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2018.09.05 11:00  マネーポストWEB

トランプ大統領のアジア軽視は中国の覇権拡大に有利に働く

トランプ大統領のアジア軽視の姿勢がどのような影響を及ぼすのか(Getty Images)


 11月にシンガポールで開催されるASEAN首脳会議、その後、パプアニューギニアで開催されるAPECサミット会議に、アメリカのトランプ大統領は出席しないことになった。

 ホワイトハウスは8月31日、両会議について、ペンス副大統領が出席すると発表した。中国メディアの環球時報は9月3日、この件に関して、「アメリカのメディアでは、“中国は魅力をアピールするチャンスを得た”と報じている」などと伝えている。日本ではあまり報じられていないが、その意図はどういうものなのか。同記事の要旨について、簡単に紹介したい。

 トランプ大統領は大統領就任直後にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)から離脱、日米韓軍事同盟のコストについて疑問を投げかけたが、その後、アメリカの官僚たちは、インド太平洋戦略を前面に押し出して、これがアジア地区における戦略のコンセンサスであると公言していた。しかし、アジアでの重要な会議に出席しないのでは、インド太平洋戦略を成功させるどころか、アジア太平洋地区におけるこれまでのプレゼンスの維持すら基本的に放棄しているに等しいのではなかろうか? そうした懸念を強く感じる。

 北朝鮮の核兵器放棄を承服させなければならない。戦略的な競争相手である中国との貿易摩擦も抱えている。アメリカの外交政策においてもっとも厳しい試練に置かれているのはアジアである。そのアジアの重要会議に出席しないというのは間違っている。

 もっとも、トランプ大統領側にも出席できない理由がある。アメリカ議会中間選挙は迫っているし、ロシアゲートなど一連の調査もある。国内問題に注力しなければならないといった事情もある。

 トランプ大統領は11月、アジアの重要会議には出席しないが、パリで行われる第一次世界大戦終戦100周年記念活動には出席すると発表している。はっきりと、アジア軽視、欧州重視の傾向が見て取れる。

 アメリカのメディアは、アメリカの大統領が出席しない中で、中国は両会議において自国の理念を更に大きく提唱するだろうと危惧している──。

 トランプ大統領は中国との貿易協議において、厳しい対応を続けている。表面上は中国のハイテク製造業に関する発展計画である「中国製造2025」の阻止であるとか、知的所有権を守らせることを理由として挙げているが、もし、本当に中国の台頭や中国式のビジネススタイルの蔓延を阻止したいのならば、TPP、あるいはインド太平洋戦略により中国包囲網を形成するとか、アジアにおけるアメリカのプレゼンスを高め、中国のプレゼンスを抑えることなどが有効な戦略となるはずだ。

 官僚がサポートしている以上、そんな簡単な理屈をトランプ大統領がわからないはずはない。だとすれば、トランプ大統領の本心は中国とは最終的には敵対するのではなく、協力関係を築きたいと考えているのか、それとも、単純に自分の支持者に対する利益供与にしか興味が無いのか? いずれにしても、トランプ大統領のアジア軽視は中国の覇権拡大に有利に働く可能性は十分あるだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。有料メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も展開中。

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