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2017.12.13 16:00  マネーポストWEB

10%への消費増税は前回より上げ幅低いが心理的影響大きい

負のインパクトは前回の比ではない(写真:時事通信フォト)


 政府は「社会保障財源のため」「金持ちから低所得者に再配分する」と理屈をつけ、2018年からはサラリーマン増税、年金増税、たばこ増税、観光税まで税金を取り立てる方針を打ち出した。そうしてやせ細った国民に、2019年からはいよいよ消費税10%への引き上げが待ち構えている。

 これでは国民生活は疲弊し、“税あって国民なし”の重税国家そのものだ。そんな中、首相官邸の中から“こんな増税はおかしい”という反発が噴き出した。

「消費税率10%への引き上げは国を滅ぼす」──そう声をあげたのは内閣官房参与を務める首相の経済ブレーン、藤井聡・京都大学大学院教授である。

「安倍総理は総選挙で『消費税を予定通り10%に引き上げ、税収の使途を変更して教育無償化などにあてる』と公約し、選挙に大勝した。結果、与党の政治家や官僚の間には“増税するのが当然”という空気が強くなった。

 しかし、2014年4月の消費増税によって消費は激しく落ち込み、日本経済は今もその後遺症を引きずっている。しかも税率を10%に上げた場合の深刻度は、8%引き上げ時の比ではない。だから増税は絶対に凍結すべきです」

 総選挙前に安倍首相が記者会見で消費税増税を発表すると、藤井氏は京都大学の自身の研究室で増税がどう影響を与えるかの実証研究に着手した。選挙後、その結果をもって政府や自民党の要人たちに1枚の報告書を突きつけた。

 そこには、こう書かれている。

〈「10%」増税は、巨大な消費低減効果を持つ。とりわけ女性に対する影響は極めて甚大〉

 この提言が波紋を広げた。

◆「女性」が買い控える

「藤井研究」の特徴は、マクロ経済や財政論ではなく、「消費者行動心理」の面から増税の影響の実証実験に取り組んだことだ。

「国土強靭化」の旗振り役として知られる藤井氏の専門は都市社会工学だが、スウェーデンのイエテボリ大学心理学科で客員研究員を務めた社会心理学者でもある。学位論文のテーマも「消費者行動心理学」だ。

「次の消費税増税は税率が10%へと2ポイント引き上げられるから、増税幅だけを見ると前回(5%→8%)より小さい。経済学は『人間は合理的だ』という仮説に立っているから、今回の消費増税の影響は前回より小さくなると予想する。“2ポイントくらいたいしたことはない”というわけです。

 しかし、心理学は『人間は合理的でない』という前提に立つ。だから消費税率が3%や8%時には税額が計算しにくく、税負担をあまり考えない人も一定数いる一方、税率10%だと計算は簡単だから、誰もが“こんなに税金が高いのか”と買い控えるようになると予想される」(藤井氏)

 どちらが正確なのか。藤井研究室は、全国の男女100人ずつ、計200人を対象に実験を行なった。

 被験者に増税後の消費税率をさまざまに変えながら、欲しい商品を「絶対に買う」から「絶対に買わない」まで9段階に分けて回答させ、税率の「数字」の印象によって購買意欲がどう変化するかを調べたのだ。

「実験の結果、予想通り、消費税率が10%になれば増税に対する『心理的負担感』が格段に大きくなり、前回の8%増税時の1.5倍の消費縮小効果をもたらす。とくに女性に限れば、その『心理的負担感』は2~3倍程度にまで拡大し、激しく『買い控える』ことが示された。合わせて、自動車やマイホームなど高額商品ほど『買い控え』が大きいことも実証された。

 だから、前回増税時の世帯消費額の落ち込みは7%だったが、今回の落ち込みは1割程度に達し、国民のさらなる貧困化が決定的となる。そうなると、企業の売り上げも1割減って、賃金も下がってリストラは確実に増える」(藤井氏)

 前回の「8%増税」後、3年間で家計の実質消費が1か月あたり平均2万8000円(年間約34万円)も落ち込み、実質賃金は4%以上ダウンした。高成長路線に乗ったかに見えた日本経済はあっという間にマイナス成長に転じた。

 その1.5倍から3倍の悪影響が消費行動に現われるという指摘だ。

※週刊ポスト2017年12月22日号

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