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2018.08.09 07:00  マネーポストWEB

トヨタ社長発言「日本で完全自動運転の実現は難しい」の意味

自動運転のレベルが上がると道交法の改正が必須に(撮影:近藤篤)


 日進月歩の進化を遂げる車の「自動運転」技術。そのレベルアップに不可欠なのが、道路交通法の改正だ。なぜなら、現行の法制度では、公道を走る自動車は「人間が運転者として乗車し、制御すること」が前提になっているからだ。

 人間のドライバーがハンドルを握ることなしに車が運転を制御したり、ドライバー不在の無人の自動運転車が存在することを道交法は想定していないため、現時点ではハンドルから手を離してスマホを操作したり、許可なく公道で無人の車を走らせたりすることは道交法違反になる。

◆手離し運転は、65秒で自動運転が手動に切り替わる

 おそらくは世の中に「自動運転」の言葉を認知させたであろう日産「リーフ」のCMでも、矢沢永吉が「自動運転、もうすぐそこに来てる」とハンドルから手を離して腕組みするシーンの下には、「許可を得た場所での実験映像です。真似をしないでください」とテロップが流れる。

 事実、国土交通省は、2017年10月の段階で、高速道路を自動走行する際、15秒以上手離しで運転すると運転席に警報を表示し、そのまま手離し運転を続けると50秒後に自動運転のシステムが停止して手動に切り替わるプログラムの搭載を自動車メーカーに義務付けている(2019年10月以降に発売される新型車を対象)。

 もちろん、2020年のレベル3をはじめ、完全自動運転に向けたレベルアップは国の政策であるから、道交法を管轄する警察庁も、車の安全基準を策定する国土交通省も、今後随時、法改正や基準の見直しを迫られることにはなるだろうが、慎重な姿勢を崩していない。

◆制限速度遵守では、いつまでたっても高速道路を走れない?

 今年6月、日本自動車工業会の会長に就任したトヨタ自動車の豊田章男社長が、就任後の記者懇談会で、自動運転について「実際の車の走行状況と道交法は解離しており、また、自動運転車と非自動運転車が混在する状況では、日本における完全自動運転の実現は難しい」という主旨の発言をした。

 この発言の背景には、まず制限速度の問題がある。

 たとえば首都高速道路の制限速度は、都心環状線の大半が時速50km。しかし現実には、渋滞してでもいない限り、ほぼすべての車両が制限速度を超えて走行している。厳密に言えば速度違反だが、その時の車の流れにのって、停滞しないスムーズな走行状況を実現しているわけだ。

 が、自動運転車において、速度違反は許されない。時速50km制限区間は、道路がガラガラであろうと渋滞の原因を作り出す状況になろうと、時速50kmで走行せねばならない。自動運転ではない後続車のイライラを買い、あおり運転などで事故の原因になることも考えられる。

 また、高速道路での合流にも問題が生じる。本来、走行の優先権は本線を走る車両にあり、合流を待つ車両に道を譲る義務はない。ただ実際は、危険を避けるために、流入車を優先させるという不文律というか、暗黙の了解のような状況がある。

 ところが、流入車が自動運転車だと、「本線車両優先」という前提があるため、いつまでたっても本線に入っていけない。結局、状況に応じて適宜、手動に切り替えないと、国が自動運転化で目指す「安全かつ円滑な運転状況」は無理ということになる。

「個人的には、過疎地に暮らす高齢者や障害をもつかたがたの移送を目的としたバスやタクシー、あるいは低速走行レーンを設けての1人乗りのパーソナル・モビリティーなど、公共福祉に寄与する以外の完全自動運転化は不要だと考えています。現状の法規制や道路状況での完全自動運転化は無理があるし、危険ですらあります」(モータージャーナリストの渡辺敏史さん)

※女性セブン2018年8月16日号

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