが、その後もことある度に、担任が”女の子になりたい願望があってもいいの”とか”いじめられたらすぐ言いなさい”と言ってくる。まあ、面倒見は良い先生だったんですが、そこまで求めていないのにと思っていました」(新庄さん)

関連記事

トピックス

海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
2才の誕生日を迎えた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
【9月6日で19才に】悠仁さま、40年ぶりの成年式へ 御料牧場、小学校の行事、初海外のブータン、伊勢新宮をご参拝、部活動…歩まれてきた19年を振り返る 
女性セブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン