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パーティー参加後の笑顔の森昌文氏(写真は2007年)
【全文公開】キャバ嬢に「脱げ!脱げ!脱げ!」 安倍氏国葬責任者、森昌文・首相補佐官が過去に参加した「大仁田厚主催の乱倫パーティ」
 全国で乱交パーティの摘発が相次ぐなか、内閣の中枢である「首相補佐官」が過去、乱倫パーティに参加していたことが分かった。参加女性の証言で、当夜の様子が明らかになった。「このご時世にあの人を登用して大丈夫なのか」──国交省のあるキャリア官僚がこう声を潜める。 俎上に載るのは、8月10日に発表された岸田政権の内閣改造で、首相補佐官の続投が決まった森昌文氏(63)のことである。 森氏は東大工学部出身のキャリア官僚で、1981年に建設省(現・国交省)に入省以来、道路畑を歩んできた。2018年に事務方のトップである事務次官に昇格。今年1月に岸田政 権下で首相補佐官に任命され、9月27日に行なわれる安倍晋三元首相の国葬の実行幹事会首席幹事も務める。 だが永田町では森氏の任命を巡り、身体検査に疑問の声が上がる。 2007年6月、本誌・週刊ポストはプロレスラーで当時参議院議員だった大仁田厚氏主催の「性の乱痴気パーティ」を報じた。大仁田氏が住む都内高級マンションに集まったのは、複数のAV女優と19歳のキャバクラ嬢、20代のコンパニオンなど美女7人。男性は大仁田氏を含む3人で、そのうちひとりが森氏だったのだ(当時は匿名の国交省役人として報道)。 パーティに参加した女性が証言する。「当時の大仁田さんのマンションは4LDKで、リビングは30畳くらい。広々としたテラスと庭もありました。リゾート気分に浸って、まず全員ビールで乾杯。大仁田さんは2人の男性を『どちらも東大卒の国交省キャリア』と紹介しました。森さんは小柄で人の良さそうな印象。『携帯番号教えて』って言われたので、連絡先も交換しました」 当初は合コンに近い雰囲気だったが、女性3人が先に帰宅すると「雰囲気が怪しくなってきた」と参加女性が続ける。「大仁田さんがAV女優に『俺の部屋使ってもいいから2人を遊ばせてやってよ』と囁いたんです。するとそのAV女優は森さんともうひとりの男性にそれぞれ女性をあてがって、『さあ、さあ行ってらっしゃい』って。各々が個室に消えていき、20分くらいでリビングに戻ってきました」 その後、森氏はソファで女性の腰に手を回すなど距離が縮まった。「ここからタガが外れた感じになりました。まずAV女優のひとりが全裸になって、ベリーダンスを踊り出したんです。で、次に男性陣がキャバ嬢の裸が見たいと言い出して。男性3人で『脱げ! 脱げ! 脱げ!』と手拍子であおり立てた。『上だけだったら』と恥ずかしそうにキャミソールを下げて乳首を見せると、『キレイだ!』『若い子の体っていいね』と歓声を上げていました」(同前) 深夜1時にお開きになると、森氏ともうひとりのキャリア官僚は部屋を共にした2人の女性と連れ立って夜の街に消えた。 この一件を報じた本誌の発売2日前に大仁田氏は会見し、「次の参院選には出ない」と突如政界引退を発表。「第一次安倍政権の運営方針への不満を理由としましたが、パーティ報道に対して事前に手を打ったと見る向きもあった」(全国紙記者)「暑い時は脱ぐじゃない」 みだらなパーティといえば、昨今、警察による摘発が相次いでいる。 今年5月には東京・渋谷の巨大ハプニングバー『眠れる森の美女』が摘発され、6月には静岡県の浜名湖で120人が参加した乱交パーティで主催者が公然わいせつ幇助の容疑で逮捕。8月には、17歳の女子高生が参加した乱交パーティをめぐり、男性医師が児童福祉法違反と児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕された。 風紀の乱れへの取り締まりが厳しくなるなか、このタイミングで首相補佐官続投の任を受けた森氏に話を聞いた。──2007年のパーティに参加した経緯は?「いや、参加はしましたけど、乱痴気な会合ではないですよ。記事はウソ」──参加女性が全裸になっていますが。「例えばですよ、暑い時にカーディガンを脱ぐじゃないですか。なぜ女性が脱いだのか、私が解釈することじゃない」──この一件は岸田首相も知っている?「伝えてないよ。なんで私が伝えなきゃいけないの。参加女性の証言はウソばかりですから」──当時、大仁田氏が政界引退宣言をしたことについては?「あの記事で彼は有名になったんだから、何がマイナスなの。結局は芸能人。私は大迷惑でしたがね。とにかく、もうこの件について話すことはない」 そうまくし立てた。 パーティを主催した大仁田氏にも話を聞くと、「パーティの件は記憶が曖昧なうえ森氏とは面識が浅く人物像も分かりかねます」との回答だった。 官僚に詳しいジャーナリストの小泉深氏が語る。「首相補佐官の仕事は、内閣の政策の企画や立案について首相を補佐すること。国家運営に携わる重要な立場にあります。給与は年間約2400万円で、その出所は税金です。自分の言動について人一倍高いモラルが求められる。過去のこととはいえ、森氏は改めて襟を正す必要はあるでしょう」 こんな首席幹事が催す「国葬」に税金がつぎ込まれていいのだろうか。※週刊ポスト2022年9月2日号

国際情報

ベトナム中部「フォンニ村・フォンニャット村」に建つ民間人虐殺事件の慰霊碑(写真/村山康文)
「韓国軍によるベトナム戦時民間人虐殺」を目撃したベトナム人が韓国法廷で初証言 何が語られたのか
 去る8月9日、韓国・ソウル中央地裁で開かれた国家賠償訴訟の証人尋問で、「韓国軍によるベトナム戦時民間人虐殺事件」を当時、目撃したというベトナム人男性が証言台に立った。これまで、韓国政府が公式に認めず、“歴史のタブー”とされてきたベトナム戦争当時の事件に、新たな光が当てられようとしている。 ベトナム戦争中、南ベトナム(当時)の各地で80件余り発生し犠牲者は9000人以上ともいわれるこの問題。ベトナムを繰り返し訪れ、10年以上にわたり取材し続けるフォトジャーナリストの村山康文氏が言う。「1968年にフォンニ村で事件に遭遇したグエン・ティ・タンさん(62歳)が原告となり、2020年4月、韓国政府を相手に裁判を起こしました。提訴内容は『民間人虐殺に責任がある韓国政府は3000万ウォン(約260万円)を賠償せよ』というもの。ベトナム人被害者による韓国での国家賠償訴訟はこれが初めてです。 8月9日の証人尋問は、タンさんのおじで、当時南ベトナム民兵隊に所属していたグエン・ドク・チョイさん(82歳)に対して行われました。報道によると、チョイさんは『無線機を通じて韓国軍人がフォンニ村の住民たちを殺害しているとの知らせを聞き、フォンニ村の近くに行った。望遠鏡で、韓国軍の軍人がフォンニ村の住民数十人を殺害する姿を目撃した』、『民間人を殺害した韓国軍が立ち去ったあと、米軍と共に村に入り、あちこちに積まれた遺体を発見した。多くの家屋が燃えている様子も見た』と証言したそうです」 ベトナムと韓国で事件に関する30人以上の証言を聞いた成果を1冊にまとめた村山氏の新著『韓国軍はベトナムで何をしたか』によると、タンさんが遭遇した「フォンニ村・フォンニャット村」事件では、韓国軍青龍部隊(海兵隊第二旅団)の作戦により、70人余りの村人が巻き込まれ殺害されたという。村山氏が続ける。「タンさんは、事件発生時、兄、姉、弟、おば、おばの息子、兄の友人の7人で避難壕に身を潜めていたところを、韓国軍兵士に襲われました。避難壕から出るように手榴弾で脅され、外に出たところを次々に銃殺されたといいます。この場で助かったのは、タンさんと兄の2人のみ。別の場所でタンさんの母親も殺害され、タンさんは家族と親戚5人を一度に失いました」「私が2015年6月に初めてタンさんを訪ねて事件に関する話を聞いた時、彼女はふたりの孫娘を前に『孫たちには絶対に私と同じ思いをさせたくない』と語りました。提訴後の2021年5月にビデオ通話で取材した際には、『フォンニ村・フォンニャット村で亡くなった74名の魂を背負い、これからも戦っていく』と力強く答えてくれました。 しかし、現在に至るまで、韓国政府は従来の態度を変えていません。タンさんの裁判では2021年11月に元韓国軍兵士が証言台に立ち『当時、韓国軍は民間人とみられる現地人を大量に殺害した』と話しましたが、韓国政府は『証言が一貫していない』と受け入れを拒否。 タンさんのおじ・チョイさんの証言内容に対しても、韓国政府側は『韓国軍によって被害を受けた事実が十分に立証されていない』、『米軍に対抗した南ベトナム民族解放戦線(ベトコン)が心理戦のために韓国軍に偽装し、民間人を攻撃した可能性がある。また、韓国軍が民間人を殺害したとしても、交戦状態においてフォンニ村・フォンニャット村の住民を敵と誤認した可能性を排除できない』と責任を否認する立場をとっています。 しかし、この事件は米軍との共同行動中に起きたものだったため、米側にも資料が残されました。2000年6月に米公文書館の機密指定が解除された事件の関連資料で明らかになったのは、事件直後に米側が独自に現地を調査して報告書をまとめていたこと、それに基づき米韓両軍の現地トップが書簡を交わしていたことなどです。 事件発生の数か月後、調査により虐殺事件をはっきり認識した米軍側から『韓国軍による調査・真相究明』を求められた駐越韓国軍司令部の長官は、その後、〈大量虐殺は陰謀行為〉と韓国軍による虐殺を否定する内容を米側に返しています。当時から現在まで50年以上、韓国政府の姿勢は変わっていないのです」 韓国の司法が“歴史のタブー”にどんな裁定を下すのか。審理の行方が注目されている。

芸能

ニッポン放送好調を牽引する『ANN』ブランド TBSラジオ『JUNK』との差は
ニッポン放送好調を牽引する『ANN』ブランド TBSラジオ『JUNK』との差は
 ラジオ業界を牽引する存在はどの局になるのか。『6月度首都圏ラジオ個人聴取率調査』(ビデオリサーチ)はTOKYO FMとJ-WAVEが0.6%でトップに並び、ニッポン放送とTBSラジオが0.5%で3位タイだった。かつての無敵の王者・TBSラジオは4月の調査から1つ順位を巻き返したが、長年親しんだ定位置には戻れなかった。ラジオ関係者が話す。「わずか0.1%とはいえ、ラジオ局にとって1位と3位では大違いです。ただ、TBSラジオは2018年に就任した三村孝成社長が『聴取率調査』を重視せず、『スペシャルウイーク』も廃止したので、表向きには我関せずというスタンスを取っている。でも、現場は数字を気にしているようです。 しかも、代わりの指標であるパソコンやスマホで放送を聴ける『radiko』(ラジコ)のデータも芳しくないと聞いています。『radiko』で良い数字が出れば、各局とも発表するんですよ。TBSラジオも、参議院選挙投票日の報道特別番組のシェア率が高かった時は公表していました。裏返せば、他にあまり好調な番組がないということです」(以下同) ニッポン放送は今年4月、radikoの『総聴取分数』でライブとタイムフリーを合わせたトータルで、初めて首都圏全局の中で首位を獲得した。6月も『総聴取分数』で1位だった。「今、radikoで一番聞かれている局はニッポン放送なんです。TBSラジオは三村社長が重視するデータでも負けている。その要因のひとつとして、番組の“硬直化”も挙げられるかもしれません。たとえばニッポン放送の『オールナイトニッポン』(通称・ANN)と同時間帯で深夜1時~3時の『JUNK』のパーソナリティは12年以上も変わっていません。月曜が伊集院光、火曜が爆笑問題、水曜が山里亮太、木曜がおぎやはぎ、金曜がバナナマンです」オールナイトニッポンブランドの活用 お笑い芸人の年齢が全体的に上がっているとはいえ、もっとも若い山里で45歳。ずっと聞き続けているリスナーにとっては安心感があるかもしれないが、若いリスナーを新たに獲得するうえで、ハードルになっているかもしれない。「彼らは人気があるし、結果を残してきたから今も続いているわけで、それ自体は凄いことだと思います。『オールナイトニッポン』木曜担当のナインティナインも50歳を過ぎていますしね。ただ、ニッポン放送は50代や60代のパーソナリティを22時台の『オールナイトニッポンGOLD』に持ってきています。また、24時台に『オールナイトニッポンX』、深夜3時台に『オールナイトニッポン0』という予備軍を置き、深夜1時台の『オールナイトニッポン』が新陳代謝しやすい環境を整えています。 55年続いているオールナイトニッポンブランドを生かして、同じ冠名の派生番組をたくさん作って、それぞれに役割を持たせてうまく回している。『オールナイトニッポン』の好調が局の浮上につながっている面はあると思います」 TBSラジオの『JUNK』はかつて24時台や土曜にもあったが、現在は月曜から金曜までの5番組だけになっている。「TBSラジオは1998年から2010年まで22時台に『アクセス』という時事問題を扱う番組を放送していました。各ラジオ局とも22時台は若者が聞く時間帯と考えていたので、この番組は斬新でしたし、聴取率も良く、TBSラジオが1位を取り続けた大きな原動力になりました。『アクセス』が終わった後も、この時間帯は『ニュース探究ラジオ Dig』『荻上チキ・Session-22』とニュースを扱う番組が続きました。今の『アシタノカレッジ』は毛色が違いますが、ニュース色の残る曜日もある。今後この時間帯をどうするかがTBSラジオの鍵を握るのではないでしょうか」 ニッポン放送は6月に過去のオールナイトニッポンを聴けるサブスクリプションサービス『オールナイトニッポンJAM』もスタートさせた。順次公開される主に2000年以降の秘蔵音源を30日間500円で聴ける。7月下旬からは、1998年に放送された元X JAPANのhideの『オールナイトニッポンR』も配信されている。「最近のニッポン放送は攻めています。過去の音源は許可取りが大変だと思いますが、これも『オールナイトニッポン』ブランドを生かした戦略です。新しいことに挑戦する姿勢がradikoでの結果にもつながっていると思います」 ニッポン放送が長い不調から立ち直り、巻き返している。TBSラジオが対抗していけば、さらにラジオ界は盛り上がっていくだろうが、はたして──。

スポーツ

ファンとの写真撮影に応じる山本
オリックス山本由伸 「負ける気がしねぇ」Tシャツで後半戦への気合いを見せた
 26年ぶりのリーグ連覇、日本一奪回に向けてAクラスを死守するオリックスだが、チームを引っ張っているのは山本由伸(24)だ。ここまで19試合に登板して防御率1.70、10勝5敗の成績(数字は8月16日終了時点、以下同)。エースとしての存在感を見せつけている。 そんな山本がリーグ後半戦で初先発となる8月2日の西武とのビジターゲームに向け、前日に新幹線で上京した姿をキャッチした。 夏休みのため家族連れでごった返す東京駅へ降り立った山本は、ルイ・ヴィトンのキャリーバッグとボストンバックを引き、ハーフパンツにTシャツというカジュアルな出で立ち。山本に気が付いたファンから話し掛けられると「応援ありがとう」と笑顔で返し、立ち止まって写真撮影にも快く応じるなどの対応を見せていた。 この時点でオリックスは3位ながら首位西武と1ゲーム差。山本は、その日のスポーツ紙に「チームもいい状態。1戦1戦を大事に、目の前の相手に1球1球全力で投げていきたい」とコメントしていたが、その意気込みをTシャツでもアピールしていた。 山本が着ていたTシャツの背中には「NO WAY WE ARE GOING TO LOSE(負ける気がしねぇ)」という文字が大きく書かれていたのだ。 その文字通り、翌日の登板では本調子ではなかったものの、山本は気迫で投げた。1回、2回と連続で満塁のピンチを迎えたが、無失点で切り抜けた。4回に源田壮亮にタイムリー3ベースを許して西武戦での連続無失点記録は40イニングでストップしたが、それでも6回を投げて失ったのはその1点だけ。降板後、リリーフ陣が打たれてオリックスは逆転負けを喫したが、エースとしての貫禄は示した。 次の登板となった8月10日の楽天戦でも、8回5安打無失点で毎回の11奪三振と好投しながら、この試合も救援投手が打ち込まれて逆転負け。勝ち投手とはならなかったが、Tシャツの「負ける気がしねぇ」の文字通り、この試合でも負け投手にはならなかった。 オリックス球団の広報担当者に聞いてみると、「Tシャツは知人よりいただいたもので、文字につきましても、とくに深い意味はなく着用しているとのことです」と回答した。 今シーズンの山本は開幕から好調を維持している。2012年から10年連続で黒星だった開幕戦を任されると、8回を被安打3、9奪三振の快投で無得点に抑えて白星を飾った。さらに4月9日のロッテ戦で3勝目を挙げ、球団記録となる自身18連勝をマークした。 6月18日の西武戦では史上86人目のノーヒットノーランを達成するなど、7月26日のオールスター戦までに17試合に先発して10勝5敗、防御率1.81。投手4冠、MVP、沢村賞を手にした昨季の8月20日より1か月近く早いペースでの2ケタ勝利だった。スポーツ紙担当記者はこう話す。「真っ直ぐとカーブの緩急、そして高速フォークで奪三振数も12球団トップ。7月9日のロッテ戦では自己最速、球団日本人最速の159キロを計測している。山本は昨年の沢村賞受賞でエースとしての自覚が出てきたとともに、まだまだ投手として進化を続けている。今シーズンはナイトゲームでは就寝、起床、朝食、球場入りとすべて同じ時間にして生活リズムを守り、週1回の登板を続けてきたことが好調の要因と見られている」 ヤクルトが独走するセ・リーグと違い、パ・リーグは大混戦である。1位西武から4位の楽天まで4ゲーム差。3位のオリックスも逆転優勝が狙える位置にいる。山本と吉田正尚の投打の中心がしっかり機能し、杉本裕太郎、中川圭太などの主軸も上向いてきた。終盤戦も山本のMVP級の活躍で、26年ぶりのリーグ連覇、日本一を目指してもらいたい。

グラビア

ビジネス

確定申告期間中の東京国税局(時事通信フォト)
「300万円以下の副業は雑所得」案 サラリーマンが看過できないデメリット
 副業収入が300万円以上にならなければ、手元に残るお金が減り、重税感だけが増すことになる可能性が出てきた。従来の副業はもちろん、例えばシェアリングエコノミーのような、スキルなど形がないものも含めた遊休資産の貸し出しを仲介するサービスで、貸主はそれによる収入が得られるというような新たな副業ビジネスなどにも影響があるかもしれない。俳人で著作家の日野百草氏が、まだ改正(案)ながら事業所得・雑所得300万円の壁に悩まされる人たちの声を聞いた。 * * * このままなら、年間売上300万円に満たない副業は反証の通らない限り、事業所得ではなく、すべて雑所得とされてしまうかもしれない。 国税庁は8月31日まで『所得税基本通達の制定について』とする改正案に関する「意見公募手続」(以下、パブリックコメント)を募集している。拙筆『国税庁「300万円以下の副業は雑所得」案はサラリーマン狙い撃ちの愚策ではないか』は多くの反響をいただいたが「年間売上300万円に満たない副業は原則として雑所得」という案は、現時点ではあくまで「案」とはいえ衝撃的だろう。・改正案〈業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。〉〈また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。〉 副業で300万円以上を稼がなければ事業所得ではなく雑所得として取り扱う。つまり青色申告(以下、青色)ができず白色申告(以下、白色)となる。このままなら、改正案の通りになるなら、個人事業で副業を手掛けるサラリーマン、これから始めようとしているサラリーマンにとっては実質「増税」感の増す可能性が高い。 会社の許可を得て、副業で小規模な案件を請け負う若手Webエンジニアが語る。「副業は年間150万円くらいです。知り合いの小さな会社をいくつかグロスで請け負っているので事業所得、青色申告で提出していましたが、これからか心配です」 彼は独身、サラリーマンとしての年収はまだ若いこともあって400万円ほど。副業の売り上げが年間150万円とするなら、経費を20万円として(白色でも経費は計上できる)、青色でなく雑所得となるとおおよそ13万円くらいの実質的な「増税」となるのではないか(あくまで一例としての概算。実際は個人の事情、状況により上下する)。「この業界は同じように外注として個人で請け負うこともあります。会社にもよるのでしょうが、私は将来のためにもそうしています。サラリーマンとしても手取りが減っていますし、副業を推奨しておいてこれは納得できないですね」 2022年4月からの雇用保険値上げ、同年10月からの失業保険の値上げ、2023年10月からすべての事業者が消費税を納めることになるインボイスときて、ついに政府はサラリーマンの「副業」に目をつけた。今回の案では、年間売上300万円に満たない副業は反証の通らない限り雑所得とされてしまう。簡単に雑所得のデメリットを挙げる。・青色申告ができない。雑所得には白色申告(以下、白色)しかなく申告特別控除がない。青色申告なら10万円から65万円までの申告特別控除を受けられるが、雑所得は白色申告なので「なし」。青色で処理してきた300万円に満たない副業の場合、納める税金が上がる。・損益通算ができない青色申告の場合、本業と含めての黒字と赤字を相殺できるが雑所得の場合は認められない。間違いなく納める税金は上がる。これについては後述する。やはりフードデリバリーも狙われたな 本旨ではないためこの2点に絞り、少額減価償却資産の特例、法令上の家事按分、青色事業専従者給与の経費化などは割愛するが、要は政府として「300万円を超えない副業は青色申告させたくない」のだろう。「300万円を超えない副業は事業ではない」ということか。これまでの個別判断を標準化したい思惑もあるのかもしれない。もちろん雑所得でも経費は落とせる(その判断は税務署による)が、青色申告なら特別控除がつく上に本業の給料と損益通算できるため税制面での有利さは計り知れない。それを逆手にとった故意かつ過度な赤字による脱税も横行していることは事実だが、副業・兼業で仕事をしているサラリーマン(本稿、雇用形態に限らず主たる家計を被雇用者として得ている者すべてを便宜上、サラリーマンとする)の多くは副業も「事業」として取り組んでいる。また30年間賃金が上がらなかった日本、副業もまた「生活の足し」はもちろん「自己防衛」のためでもあった。「副業で300万円いかなければ雑所得ですか。他の副業も同じかもしれませんが、やはりフードデリバリーも狙われたな、という感想です」 情報提供のお世話になっていただいている配送員、彼は専業ではなく、平日の日中は中小企業のサラリーマンとして働き、休日や余裕のある平日夜間、少しの時間にフードデリバリーの副業をしている。「昨年は約100万円くらいですが、これでも時間を考えれば自分では稼いでいるほうだと思います。300万円なんて無理ですよ、それ副業じゃないです」 そう言って笑う彼につられて筆者も思わず笑ってしまった。まったくその通りで、これまで多くのフードデリバリーを取材してきたが、副業稼働ならあくまでギグワーク、わずかな時間で300万円稼げるなら専業でしたほうがいい。「それに業績の悪い会社とはいえ(私は)正社員ですから、いずれは独立したいとは思っても現状で飛び出すのは現実的ではないです。私たちのようなサラリーマンの副業をさらに縛り上げてどうするのでしょう。関係ない話と言われてしまえばそれまでですが、宗教法人が無税なのに、ですよ」 昨今の宗教問題もあって少し脱線してしまうのは仕方のないことだが、気持ちはわかる。政府は2019年4月から「働き方改革実行計画」としてサラリーマンの副業を推奨した。この国の賃金の上がらない分、空いた時間で働けと民間企業にも協力を求めた。ギグワークはじめ多くの副業にサラリーマンが従事することになったが、それが一段落ついたらこの改革案、正直「やり方が下手くそだなあ」と思う。インボイスもそうだが食ってくために働くレベルの労働者ばかりを狙うようになった。よほど金が無いのか。低額の納税者ほど恩恵を与えたほうが徴収率は上がるはずなのに。 彼のような「生活の足し」として副業に勤しむサラリーマンだけでなく「働き方改革実行計画」より以前から副業というよりは「兼業」で働くサラリーマンも多い。先のWEBエンジニアのような技術者はもちろん、クリエイターなどもまさにそれだろう。この場合も「独立のため」「夢の実現のため」「自己研鑽も兼ねて」という意味合いもある。「イラストレーターで年間売上げ300万円はきついですね。案件や人気度、技量にもよりますけど。漫画家ならともかく、みなさんが思うほどイラストレーターって稼げませんよ」 彼はあくまで匿名(イメージもあるため)ということで話を伺うが、イラストレーターで専業というのは極めてハードルが高い。多くのファンは人気イラストレーターなら「すごくもらっているのだろう」と思うだろうが、ライトノベル(以下、ラノベ)の表紙でもたいしたことはない。筆者の時代より紙媒体に限れば全体的な単価は下がっている。「基本、単価仕事ですからね。ラノベなら印税も折半だったりしますけど、ほんとみなさんが思うほどもらえません。それに専業といっても理解ある両親のところで実家住まいとか、あと言い方は悪いですけど収入の太い相方(妻、夫)がいて主婦、主夫兼イラストレーターってのがほとんどじゃないですか。多くはサラリーマンとかの本業しながらですよ」 イラストレーターは誰もが知る人気絵師でもイラスト専業ではファンが思うほどには稼いでいない。個人の画集など、よほどの大家か大ヒットを記録したイラストレーターでなければ難しいだろう。それすら部数は人気漫画ほどではない。基本、続刊もないし人生で何冊出せるか、というレベルである。イベント展示会前の路上で女性が声をかけて場内へ誘うなどして市場価格より高額な値段で売りつけると批判された絵画商法に一部の絵師(本当にごく一部なのだが)が加担する理由でもある。「一般なら広告絡みですね。あとはゲーム案件を請けたり、男性向けもできるならもう少し稼げるし専業の場合もありますが。とくに目立つところではラノベの絵師など兼業多いと思いますよ、そもそもラノベ作家(小説家)そのものが兼業ばかりなんですから。いつ人気がなくなるかわかりませんし、そもそも人気がでないままかもしれませんからね、保険の意味でも辞められません」 こうした仕事もまた古くからある「副業」である。「夢のため」「専業になるため」として取り組むサラリーマンの副業である。サラリーマンをしながらクリエイターを目指すというのはそれこそ明治時代の文豪からしてそうで、商業デビューしてもサラリーマンと兼業、副業というケースは多い。本旨ではないため踏み込まないが、ともかく日本の多くのクリエイターもまた、読者やファンが知らないところで兼業・副業として創作をしている。 また、この改革案が通ったとして「反証」により商業作家であり、事業として創作をしているという主張が通るかはわからない。また「どちらが本業か」という問題もあり、仮に200万円を被雇用者として、200万円を創作で稼ぐクリエイターの場合、後者を本業だとして青色申告しても税務署が前者と判断する可能性もある。こうした「作家」業は、仕入れや発注主としての仕事がほぼないことが多いため売上げ=収入に近い状態であることが多い。機材や資料といっても、である。「300万円以上稼げばいい」という無責任な声もあるが、これについては筆者の友人であるアニメーター氏(彼自身は専業)がこう語る。「年齢にもよりますが、個人事業主のアニメーターで年間売上300万円もあったら、若手なら立派なものですよ。そもそもアニメ制作会社の給料だって年収300万円とか普通なのに、業務請負の単価仕事で300万円稼ぐのって大変ですよ。フリーの新人なら100万円いかないと思います」 あくまでアニメーターとしての話で案件にもよるのだが、それなりの経験を積んだ第一原画でもそのくらいか、多少超える程度だと思う。アニメーション業界全体となればプロデューサーや監督なども含まれるため平均値は上がるが、アニメーターに限れば改善の傾向がみられるとはいえ作業量や求められる能力に比べればまだ安い。「昔は副業のアニメーターって限られてたんですけど、デジタル作画になって工程を細かく、遠隔地でも分担して作業できるようになりましたからね。十分な戦力です。副業を一緒くたに悪みたいに決めつける今回の改革案は賛成できないですね」副業転売ヤーは申告なんてしないだろうね 今回の改革案は先にも書いた通り、副業と称して青色申告とそれに付帯する経費、とくに損益通算によって赤字計上で脱税を繰り返す連中が狙いなのは確かだろう。しかしごく一部を口実に全体まで適用するのはどうか。そういう連中は脱法行為をなんとも思っていないし、まず税務署が来ることもなければ、来たとしても修正申告で済む、追徴もたいしたことはないと高をくくっている。無申告加算税は50万円で15パーセント、100万円以上で20%、これも絶対くらうとは限らない、修正申告指導のみのお目こぼしでラッキー、というケースも多い。別に脱税を推奨しているわけではないが、これが現実である。「ネットで偉そうに言ってる連中もさ、ネットオークションとか背取りとか転売とか、そんなの古物商もとってなければ申告もしてないのばっかりだよ。『俺が言った』で構わないから載っけてくれよ。実際そうだからさ」 悪い話は悪い人から聞く、ということで以前、『マスク転売ヤーの告白 親戚、老人、死人のアカウントまで駆使』で話をうかがった会社経営者に電話をするとこの回答。「うちは法人だから兼業の話は関係ないけど、納税はしなくちゃだめだよ。でも50万とか程度の稼ぎでやってるほとんどの(転売の)個人勢なんかサラリーマンどころか公務員だっているし、申告してないだろうね。副業禁止ってとこもまだ多いからさ」 そもそも公務員は認められた特別なケースを除けば兼業が禁止されている。しかし筆者も公務員がこうした転売や背取り、情報ビジネスなどで小銭を得ているケースは知っている。内緒なのか黙認なのかはわからないが。もちろん販売規制品の転売やダフ行為、古物商をとっていない場合などを除けば道義的な問題はともかく違法ではない。それこそPS5やガンダムのプラモデル、ナイキのスニーカーなど個人の小遣い稼ぎで転売している連中はネットオークション、フリマアプリ、SNSでいくらでも見つかる。仮に確定申告の必要がないとされる20万円を超えていなくても住民税の届け出は必要である。しかし現実に、それをしている人は少ないだろう。彼らは今回の改正案が通っても痛くも痒くもない。「悪いやつはなんでもするからね、法人成りって手もある。脱税目的のマイクロ法人が増えるんじゃなかね、実際、持続化給付金なんてそんな連中が群がったじゃないか。みんな現実ではチマチマ悪さしてるんだよ」 PS5で儲けてご機嫌、あいかわらずの自己弁護も兼ねた放言だが、少額でも申告している人たちはいるだろう。しかし彼の意見は一部もっともで、みな品行方正かと言えばそうではない。政治家や芸能人、スポーツ選手まで手を染めていた新型コロナ給付金詐欺、不正受給は記憶に新しいだろう。結局、世の常といえばそれまでだが正直者が馬鹿をみる、明確に事業としての副業をしていたはずの方々が割を食うことになる。 これ以外にも筆者のもとには様々なサラリーマンの副業者から話が舞い込んでいる。今回の改正案に反対という意見が多いが、そもそも各人事情はさまざま、副業の業種によっても変わる。反証の機会があるとはいえ、これを額面通りに受け取る社会人はいないだろう。一例として、ブロガーで筆者に意見をくださった方のコメントをまとめると以下の通り。「ブロガーなんて雑所得だよって税務署に言われました。副業の場合、とくに新しい業種の場合は仲間もそうですが雑所得にされやすいと思います」 こうしたブログはもちろんYouTuberやバーチャルYouTuber(Vチューバー)、ボカロPや歌い手、地下アイドルやインディーズ声優なども副業が大半だろう。個々の詳しい説明はしないが、こうした日本の新しいクリエイター業にも水を差すかたちになりかねない。もちろん先のフードデリバリーやマッチングアプリで請け負うような仕事もまた、年間売上300万円いかなければ「雑所得」となるだろう。「遊びだろ」と揶揄する向きもあるだろうが、現実には億を稼ぐ配信者などの「新たな仕事」が生まれ続けている。彼らも最初は学生以外は兼業だったはずだ。固い仕事ならいわゆる士業だって開業して間もなければ兼業が多い。本稿はあくまで数例を集めただけに過ぎない、ありとあらゆるサラリーマンの副業が、じつのところ日本を支えてきた実態がある。 一律300万円に満たな副業は雑所得、意見はさまざまだろうが、その意見を国税庁はパブリックコメントで8月31日まで受け付けている。・国税庁パブリックコメントhttps://www.nta.go.jp/information/consulation/sake_index.htm 筆者としてはサラリーマンの副業者だけでなく、従来のクリエイターや技術者といった副業・兼業にも影響が出てしまうことを危惧している。改正案は通れば来年度からという急ぎぶり、もう少し議論が必要と思う。 最後に、本稿の主題は改正案についてであり税務全般の解説ではない。一部の用語は平易に置き換えた。また法令上の判断と実務上の判断とが異なる場合もある。試算もまた目安である。税務申告は個々別、多種多様のため個人的なケースは最寄りの税務署、もしくは税理士に相談して欲しい。今回の改正案では不動産所得は除外されている。あくまで事業所得に限った「改正(案)」であり、「いまのところ」決定ではない。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

ライフ

熱中症は重症になると命にまでかかわる(イラスト/いかわやすとし)
今や国民病、暑い8月も「熱中症」に要注意 高齢者は生活習慣の見直しを
 蒸し暑い環境で筋肉運動などを行ない、体温が上昇すると発汗や血液が皮膚表面に集まり、熱放散して体温を下げる働きをする。それでも体温が下がらず、水分やミネラルなどのバランスが崩れ、めまいや立ち眩み、全身倦怠感などの症状が起こるのが、今や国民病ともいえる熱中症だ。重症では意識障害や痙攣、肝臓や腎臓の機能障害、血液凝固障害などを発症し、命にかかわる。 人間は体温が37℃前後で代謝や酵素が最適に働く。そのため異常な体温上昇を抑える調節機能が備わっている。 例えば発汗後に汗が乾く時の気化熱で体温を下げたり、血液が体内の熱を運び、皮膚表面に集まり、放熱して体温を下げる。他にも血液は、あらゆる臓器に酸素と栄養を運び入れながら、同時に臓器から出る老廃物を持ち帰って腎臓や消化器から捨てる働きもする。これらを行なっても体温調節機能が破綻してしまい、体内の水分やナトリウムなどのバランスが崩れ、症状が出るのが熱中症だ。 体温が異常に高い状態が続くと、発汗による脱水と塩分不足で血液の流れが悪くなるため皮膚表面からの放熱もできなくなり、脳や心臓、腎臓、肝臓といった重要な臓器がダメージを被る。重症になると血液や中枢神経が障害され、意識障害、痙攣を発症。その結果、血液が固まらなくなる血液凝固障害や筋肉が大量に壊れる横紋筋融解症、急性腎障害など重篤な症状を引き起こし、命の危険が続く。 帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターの三宅康史センター長に話を聞いた。「熱中症の典型的な初期症状はめまいや立ち眩み、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむらがえりなどです。しかし、これらは他の病気でも起こります。先日、若い方が体調を崩して救急搬送されました。熱中症だと思ったのですが、念のためPCR検査をしたところ、陽性でした。熱中症は症状ではなく、暑い環境にいたか、暑い場所で肉体労働やスポーツをしていたかで判断することが重要となります」 以前は欧米と同じように熱中症の軽症を熱失神・熱痙攣、中等症を熱疲労、重症は熱射病と分類していたが、今年3月、環境省が4年ぶりに『熱中症環境保健マニュアル』を改訂。症状などによってI度(軽度)、II度(中等度)、III度(重度)の3段階に分類されている(表参照)。 ともあれ熱中症は元気な人でも暑い環境の中、肉体労働やスポーツをして体温が上昇すると発症してしまうが、それとは別に、現在は持病のある高齢者が動かなくても暑い環境に長くいるだけで発症するケースも増えている。「近年、地球温暖化での猛暑の増加、著しい高齢化、そして、貧困などがリスクとなり、熱中症による救急搬送が増えています。なにより体を冷やすことと水分補給の2つが不可欠。もちろん朝食をしっかり食べ、睡眠不足や過度の飲酒を避け、筋肉量を減らさないことも熱中症予防の基本です」(三宅センター長) 筋肉は脂肪と比べ水分保持量が多い。筋肉を保つために運動を続け、汗をかき暑さに慣れる体作りを目指そう。取材・構成/岩城レイ子※週刊ポスト2022年8月19・26日号

コラム

氷は「家で作るもの」から「買うもの」へ 製氷機・製氷皿を使わない人たちの事情
氷は「家で作るもの」から「買うもの」へ 製氷機・製氷皿を使わない人たちの事情
 氷は自宅の冷蔵庫(冷凍庫)の自動製氷機や製氷皿で手軽に作れるもの。特に夏場ともなれば、氷を使う機会が増えるので、頻繁に氷作りする家庭も少なくないだろう。このように「氷は自宅で作るもの」というのがこれまでの常識だったが、それが徐々に変化しつつあるようだ。最近では「氷は買うもの」という人たちも増えている。なぜ家で作らないのか、購入するメリットは何か。氷を「買う派」の人たちにその事情を聞いた。【写真】地味に不便? 製氷皿1キロ100円で買った方がコスパ良い? 建設会社に勤務する40代女性・Aさんは、冷蔵庫を買い替えてから4年あまり経つが、自動製氷機を使った事がないという。「以前使っていた冷蔵庫では、夏場だけ製氷機を使っていました。ただ、雑菌やカビなどの衛生面がちょっと心配で、使用期間中はまめに手入れをしていました。それが意外と面倒で、夏が来ると氷を作らないといけないのか……とちょっと憂鬱になっていました」(Aさん) そんなAさんが氷を買うようになったのは、自動製氷機の故障がきっかけだった。氷を買ってみると、その快適さに魅了され、その後も買い続ける方針にシフトしたという。「氷って、コンビニやスーパー、ドラッグストアで意外に安く買えるものなんですよね。安いところだと1キロ100円くらい。3人家族なので大量に使うわけでもないし、作るより買った方がラク。氷ができる時間を待つ必要もないですし、コストパフォーマンスが良いのではないかと思っています。今の冷蔵庫は、一応自動製氷機があるモデルですが、結局使ったことはありません」(Aさん)氷がキムチくさくなりウンザリ… 製氷皿を使っていたが、氷を買うようになった人もいる。IT企業に勤める30代男性・Bさんは、製氷皿の扱いが苦手だったという。「製氷皿って意外と場所をとるのに、1回で10個くらいしか氷が作れないのが不満でした。しかも、製氷皿を冷凍庫に運ぶ際に、どうしても水をこぼしてしまう。とはいえ、氷は自宅で作れるものだから、さすがに買うのはもったいないな……と思っていたんです」(Bさん) だが、ある夏の日に作った氷の“におい”が決定打となり、それ以降、Bさんはずっと氷を買っているという。「冷蔵庫に入れたキムチの容器の蓋が開いていたようで、そこから氷にキムチやにんにくのようなにおいがうつってしまって……。炭酸水に氷を入れて飲んだら変なにおいがして、パニックになりました。この“キムチ氷”事件がトラウマで、氷は買う派になりました。水を製氷皿に入れて凍らせて……と、地味に面倒な作業からも解放されました」(Bさん)買った氷はお酒との相性が抜群 家飲みが増えたことで氷を買うようになった人もいる。印刷会社に勤務する30代男性・Cさんが語る。「家飲みには“ちょっとした高級感も必要”と言い訳して、普段は買わない氷を買ってみたんです。そうしたら自宅の冷蔵庫で作った氷と比べて、買った氷の方が格段においしかった。色も透き通っているし、お酒との相性が抜群でした。氷にお金を使うなんて、無駄遣いだと思っていましたが、考え方が180度変わりました」(Cさん) 思えばかつては、水道の水があるし、家でお茶も作れるので、「わざわざ水やお茶を買うのはもったいない」という人も多かったのではないか。それがいつしか当たり前のように購入されるものに変化した。氷についても同様に、家で作るものから買うものに変化しつつあるのかもしれない。