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2018.10.17 07:00  マネーポストWEB

米中貿易戦争の最中に中国企業が続々と米国市場に上場する背景

今年に入っても中国企業が続々と米国市場に上場している(Getty Images)


 米中貿易戦争が厳しさを増している。トランプ大統領はこれまでに、昨年の中国からの輸入総額の約半分にあたる輸入品に対して追加関税を課したが、10月9日には、中国が対米報復関税措置を実施すれば、残りの約半分についても追加関税を発動すると発言している。

 また、ペンス副大統領は4日、保守系シンクタンクであるハドソン研究所において、「中国はアメリカの民主主義に介入している」として、中国を痛烈に批判する50分もの演説を行っている。経済だけではなく、軍事や人権などにも批判は及んでおり、内容だけを見ていると、米中は既に冷戦状態に入っているかのようである。

 政治面での米中関係は改革開放以来、最悪といった状況であるが、資本市場での米中関係は昨年後半以降、急速に深まっている。

 アメリカのコーナーストーン・キャピタルグループが発表した統計によれば、2018年1-9月にアメリカ市場に上場(IPO)した中国企業は23社に及び、特に、米中貿易戦争が激化した7-9月期でも10社が上場している。

 2018年はこれまでのデータをみると、中国企業のIPO数では過去8年間で最も多い年となっている。資金調達額は73億ドルを超えており、前年同期比で490.6%増加している。金額ベースでは2014年以来の高い水準だ。

 その要因としては、インターネット、ビッグデータ、AIなどの技術の急速な発展を受けて、中国のニューエコノミー企業が急速に起業、成長していることが挙げられよう。

 アメリカの大学は高度に国際化、自由化しており、世界中から優秀な学生を集めているが、そうした学生の中で最大の勢力は中国人である。

 アメリカで学んだ中国人の中には本国に戻り起業する者も多い。アメリカのベンチャーキャピタルはグローバルに展開しており、有望であれば国籍を問わず投資する。投資銀行も同様である。優良な中国企業を積極的に発掘して、アメリカ市場へと上場の手引きを行う。

 トランプ政権は「中国製造2025」(2015年に中国が発表した今後10年間の製造業発展のロードマップ)を批判している。批判の中身は、政府が補助金などを通じてハイテク産業を保護し支援しているという点だが、これまで中国のハイテク産業の成長を支えてきたのはアメリカである。中国のハイテク企業はアメリカ仕込みであり、アメリカが金融面で積極的に関与することで高成長を遂げている。

 トランプ大統領は政治的な手段によって米中間の結びつきを切り離そうとしているが、それはアメリカの大学、金融機関、投資家に大きな不利益をもたらすものであり、アメリカの競争力を奪うことにもつながるのかもしれない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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