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精力的に公務に向き合っている佳子さま(時事通信フォト)
佳子さま「お忍び愛報道」に、宮内庁関係者「警備は十分だったのか」と心配する声
 秋篠宮家の次女・佳子さま(27)と学習院初等科時代の同級生との交際報道が話題となっている。同級生だったエリート歯科医が“本命恋人”だと報じた『女性自身』(8月23・30日合併号)によれば、佳子さまは7月、お相手の父親が院長を務めるデンタルクリニックの上にある自宅をお忍びで訪れて2時間半ほど滞在したという。送迎の車で去ろうとする佳子さまを相手方の両親が見送る様子の写真も収められている。 今回の佳子さまの交際報道の内容を見た宮内庁関係者は、こう苦言を呈する。「通常、こうした皇族方がお忍びで行動する場合は、皇宮警察が細心の注意を払って、報道陣による追尾がないかなどをチェックしながら現場に向かうものです。“ワンボックスカー1台のみでのお出かけ”と報じられていることから、恐らく外出時から追跡されていたと推測されますが、そこからお相手の自宅まで追われてしまうのは脇が甘いのではないか。 また、お相手宅に滞在している間も、不審者がいないかどうかなど警備担当の側衛官(皇宮警察)が周囲を厳しく監視しないといけませんが、佳子さまが現場を後にする様子まで撮影されてしまった。警備が緩すぎたのではないかと思えてしまいます」 7月8日に安倍晋三元首相が演説中に銃撃され死亡した事件を受けて、皇室の警備体制についても警戒が高まっている。7月14日、宮内庁の西村泰彦長官は定例会見で、「今までやってきたことを踏まえて、今回の事件の教訓をプラスアルファして対策していくということだと思う」と述べた。さらに安倍元首相の国葬が閣議決定されたことを受けて、警察庁は7月22日に、国葬に伴う要人や皇室の警備対策の方針を検討する「国葬儀警備対策推進室」を設置している。 佳子さまが歯科医宅を訪れたのは安倍氏銃撃事件の2日前のことだったとはいえ、警備体制に関心が高まる中で飛び出したお忍び愛報道。それを受けて、前出の宮内庁関係者はさらにこう続ける。「皇宮警察を巡っては、このほど『週刊新潮』(6月23日号)が、護衛部長らが皇室に対する悪口を言っていたと報じた一件などもありました。厳しい目が向けられているなか、今後も皇室の方々がお忍びで行動する際に警備が甘いと見られてしまうようなことが続けば、皇室と皇宮警察との信頼関係に歪みが生じかねないと心配してしまいます」

国際情報

ベトナム中部「フォンニ村・フォンニャット村」に建つ民間人虐殺事件の慰霊碑(写真/村山康文)
「韓国軍によるベトナム戦時民間人虐殺」を目撃したベトナム人が韓国法廷で初証言 何が語られたのか
 去る8月9日、韓国・ソウル中央地裁で開かれた国家賠償訴訟の証人尋問で、「韓国軍によるベトナム戦時民間人虐殺事件」を当時、目撃したというベトナム人男性が証言台に立った。これまで、韓国政府が公式に認めず、“歴史のタブー”とされてきたベトナム戦争当時の事件に、新たな光が当てられようとしている。 ベトナム戦争中、南ベトナム(当時)の各地で80件余り発生し犠牲者は9000人以上ともいわれるこの問題。ベトナムを繰り返し訪れ、10年以上にわたり取材し続けるフォトジャーナリストの村山康文氏が言う。「1968年にフォンニ村で事件に遭遇したグエン・ティ・タンさん(62歳)が原告となり、2020年4月、韓国政府を相手に裁判を起こしました。提訴内容は『民間人虐殺に責任がある韓国政府は3000万ウォン(約260万円)を賠償せよ』というもの。ベトナム人被害者による韓国での国家賠償訴訟はこれが初めてです。 8月9日の証人尋問は、タンさんのおじで、当時南ベトナム民兵隊に所属していたグエン・ドク・チョイさん(82歳)に対して行われました。報道によると、チョイさんは『無線機を通じて韓国軍人がフォンニ村の住民たちを殺害しているとの知らせを聞き、フォンニ村の近くに行った。望遠鏡で、韓国軍の軍人がフォンニ村の住民数十人を殺害する姿を目撃した』、『民間人を殺害した韓国軍が立ち去ったあと、米軍と共に村に入り、あちこちに積まれた遺体を発見した。多くの家屋が燃えている様子も見た』と証言したそうです」 ベトナムと韓国で事件に関する30人以上の証言を聞いた成果を1冊にまとめた村山氏の新著『韓国軍はベトナムで何をしたか』によると、タンさんが遭遇した「フォンニ村・フォンニャット村」事件では、韓国軍青龍部隊(海兵隊第二旅団)の作戦により、70人余りの村人が巻き込まれ殺害されたという。村山氏が続ける。「タンさんは、事件発生時、兄、姉、弟、おば、おばの息子、兄の友人の7人で避難壕に身を潜めていたところを、韓国軍兵士に襲われました。避難壕から出るように手榴弾で脅され、外に出たところを次々に銃殺されたといいます。この場で助かったのは、タンさんと兄の2人のみ。別の場所でタンさんの母親も殺害され、タンさんは家族と親戚5人を一度に失いました」「私が2015年6月に初めてタンさんを訪ねて事件に関する話を聞いた時、彼女はふたりの孫娘を前に『孫たちには絶対に私と同じ思いをさせたくない』と語りました。提訴後の2021年5月にビデオ通話で取材した際には、『フォンニ村・フォンニャット村で亡くなった74名の魂を背負い、これからも戦っていく』と力強く答えてくれました。 しかし、現在に至るまで、韓国政府は従来の態度を変えていません。タンさんの裁判では2021年11月に元韓国軍兵士が証言台に立ち『当時、韓国軍は民間人とみられる現地人を大量に殺害した』と話しましたが、韓国政府は『証言が一貫していない』と受け入れを拒否。 タンさんのおじ・チョイさんの証言内容に対しても、韓国政府側は『韓国軍によって被害を受けた事実が十分に立証されていない』、『米軍に対抗した南ベトナム民族解放戦線(ベトコン)が心理戦のために韓国軍に偽装し、民間人を攻撃した可能性がある。また、韓国軍が民間人を殺害したとしても、交戦状態においてフォンニ村・フォンニャット村の住民を敵と誤認した可能性を排除できない』と責任を否認する立場をとっています。 しかし、この事件は米軍との共同行動中に起きたものだったため、米側にも資料が残されました。2000年6月に米公文書館の機密指定が解除された事件の関連資料で明らかになったのは、事件直後に米側が独自に現地を調査して報告書をまとめていたこと、それに基づき米韓両軍の現地トップが書簡を交わしていたことなどです。 事件発生の数か月後、調査により虐殺事件をはっきり認識した米軍側から『韓国軍による調査・真相究明』を求められた駐越韓国軍司令部の長官は、その後、〈大量虐殺は陰謀行為〉と韓国軍による虐殺を否定する内容を米側に返しています。当時から現在まで50年以上、韓国政府の姿勢は変わっていないのです」 韓国の司法が“歴史のタブー”にどんな裁定を下すのか。審理の行方が注目されている。

スポーツ

メンバーの大幅入れ替えを余儀なくされながらも、県岐商の選手たちあ最後まで試合を戦い抜いた(共同通信社)
【コロナと甲子園】集団感染の県岐商 無症状で陽性判定の選手から監督へのメッセージ
 緊迫した投手戦、息をつかせぬ乱打戦──炎天下の甲子園球場(兵庫・西宮市)で、高校球児たちがはつらつとグラウンドを駆ける。だがその裏で、選手たちは相手チームとは別の“見えない敵”との戦いも強いられていた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、コロナ禍の影響を受けた球児たちの夏をレポートする。【全3回の第1回】 * * * 新型コロナに翻弄されたこの夏の甲子園を象徴するのが、8月9日に一回戦を迎えた岐阜の伝統校・県立岐阜商業(以下、県岐商)だった。クラスター(集団感染)の発生により、ベンチ入りメンバー18人のうち10人を入れ替えて臨んだ初戦で、夏初出場の社(兵庫)に1対10と大差で敗れた。聖地からの去り際に、鍛治舎巧監督(71才)はこんな言葉を残した。「1度、いや2度ほど、出場辞退を考え、責任教師と話をしました。エースピッチャーがダメで、キャッチャーもダメで、ショートや、1番2番の外野手もコロナに感染しました。 チームの守りの要であるセンターラインが完全に崩壊し、これは野球にならないんじゃないか、と。控え選手にも陽性者がいました。“ツギハギ”のポジション変更で、相手の社高校さんに失礼になるのはもちろんのこと、全国のファンにもまともな試合をご覧いただけるのかと……」 出場辞退が脳裏をよぎるたびに、レギュラーメンバーの中で陰性だった主将の伊藤颯希ら3人の3年生の顔が浮かんだ。「彼らのために、そして一生懸命部屋で自主トレをして、二回戦以降の試合出場を目指している陽性の選手のためにも、監督であるわたし自ら幕を引くわけにはいかないと思い直しました。恥ずかしい試合となってしまいましたが、こうなったのもわたしの責任です」(鍛治舎監督) コロナ元年というべき2年前の夏、県岐商は教員や生徒に陽性者が出たため、岐阜県の独自大会出場を辞退した。同年春に中止となったセンバツ大会に出場を予定していた学校が参加した、甲子園球場での交流試合こそ出場にこぎつけた。しかし、クラスターが起きた直後ということもあり、試合当日に岐阜からバスで甲子園に入り、そのまま日帰りするスケジュールを強行。選手たちは万全の状態でプレーすることができなかった。 あれから2年、またしてもコロナが県岐商を襲った。49代表校の選手たちがフェスティバルホール(大阪市)に集められた8月3日の組み合わせ抽選会後、宿舎に戻った県岐商ナインが次々と体調不良を訴えた。翌々日の開会式リハーサルは欠席。ベンチ入りメンバーを含む複数選手の陽性が判明した。 その日の夜、わたしは鍛治舎監督にメールを送った。監督は2017年夏に不整脈を発症し、心臓に大きな不安を抱えているのだ。返信はすぐにあった。《甲子園帯同メンバー35人のうち、登録メンバー18人中4人、メンバー外3人の体調不良が判明しました。メンバーには『君たちがグラウンドに帰ってくるまで頑張るから早く治すように!!』と伝えました。ただし、大会本部からメンバーの入れ替えも大会参加も不可との判断が出れば、粛々と従います。気持ちはたとえ14人でも戦う覚悟です》 日本高等学校野球連盟は、地方大会を勝ち上がった学校に、大会期間中に滞在する宿舎に入る前のPCR検査を義務づけていた。県岐商は、岐阜大会後の検査では陽性者は1人もいなかった。甲子園入りしてから罹患・発症し、感染が広がったことになる。「エースの井上(悠)は、当初、咳だけだったんです。ところが39℃の熱が出てしまった。初戦前に快方に向かい《真夜中に、誰にも会わないところでランニングします》とLINEがありました」(鍛治舎監督) 井上に次ぐ二番手の小西彩翔は、無症状なのに陽性判定を受けた。彼もまた鍛治舎監督にメッセージを送った。《いつでもいける準備はしていますから、残されたメンバーで勝って欲しい。テレビの前で一生懸命応援しています》 鍛治舎監督はその文面を全部員と共有した。 球児にケガはつきものだ。そのため、大事な試合に出場できないといったことは、少なからずある。そうした場合、ケガをした選手はチームのサポートにまわる。一方、陽性判定を受けた選手は、サポートのためにチームメートと接触することすらできないのだ。ここにも、コロナに翻弄された球児たちの苦しみが浮かび上がる。(第2回へ)●柳川悠二(ノンフィクションライター)※女性セブン2022年9月1日号

グラビア

ビジネス

確定申告期間中の東京国税局(時事通信フォト)
「300万円以下の副業は雑所得」案 サラリーマンが看過できないデメリット
 副業収入が300万円以上にならなければ、手元に残るお金が減り、重税感だけが増すことになる可能性が出てきた。従来の副業はもちろん、例えばシェアリングエコノミーのような、スキルなど形がないものも含めた遊休資産の貸し出しを仲介するサービスで、貸主はそれによる収入が得られるというような新たな副業ビジネスなどにも影響があるかもしれない。俳人で著作家の日野百草氏が、まだ改正(案)ながら事業所得・雑所得300万円の壁に悩まされる人たちの声を聞いた。 * * * このままなら、年間売上300万円に満たない副業は反証の通らない限り、事業所得ではなく、すべて雑所得とされてしまうかもしれない。 国税庁は8月31日まで『所得税基本通達の制定について』とする改正案に関する「意見公募手続」(以下、パブリックコメント)を募集している。拙筆『国税庁「300万円以下の副業は雑所得」案はサラリーマン狙い撃ちの愚策ではないか』は多くの反響をいただいたが「年間売上300万円に満たない副業は原則として雑所得」という案は、現時点ではあくまで「案」とはいえ衝撃的だろう。・改正案〈業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。〉〈また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。〉 副業で300万円以上を稼がなければ事業所得ではなく雑所得として取り扱う。つまり青色申告(以下、青色)ができず白色申告(以下、白色)となる。このままなら、改正案の通りになるなら、個人事業で副業を手掛けるサラリーマン、これから始めようとしているサラリーマンにとっては実質「増税」感の増す可能性が高い。 会社の許可を得て、副業で小規模な案件を請け負う若手Webエンジニアが語る。「副業は年間150万円くらいです。知り合いの小さな会社をいくつかグロスで請け負っているので事業所得、青色申告で提出していましたが、これからか心配です」 彼は独身、サラリーマンとしての年収はまだ若いこともあって400万円ほど。副業の売り上げが年間150万円とするなら、経費を20万円として(白色でも経費は計上できる)、青色でなく雑所得となるとおおよそ13万円くらいの実質的な「増税」となるのではないか(あくまで一例としての概算。実際は個人の事情、状況により上下する)。「この業界は同じように外注として個人で請け負うこともあります。会社にもよるのでしょうが、私は将来のためにもそうしています。サラリーマンとしても手取りが減っていますし、副業を推奨しておいてこれは納得できないですね」 2022年4月からの雇用保険値上げ、同年10月からの失業保険の値上げ、2023年10月からすべての事業者が消費税を納めることになるインボイスときて、ついに政府はサラリーマンの「副業」に目をつけた。今回の案では、年間売上300万円に満たない副業は反証の通らない限り雑所得とされてしまう。簡単に雑所得のデメリットを挙げる。・青色申告ができない。雑所得には白色申告(以下、白色)しかなく申告特別控除がない。青色申告なら10万円から65万円までの申告特別控除を受けられるが、雑所得は白色申告なので「なし」。青色で処理してきた300万円に満たない副業の場合、納める税金が上がる。・損益通算ができない青色申告の場合、本業と含めての黒字と赤字を相殺できるが雑所得の場合は認められない。間違いなく納める税金は上がる。これについては後述する。やはりフードデリバリーも狙われたな 本旨ではないためこの2点に絞り、少額減価償却資産の特例、法令上の家事按分、青色事業専従者給与の経費化などは割愛するが、要は政府として「300万円を超えない副業は青色申告させたくない」のだろう。「300万円を超えない副業は事業ではない」ということか。これまでの個別判断を標準化したい思惑もあるのかもしれない。もちろん雑所得でも経費は落とせる(その判断は税務署による)が、青色申告なら特別控除がつく上に本業の給料と損益通算できるため税制面での有利さは計り知れない。それを逆手にとった故意かつ過度な赤字による脱税も横行していることは事実だが、副業・兼業で仕事をしているサラリーマン(本稿、雇用形態に限らず主たる家計を被雇用者として得ている者すべてを便宜上、サラリーマンとする)の多くは副業も「事業」として取り組んでいる。また30年間賃金が上がらなかった日本、副業もまた「生活の足し」はもちろん「自己防衛」のためでもあった。「副業で300万円いかなければ雑所得ですか。他の副業も同じかもしれませんが、やはりフードデリバリーも狙われたな、という感想です」 情報提供のお世話になっていただいている配送員、彼は専業ではなく、平日の日中は中小企業のサラリーマンとして働き、休日や余裕のある平日夜間、少しの時間にフードデリバリーの副業をしている。「昨年は約100万円くらいですが、これでも時間を考えれば自分では稼いでいるほうだと思います。300万円なんて無理ですよ、それ副業じゃないです」 そう言って笑う彼につられて筆者も思わず笑ってしまった。まったくその通りで、これまで多くのフードデリバリーを取材してきたが、副業稼働ならあくまでギグワーク、わずかな時間で300万円稼げるなら専業でしたほうがいい。「それに業績の悪い会社とはいえ(私は)正社員ですから、いずれは独立したいとは思っても現状で飛び出すのは現実的ではないです。私たちのようなサラリーマンの副業をさらに縛り上げてどうするのでしょう。関係ない話と言われてしまえばそれまでですが、宗教法人が無税なのに、ですよ」 昨今の宗教問題もあって少し脱線してしまうのは仕方のないことだが、気持ちはわかる。政府は2019年4月から「働き方改革実行計画」としてサラリーマンの副業を推奨した。この国の賃金の上がらない分、空いた時間で働けと民間企業にも協力を求めた。ギグワークはじめ多くの副業にサラリーマンが従事することになったが、それが一段落ついたらこの改革案、正直「やり方が下手くそだなあ」と思う。インボイスもそうだが食ってくために働くレベルの労働者ばかりを狙うようになった。よほど金が無いのか。低額の納税者ほど恩恵を与えたほうが徴収率は上がるはずなのに。 彼のような「生活の足し」として副業に勤しむサラリーマンだけでなく「働き方改革実行計画」より以前から副業というよりは「兼業」で働くサラリーマンも多い。先のWEBエンジニアのような技術者はもちろん、クリエイターなどもまさにそれだろう。この場合も「独立のため」「夢の実現のため」「自己研鑽も兼ねて」という意味合いもある。「イラストレーターで年間売上げ300万円はきついですね。案件や人気度、技量にもよりますけど。漫画家ならともかく、みなさんが思うほどイラストレーターって稼げませんよ」 彼はあくまで匿名(イメージもあるため)ということで話を伺うが、イラストレーターで専業というのは極めてハードルが高い。多くのファンは人気イラストレーターなら「すごくもらっているのだろう」と思うだろうが、ライトノベル(以下、ラノベ)の表紙でもたいしたことはない。筆者の時代より紙媒体に限れば全体的な単価は下がっている。「基本、単価仕事ですからね。ラノベなら印税も折半だったりしますけど、ほんとみなさんが思うほどもらえません。それに専業といっても理解ある両親のところで実家住まいとか、あと言い方は悪いですけど収入の太い相方(妻、夫)がいて主婦、主夫兼イラストレーターってのがほとんどじゃないですか。多くはサラリーマンとかの本業しながらですよ」 イラストレーターは誰もが知る人気絵師でもイラスト専業ではファンが思うほどには稼いでいない。個人の画集など、よほどの大家か大ヒットを記録したイラストレーターでなければ難しいだろう。それすら部数は人気漫画ほどではない。基本、続刊もないし人生で何冊出せるか、というレベルである。イベント展示会前の路上で女性が声をかけて場内へ誘うなどして市場価格より高額な値段で売りつけると批判された絵画商法に一部の絵師(本当にごく一部なのだが)が加担する理由でもある。「一般なら広告絡みですね。あとはゲーム案件を請けたり、男性向けもできるならもう少し稼げるし専業の場合もありますが。とくに目立つところではラノベの絵師など兼業多いと思いますよ、そもそもラノベ作家(小説家)そのものが兼業ばかりなんですから。いつ人気がなくなるかわかりませんし、そもそも人気がでないままかもしれませんからね、保険の意味でも辞められません」 こうした仕事もまた古くからある「副業」である。「夢のため」「専業になるため」として取り組むサラリーマンの副業である。サラリーマンをしながらクリエイターを目指すというのはそれこそ明治時代の文豪からしてそうで、商業デビューしてもサラリーマンと兼業、副業というケースは多い。本旨ではないため踏み込まないが、ともかく日本の多くのクリエイターもまた、読者やファンが知らないところで兼業・副業として創作をしている。 また、この改革案が通ったとして「反証」により商業作家であり、事業として創作をしているという主張が通るかはわからない。また「どちらが本業か」という問題もあり、仮に200万円を被雇用者として、200万円を創作で稼ぐクリエイターの場合、後者を本業だとして青色申告しても税務署が前者と判断する可能性もある。こうした「作家」業は、仕入れや発注主としての仕事がほぼないことが多いため売上げ=収入に近い状態であることが多い。機材や資料といっても、である。「300万円以上稼げばいい」という無責任な声もあるが、これについては筆者の友人であるアニメーター氏(彼自身は専業)がこう語る。「年齢にもよりますが、個人事業主のアニメーターで年間売上300万円もあったら、若手なら立派なものですよ。そもそもアニメ制作会社の給料だって年収300万円とか普通なのに、業務請負の単価仕事で300万円稼ぐのって大変ですよ。フリーの新人なら100万円いかないと思います」 あくまでアニメーターとしての話で案件にもよるのだが、それなりの経験を積んだ第一原画でもそのくらいか、多少超える程度だと思う。アニメーション業界全体となればプロデューサーや監督なども含まれるため平均値は上がるが、アニメーターに限れば改善の傾向がみられるとはいえ作業量や求められる能力に比べればまだ安い。「昔は副業のアニメーターって限られてたんですけど、デジタル作画になって工程を細かく、遠隔地でも分担して作業できるようになりましたからね。十分な戦力です。副業を一緒くたに悪みたいに決めつける今回の改革案は賛成できないですね」副業転売ヤーは申告なんてしないだろうね 今回の改革案は先にも書いた通り、副業と称して青色申告とそれに付帯する経費、とくに損益通算によって赤字計上で脱税を繰り返す連中が狙いなのは確かだろう。しかしごく一部を口実に全体まで適用するのはどうか。そういう連中は脱法行為をなんとも思っていないし、まず税務署が来ることもなければ、来たとしても修正申告で済む、追徴もたいしたことはないと高をくくっている。無申告加算税は50万円で15パーセント、100万円以上で20%、これも絶対くらうとは限らない、修正申告指導のみのお目こぼしでラッキー、というケースも多い。別に脱税を推奨しているわけではないが、これが現実である。「ネットで偉そうに言ってる連中もさ、ネットオークションとか背取りとか転売とか、そんなの古物商もとってなければ申告もしてないのばっかりだよ。『俺が言った』で構わないから載っけてくれよ。実際そうだからさ」 悪い話は悪い人から聞く、ということで以前、『マスク転売ヤーの告白 親戚、老人、死人のアカウントまで駆使』で話をうかがった会社経営者に電話をするとこの回答。「うちは法人だから兼業の話は関係ないけど、納税はしなくちゃだめだよ。でも50万とか程度の稼ぎでやってるほとんどの(転売の)個人勢なんかサラリーマンどころか公務員だっているし、申告してないだろうね。副業禁止ってとこもまだ多いからさ」 そもそも公務員は認められた特別なケースを除けば兼業が禁止されている。しかし筆者も公務員がこうした転売や背取り、情報ビジネスなどで小銭を得ているケースは知っている。内緒なのか黙認なのかはわからないが。もちろん販売規制品の転売やダフ行為、古物商をとっていない場合などを除けば道義的な問題はともかく違法ではない。それこそPS5やガンダムのプラモデル、ナイキのスニーカーなど個人の小遣い稼ぎで転売している連中はネットオークション、フリマアプリ、SNSでいくらでも見つかる。仮に確定申告の必要がないとされる20万円を超えていなくても住民税の届け出は必要である。しかし現実に、それをしている人は少ないだろう。彼らは今回の改正案が通っても痛くも痒くもない。「悪いやつはなんでもするからね、法人成りって手もある。脱税目的のマイクロ法人が増えるんじゃなかね、実際、持続化給付金なんてそんな連中が群がったじゃないか。みんな現実ではチマチマ悪さしてるんだよ」 PS5で儲けてご機嫌、あいかわらずの自己弁護も兼ねた放言だが、少額でも申告している人たちはいるだろう。しかし彼の意見は一部もっともで、みな品行方正かと言えばそうではない。政治家や芸能人、スポーツ選手まで手を染めていた新型コロナ給付金詐欺、不正受給は記憶に新しいだろう。結局、世の常といえばそれまでだが正直者が馬鹿をみる、明確に事業としての副業をしていたはずの方々が割を食うことになる。 これ以外にも筆者のもとには様々なサラリーマンの副業者から話が舞い込んでいる。今回の改正案に反対という意見が多いが、そもそも各人事情はさまざま、副業の業種によっても変わる。反証の機会があるとはいえ、これを額面通りに受け取る社会人はいないだろう。一例として、ブロガーで筆者に意見をくださった方のコメントをまとめると以下の通り。「ブロガーなんて雑所得だよって税務署に言われました。副業の場合、とくに新しい業種の場合は仲間もそうですが雑所得にされやすいと思います」 こうしたブログはもちろんYouTuberやバーチャルYouTuber(Vチューバー)、ボカロPや歌い手、地下アイドルやインディーズ声優なども副業が大半だろう。個々の詳しい説明はしないが、こうした日本の新しいクリエイター業にも水を差すかたちになりかねない。もちろん先のフードデリバリーやマッチングアプリで請け負うような仕事もまた、年間売上300万円いかなければ「雑所得」となるだろう。「遊びだろ」と揶揄する向きもあるだろうが、現実には億を稼ぐ配信者などの「新たな仕事」が生まれ続けている。彼らも最初は学生以外は兼業だったはずだ。固い仕事ならいわゆる士業だって開業して間もなければ兼業が多い。本稿はあくまで数例を集めただけに過ぎない、ありとあらゆるサラリーマンの副業が、じつのところ日本を支えてきた実態がある。 一律300万円に満たな副業は雑所得、意見はさまざまだろうが、その意見を国税庁はパブリックコメントで8月31日まで受け付けている。・国税庁パブリックコメントhttps://www.nta.go.jp/information/consulation/sake_index.htm 筆者としてはサラリーマンの副業者だけでなく、従来のクリエイターや技術者といった副業・兼業にも影響が出てしまうことを危惧している。改正案は通れば来年度からという急ぎぶり、もう少し議論が必要と思う。 最後に、本稿の主題は改正案についてであり税務全般の解説ではない。一部の用語は平易に置き換えた。また法令上の判断と実務上の判断とが異なる場合もある。試算もまた目安である。税務申告は個々別、多種多様のため個人的なケースは最寄りの税務署、もしくは税理士に相談して欲しい。今回の改正案では不動産所得は除外されている。あくまで事業所得に限った「改正(案)」であり、「いまのところ」決定ではない。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

ライフ

熱中症は重症になると命にまでかかわる(イラスト/いかわやすとし)
今や国民病、暑い8月も「熱中症」に要注意 高齢者は生活習慣の見直しを
 蒸し暑い環境で筋肉運動などを行ない、体温が上昇すると発汗や血液が皮膚表面に集まり、熱放散して体温を下げる働きをする。それでも体温が下がらず、水分やミネラルなどのバランスが崩れ、めまいや立ち眩み、全身倦怠感などの症状が起こるのが、今や国民病ともいえる熱中症だ。重症では意識障害や痙攣、肝臓や腎臓の機能障害、血液凝固障害などを発症し、命にかかわる。 人間は体温が37℃前後で代謝や酵素が最適に働く。そのため異常な体温上昇を抑える調節機能が備わっている。 例えば発汗後に汗が乾く時の気化熱で体温を下げたり、血液が体内の熱を運び、皮膚表面に集まり、放熱して体温を下げる。他にも血液は、あらゆる臓器に酸素と栄養を運び入れながら、同時に臓器から出る老廃物を持ち帰って腎臓や消化器から捨てる働きもする。これらを行なっても体温調節機能が破綻してしまい、体内の水分やナトリウムなどのバランスが崩れ、症状が出るのが熱中症だ。 体温が異常に高い状態が続くと、発汗による脱水と塩分不足で血液の流れが悪くなるため皮膚表面からの放熱もできなくなり、脳や心臓、腎臓、肝臓といった重要な臓器がダメージを被る。重症になると血液や中枢神経が障害され、意識障害、痙攣を発症。その結果、血液が固まらなくなる血液凝固障害や筋肉が大量に壊れる横紋筋融解症、急性腎障害など重篤な症状を引き起こし、命の危険が続く。 帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターの三宅康史センター長に話を聞いた。「熱中症の典型的な初期症状はめまいや立ち眩み、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむらがえりなどです。しかし、これらは他の病気でも起こります。先日、若い方が体調を崩して救急搬送されました。熱中症だと思ったのですが、念のためPCR検査をしたところ、陽性でした。熱中症は症状ではなく、暑い環境にいたか、暑い場所で肉体労働やスポーツをしていたかで判断することが重要となります」 以前は欧米と同じように熱中症の軽症を熱失神・熱痙攣、中等症を熱疲労、重症は熱射病と分類していたが、今年3月、環境省が4年ぶりに『熱中症環境保健マニュアル』を改訂。症状などによってI度(軽度)、II度(中等度)、III度(重度)の3段階に分類されている(表参照)。 ともあれ熱中症は元気な人でも暑い環境の中、肉体労働やスポーツをして体温が上昇すると発症してしまうが、それとは別に、現在は持病のある高齢者が動かなくても暑い環境に長くいるだけで発症するケースも増えている。「近年、地球温暖化での猛暑の増加、著しい高齢化、そして、貧困などがリスクとなり、熱中症による救急搬送が増えています。なにより体を冷やすことと水分補給の2つが不可欠。もちろん朝食をしっかり食べ、睡眠不足や過度の飲酒を避け、筋肉量を減らさないことも熱中症予防の基本です」(三宅センター長) 筋肉は脂肪と比べ水分保持量が多い。筋肉を保つために運動を続け、汗をかき暑さに慣れる体作りを目指そう。取材・構成/岩城レイ子※週刊ポスト2022年8月19・26日号

コラム

海外旅行のPCR検査にルール変更 国内で陰性確認すれば「弾丸海外旅行」が可能に
海外旅行のPCR検査にルール変更 国内で陰性確認すれば「弾丸海外旅行」が可能に
 日本人が海外に行く際に高いハードルになっていたのが、「帰国72時間前に海外で行うPCR検査」だ。そのルールが2022年8月15日に変更となった。依然としてPCR検査は必要だが、帰国前72時間以内であれば、日本出発前の検査でもよくなったのだ。具体的な変更点はどのようなものか、また、新しいルールをどのように活用すればよいのか。「3日もあれば海外旅行」がモットーのトラベルジャーナリストの橋賀秀紀さんが解説する。【写真】総額3万1000円程度から渡航可能、韓国・格安航空会社(LCC)「ティーウェイ」の機体 * * * 2022年8月15日、厚生労働省は水際対策についての新たな措置を発表した。現在すべての日本入国者に対して、PCR検査ないし、定量抗原検査を課しているのは周知のとおりである。この検査は海外で受けることがこれまで必須条件だった。 それが、8月15日0時以降の日本帰国者に対しては、日本国内でPCRなどの検査を受けてもよいということになったのだ。[参考:新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(日本出国前に日本で取得した検査証明書の扱いについて)]特典航空券を利用すれば直前で予約可能 2022年8月15日現在、すべての日本入国者は、日本への帰国便の出発72時間以内にPCR検査(もしくは抗原定量検査)を受け、陰性証明書を事前に入手しておく必要がある。ワクチンを3回接種しているかぎり、東ヨーロッパのアルバニアと西アフリカのシエラレオネからの帰国をのぞき、日本入国後の抗原検査は免除となっている。 日本への帰国便の出発時刻の72時間前以内に検査を受けなければならないという条件は変わらない。だが、その72時間以内に日本国内でPCR検査→陰性証明書をゲット→日本出国→現地に滞在→日本への帰国便に搭乗という弾丸旅行であれば、海外でPCR検査を受けることなく海外旅行に行くことが可能となった(最大で2泊3日も可能)。 今回の変更の最大のメリットは、なんといっても海外で陽性となってしまい、日本に帰国できないというリスクを極小化できることだ。日本で検査を受けるわけだから万一陽性となった場合には旅行そのものをとりやめてしまえばよい。 ただし、このスキームで海外旅行に行く場合、越えなければならないハードルがいくつかある。まず日本で検査を受け、結果が出てから航空券を手配することになるので出発直前でも手配できる航空券でないといけないということだ(キャンセル料を支払うのを覚悟であらかじめ航空券を手配するという選択肢もあるが、あまり現実的ではない)。 まずは特典航空券利用のケースを考えてみたい。 たとえばJAL国際線の場合、特典航空券は出発の24時間前(電話予約の場合)、ANA国際線の場合は96時間前までの予約が必須である。ANAの場合は選択肢から外れるし、JALも、陰性と判明してから出発まで最低24時間国内で待たなければならない分、現地での滞在時間が犠牲になってしまう。 この点アメリカ系の航空会社のマイレージプログラムは利用価値が高い。ユナイテッド航空のマイレージプラス、アメリカン航空のアドバンテージ、デルタ航空のスカイマイル、アラスカ航空のマイレージプランはいずれも出発当日でも空席があれば、予約発券が可能となっている。通常ならそこまでギリギリに予約することはないが、今回のようなケースでは特に有益である。おすすめはシンガポール アメリカ系航空会社でマイルは貯めていないという人もいるだろう。では有償航空券で直前の発券ができ、なおかつ安いのはどこの航空会社なのだろうか。 筆頭は成田発ソウル往復のLCCであるティーウェイ航空である。空港使用料なども込みの総額で3万1000円程度から見つかる。韓国は観光でもビザが必要になっているが、2022年8月に限り、ビザなしで渡航することができる(2022年9月1日以降については未定)。 ただし、韓国入国の際には陰性証明書の提示と出発72時間前までに電子渡航認証システムで承認を受ける必要がある。 東南アジアならシンガポールがおすすめだ。シンガポール航空の傘下となるLCC、スクートの直行便が成田からシンガポールのチャンギ国際空港まで往復総額5万2000円程度で購入できる。こちらはワクチンを2回接種していれば、入国前に特に準備することはない。陰性証明書の検体採取日時の「時刻」に注意 日本出発前のPCR検査はどこで受ければよいのだろうか。海外渡航用のPCR検査のなかにはいまだに高額のところが少なくないが、それらを利用する必然性はあまりない。たとえば、東京都では、無料でPCR検査ができるところが多いが、そのなかには海外渡航用の英文証明書も無料で発行してくれるところがある。 英文証明書について、以前は日本政府の指定した形式でないと搭乗拒否に遭うといった事例もあったが、2022年6月以降、記載事項は以下のとおりに減っている。【1】氏名、生年月日【2】採取検体、検査法【3】結果、検体採取日時、検査証明書交付年月日【4】医療機関名【1】【2】【4】は問題ないと思われるが、検査機関によっては採取日時の時刻が省略されているケースがあるようだ。その場合、該当日の0時0分から72時間とカウントされる可能性がある。なお、現地からの帰国便が遅延した場合も、遅延が24時間以内であれば日本で取得した陰性証明書は有効となる。遅延が24時間を超えるときは現地で改めて陰性証明書を取得する必要があるが、その可能性はかなり低いだろう。 岸田文雄・首相は8月10日の記者会見で、水際対策について、「G7諸国並みの入国が可能となるよう緩和の方向で進めていきたい」と発言している。帰国時の一律PCR検査義務化が解除される日も近いかもしれないが、すぐにでも夏休みに海外に行きたいが、現地で陽性のなるのがこわくて出かけられなかったという人にとっては、当面海外に行く唯一の選択肢となりそうだ。【プロフィール】橋賀秀紀(はしが・ひでき):トラベルジャーナリスト。東京都出身の40代。コロナ前は「3日休めれば海外」というルールを定め、ほぼ月1回の頻度で海外旅行に出かけていた。訪問国は122か国・渡航回数200回以上。著書に『エアライン戦争』(共著・宝島社)など。