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2018.08.19 17:00  マネーポストWEB

トルコリラの問題は一過性ではない これから金融市場に波及する可能性も

トルコリラ暴落の余波はまだ続く?(写真:アフロ)


「夏休み相場」で、かつ「お盆休み」の最中に、通貨トルコリラが急落した。それは、さまざまなマーケットに波及している。まだ今回の「通貨トルコリラの急落」に関して、公式なネーミングはないが、いずれ「トルコリラ・ショック」や「トルコ・ショック」といった名称が付けられるのだろう。

 こうした事件は、時間が経過すると、定説的な名称になる。すでに新興国通貨に波及しているので、その影響がさらに大きくなれば、ネーミングは「新興国通貨ショック」になる可能性もある。

 米ドル/トルコリラのチャートを見ると、今年の4月ころは、米ドル/トルコリラ=4.0000程度に推移していたが、5月から7月にかけて「米ドル高トルコリラ安」が進み、8月初旬には、米ドル/トルコリラ=5.0000程度に上昇した。

 8月に入り、一気に「米ドル高トルコリラ安」が加速し、短時間で、6.0000を突破して、一時期は、7.0000を超えた。

 米ドル/トルコリラのレートでは、分かりづらいかもしれないので、変化率を同じにして、ドル/円で想定してみよう。仮に、4月頃のドル/円=110.00とすると、8月初旬のレートが、ドル/円=137.50になる。一時的な高値である米ドル/トルコリラ=7.0000に相当するレートは、ドル/円=192.50だ。

 つまり、1ドル=110.00円から、1ドル=192.500円に急上昇したようなものだ。ドル/円で対比すると、その変動の激しさを理解できるのではないだろうか。

 実際のトルコリラ/円の為替レートの推移をみると、今年の4月頃のトルコリラ/円は、25~26円程度だったが、8月の下落時に付けた安値は15円台だ。急激な「トルコリラ安/円高」になっている。半値まではいかなくとも、それに近い大暴落といって良いだろう。

◆ユーロ/ドルが安値を更新して大きく下落する可能性も

 8月16日のマーケットでは、中東カタールが混乱を鎮める目的でトルコへの投資を表明したことを材料に、トルコリラは少し持ち直している。その前日(15日)に、トルコの銀行監督当局が事実上の金融引き締めに対応を始めたことも材料となったようだ。目先のマーケットは、少し落ち着きを取り戻した様子だ。

 しかし、今回の「通貨トルコリラ急落」を一過性の事件と考えない方が良いだろう。「米国とトルコの対立」を解決するには、時間がかかるとみられるからだ。「ショック」はまだ始まったばかりかもしれない。

 トルコリラ急落の原因としては、トルコが米国人牧師を長期に拘束したことで、トルコと米国とが対立していることが挙げられる。そして8月10日に米トランプ政権がトルコの鉄鋼・アルミへの追加関税引き上げを発表して、トルコリラの売りに拍車がかかった。

 トルコリラの急落は、ユーロ/ドルの売り要因になっている。トルコは欧州に近いため、マーケットは地政学的リスクを理由に「通貨ユーロの売り要因」と考えたのだろう。

 8月10日のマーケットでは、「ユーロ売りドル買い」が進み、下値の重要なチャート・ポイントだった1.1500を割り込み、下落している。1.1500を割り込んだ時点で、「売りシグナル」を発した、と考えられる。

 この「売りシグナル」に従い下落して、今のところ、ユーロ/ドルの安値は1.1300アラウンドを付けている。下値の重要なチャート・ポイントだった1.1500を割り込んだので、ユーロ/ドルは、「下落トレンド」に転換した可能性が高い、と判断できるだろう。

 今のところ、安値は1.1300アラウンドだが、この安値を更新して大きく下落する可能性は十分考えられる、ということだ。

 今回のトルコと米国の対立は、簡単に(短時間で)解決する問題ではないだろう。米国大統領と、トルコ大統領のそれぞれの性格を考えると、どちらも折れないし、なかなか妥協点を見いだせないのではないか、と危惧するからだ。

 トルコリラ急落は、すでに「他の新興国通貨の売り」に波及している。さらに、今後は時間の経過とともに、米国・欧州の株式市場をはじめ、金融市場に影響を与えるようになるのではないか。けっして一過性の問題とたかをくくってはならない。

(2018年08月17日東京時間03:00記述)

◆松田哲(まつだ・さとし):三菱信託銀行、フランス・パリバ銀行、クレディ・スイス銀行などを経て、オーストラリア・コモンウェルス銀行のチーフ・ディーラーとして活躍。現在は松田トラスト&インベストメント代表取締役として外国為替や投資全般のコンサルティング業務を行っている。HPは「松田哲のFXディーラー物語」(http://matsudasatoshi.com/)。メールマガジン「松田哲の独断と偏見の為替相場」も発信中。

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