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2017.11.09 15:00  マネーポストWEB

給与所得控除縮小なら年収632万円会社員は約45万円の増税に

給与所得控除の縮小が大増税につながるカラクリ


 財務省は衆議院選挙の投開票翌日の政府税調の総会に、所得税改革の説明資料を提出した。所得税増税の第一のターゲットはサラリーマンだ。政府税調の増税メニューには「給与所得控除」の廃止・縮小の検討が盛り込まれている。

 年収632万円の会社員の場合は、約180万円の給与所得控除が認められている。しかし、財務省は総務省の家計調査をもとにサラリーマン世帯の消費支出から必要経費とみなされる金額を積み上げ、年収632万円の会社員の“本当の必要経費”は「年間約25万円」と試算している。かかっている経費が少ないのに、水増しして節税していると言いたいのだ。

 控除廃止でサラリーマンは具体的にいくらの増税を迫られるのか。本誌・週刊ポストはベテラン税理士の協力で、給与所得控除が財務省の試算した必要経費の金額まで引き下げられた場合の税額を計算した。

 まず前述の年収632万円のサラリーマンAさんの世帯(妻は専業主婦、中学生の子供1人)を想定し、給与所得控除が180万円から25万円になったケースの税額を計算すると、所得税・住民税の合計額が一挙に約45万円増える。47万9000円が92万4000円になるのだ。

「所得控除が155万円縮小されると、実際は給料が1円も上がらなくても、税金の計算上は年収(課税所得)が155万円増えたことになります。その分、税金が増える。このケースでは所得税率の区分が10%から20%に一段階上がり、所得税と住民税が大幅な増税となった」(税理士)

 財務省にとって所得控除の見直しとは、所得税の税率を1%も引き上げずに、控除額を縮小させるだけで思うままにサラリーマンから税金を搾り取ることができる“打ち出の小槌”のような増税術なのだ。

 逆に、妻と子供2人を養うAさんにすれば、給料は増えないのに45万円も増税され、家計はいっぺんに火の車になる。

 それでも財務省は“これまでが優遇されすぎていただけ”という論理で押し通す構えだ。

 もう1人、定年後に会社で再雇用され、年収354万円で働く62歳のBさん(年金はまだ受給していない)のケースでは、給与所得控除が123万円から13万円に減らされ、所得税と住民税を合わせると税金が2倍、約22万円の増税となる。元々合わせて約22万円だったのが約44万円になるのだ。税法が専門の浦野広明・立正大学法学部客員教授(税理士)が指摘する。

「そもそも給与所得控除は会社勤めのために必要な経費だけではない。サラリーマンは労働力という資産を会社に提供して報酬を得ている。その資産を維持するために必要な労働者の家族の維持費(生活費)も含めて給与から控除し、課税しないというのが本来の考え方です。その控除をギリギリまで削るというのは、財務省が増税したいがための屁理屈です」

※週刊ポスト2017年11月17日号

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