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2017.11.18 16:00  マネーポストWEB

内定辞退なんて夢のまた夢? 「就職氷河期」時代の女子学生の苦労

「就職氷河期」時代の女子学生たちの苦労とは

 2018年卒業予定の大学生のうち、企業の内定を辞退した「内定辞退率」が64.6%になったとリクルートキャリアが発表した。「売り手市場」を表す数字だと話題になったが、1990年代後半の「就職氷河期」時代に就職活動を経験したネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「びっくりしましたが、いいんじゃないですか? だってこうした『選り好み』ってこれまで企業が学生に対してやり続けてきたことでしょ?」と感想を述べる。そして、学生が選べる時代になったのは良いとしつつも、氷河期時代の女子学生が置かれた状況はあまりにも苦しかったと振り返る。

 * * *
 私は1996年に就職活動をし、1997年に博報堂に入社しました。同社は2000年代以後、100人以上採用することが多いですが私の年は総合職66人、一般職13人でした。総合職は男性61人に対し女性は5人、一般職は全員女性でした。

 こういった状況下の就活では、「売り手市場」なんて言葉はあり得ませんし、特に女子学生の苦境ったら……! という状況にありました。当時の大学生の就職活動は今のようにウェブでエントリーをするという方式ではありませんでした。

 3年生の冬にリクルートから「リクルートブック」というタイトルの分厚い冊子が送られてきます。他の就活関連の業者からも同様の冊子は来ていました。ここには、様々な会社の紹介と資料請求用のハガキがついています。気になる会社のハガキをミシン目から切り取り、そこに必要事項を書いて送るのですね。人気企業の場合は切手を貼る必要があったのですが、それほど人気のない企業は「料金後納郵便」にて無料で送ることができました。

 しかし、この手の「ハガキ付き企業採用冊子」には裏がありました。当時、男子学生にはこういった冊子は何種類か送られてきていたのですが、女子学生には届かないことが多かった! 国立や私立の有名校の女子学生には届いていたものの、中堅以下の私立の女子学生にはこういったハガキ付きの冊子が送られていなかったのです。

 いや、有名私立の女子学生にも届いていなかったこともあります。私は国立の一橋大学出身なのですが、同期の女子学生・Aさんには届いていたそうです。一橋大学のサークルは津田塾大学、東京女子大学とのインカレが多かったのですが、ここで明確な差があったとAさんは振り返ります。

「私のところにもリクルートブックは来ていたけど、インカレサークルに入っていた津田、東女の子はけっこう大変だったみたい。こういった冊子が届いていない場合もあったようです。早稲田や津田の女子って『この大学に入ったんだったら私は当然総合職よね』と考えるんだけど、当時の男女格差は激しくて……。その中でも一般職に行かざるを得なくなった子や、バリキャリになるつもりだったのに、実際は中小金融の制服組になって打ちひしがれていた子もいた。本当にあの頃は有名女子大に行っても男女格差のせいで就職は大変だった……。

 ただし、一橋の場合は総合職以外は考えられない状況だったから、そこは逆に学内でその座の奪い合いになってけっこう厳しかった。当時、男女の採用数が明確に書かれていたもの。たとえば『男性80、女性20』みたいなのがはっきりと書かれていた。しかも女性で言えば『0』とか『1』もあり、これを見ると絶望的な気持ちになった」

◆インカレサークルに入るかどうかが死活問題

 私の知り合いの聖心女子大出身者は早稲田大学のインカレサークルに入っていました。これが非常に重要だったそうです。早稲田の男子学生から「リクルートブック」で使わなかったハガキを片っ端からもらうのです。

 人気企業はすでに彼が使ってしまっていますが、大企業の子会社やそれほど人気のない業種であればハガキは使っていない。よくあるじゃないですか、「三菱」とか「みずほ」とか「野村」とか「富士通」とかが社名の頭についていて、その下に「システム株式会社」とか「販売株式会社」の名前がついている会社が。

 そういった会社に片っ端からハガキを出すのですが、「数打ちゃ当たる」というものでもない。全体の採用数が少ない上に、「女から来たよ……」的に返事は一切来ないことが多い。彼女は「300社には出したけどね……。本当に戻ってきた数は少なかった……」と言っていました。結果的に住友商事系の専門商社に入ることができましたが、一般職での入社です。

 しかし、当時は一般職で入れただけでも御の字でした。というのも、事務系の仕事は派遣社員や契約社員でまかなおうというブームが始まり、一般職の採用そのものが少なくなっていたのです。そして、インカレサークルに入ることは当時の女子学生にとっては就活の面を取っても死活問題になっていたのでした。

 こうした時代があっただけに、今年、内定辞退率が64.6%といっても企業に対しては「アンタ達が過去に採用を縮小しまくったツケが来てるだけでしょ?」といった気持ちを抱いてしまうのでした。そして、また景気が悪くなると採用数は縮小されるわけで、「内定をなんだと思っているのだ!」と今年の学生を安易に批判するのはお門違いです。ようやく学生もあの悪名高き「お祈りメール」を企業に対して出せるようになったのです。

「この度は残念な結果になりましたが、貴社のますますのご発展を心よりお祈りいたします」

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