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2017.11.22 16:00  マネーポストWEB

日本企業が元気だった時代の経営者は「質問する力」があった

かつての日本企業の経営者が持っていた「質問力」とは(大前研一氏)


 日本企業が元気だった時代の経営者には、ある特徴があったと経営コンサルタントの大前研一氏は言う。オムロン創業者の立石一真氏、京セラの稲盛和夫氏、パナソニックの松下幸之助氏らが共通してもっていた「質問する力」について大前氏が解説する。

 * * *
 50年以上も前に現在のIoT/IoE(*)の本質を理解し、サイバー社会の到来を予見していた経営者に、オムロン創業者の立石一真さんがいる。立石さんは、私に質問を重ねながら自分の頭の中のイメージを「見える化」していったわけだが、そこで重要なのは「質問する力」である。

【*IoE(Internet of Everything)/「すべてのインターネット」と訳される。パソコンやスマホなどのIT機器にとどまらず、日用品など様々なモノがインターネットにつながり情報を送受信する仕組みをIoT(Internet of Things=モノのインターネット)と呼ぶが、IoEは、モノだけでなく施設やサービスなども含めた概念とされる】

 質問は、イノベーションの源だ。現状に対して問題意識を持っていたり、疑問や不満を感じていたりしなければ質問はできない。質問しないと考えは進まないから、答えも出ない。つまり、質問して初めて問題の解決策が見つかるし、新しいアイデアも生まれるのだ。

 日本企業が最も元気だった時代は、この「質問する力」が経営者にあった。代表的な例が、センシング技術を基にオートメーション機能機器を次々に開発した立石さんや、ファインセラミックス技術で部品産業を変えた京セラの創業者の稲盛和夫さんだろう。

 パナソニック(旧・松下電器産業)創業者の松下幸之助さんも同様だ。たとえば、草創期の同社の大ヒット商品になった「二股ソケット」は、天井から下がる電球ソケットが唯一の電源だった当時、母親が暗い部屋の中でアイロンをかけている姿を見た幸之助さんが「電球をつけたままアイロンがけができないか?」と質問して誕生したとされている。

 彼らは、自分が「答え」を知っていると自惚れたりしない。だから、途中で手を抜いたり諦めたりすることもない。ただ目の前の問題点や不満に対して「何とか改善できないか?」「別のアプローチなら解決できるんじゃないか?」と何度も質問し、とことん考えて答えを見いだそうとした。その結果、的確な「ソリューション」を見つけ、日本の高度経済成長を牽引する様々な新商品を世界に送り出してきたのである。

 世界を変える新技術や新商品の“原点”は、単なる知識量や資本力ではない。突破口を見つけるまで問い続ける「質問力」にあったと思う。

 今は各種のセンサーが安くなり、GPSもパケット通信網もあるので、以前に比べれば、技術革新や商品開発が低コストで簡単にできるようになっている。ところが、今の日本企業は、かつてのような世界を変える新技術や新商品を生み出すことができず、本来は力があるはずのシャープや東芝などのように枕を並べて討ち死にしている。

 それらの会社と、世界で大活躍していた時代の日本企業の違いは「経営者の質」だと思う。つまり、今の日本企業の経営者に、幸之助さんや立石さんのような「質問する力」がないため、革新的な技術や商品を生み出して高い付加価値を取ることができないのだ。

 なかでも現在、世界から大いに後れをとっていると思うのが、日本の銀行だ。今のフィンテック(ITを活用した金融サービス)を使えば、国際的にクロスボーダーで自由に瞬時にお金を動かすことができる。ならば、人々は世界的に最も運用益が高いところにお金を預ければよい。みんなのお金を最も効率よく運用し、かつ決済に使っていくための技術がフィンテックなのである。

 ところが、フィンテックに対する日本の銀行の動きは極めて鈍い。自分たちの既得権益を守るためにサボタージュしていると言わざるを得ない。

 世界ではフィンテックがどんどん広がり、スマホやタブレットPCで簡単にモバイル決済ができる中国の「アリペイ(Alipay=支付宝)」や「ウィーチャットペイ(WeChat Pay=微信支付)」に象徴されるように、従来の銀行が要らなくなる方向へ進んでいる。

 ところが、日本だけはそこから遠い。どの国でも人々は金利選好(金融資産のより高利での運用を志向すること)が当たり前なのに、日本人は金利がほとんど付かない銀行に約1000兆円も預けている。

※週刊ポスト2017年11月24日号

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