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米中合意の「追加関税拡大90日間猶予」は問題の先送りに過ぎない

2018.12.06 20:00

 11月末に、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された今回の主要20か国・地域(G20)首脳会議は

 11月末に、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された今回の主要20か国・地域(G20)首脳会議は、大いに注目されていた。今回のメインテーマは、貿易摩擦問題であり、特に12月1日の米中首脳会談で、何らかの合意があるのではないか、といった期待感が、マーケット(金融市場)にあったからだ。

 この米中首脳会談では、中国が貿易不均衡を是正する方向で、米国に譲歩する姿勢を見せた。それに対応して、米国は、2019年1月1日から発動を予定していた「2000億ドル相当の中国製品に対する関税の25%引き上げ」を、90日間先延ばしにすることを決めた。

 米中の合意の内容としては、2019年1月からの追加関税の拡大に90日間の猶予期間を設ける。ただし、中国は、米国の大豆などの農産物の輸入を増加させる。90日以内に中国の「強制的な技術移転、知的財産権侵害、サイバー攻撃」の改善に関して、米中間で合意がなされなければ、追加関税の拡大を実施する可能性がある。

 今回の米中の合意は単に問題を先延ばししただけに過ぎないのではないか。中国が90日以内に、米国が納得する程の大幅な譲歩ができるとは考えにくいからだ。

 もちろん、米国側も90日以内にすべてを改善せよと求めている訳ではなく、90日以内に米中間で新たな合意をすることを条件にしているのだが、米国が満足する程の合意に至るとは考えにくいだろう。

 言い換えれば、「90日以内に米中間で新たな合意をすること」は、今回の貿易戦争に関して、「米国の圧勝、中国の完全な敗北」を意味することになる。面子を重んじる中国の立場を斟酌すると、それは受け入れがたいのではないか。

 確かに90日間の猶予期間は設定されたのだが、果たして手放しで良かったと言えるのか、大いに疑問だ。むしろ、90日後に大問題が勃発することになる、あるいは、90日の期限が近づくに連れて不安が拡大していくことになるのではないか、と危惧している。

 現時点では、問題を先送りしただけで、何ら具体的な進展は見つかっていない。つまり、今回の米中間の合意は、猶予期間を設けただけで、そもそも合意と呼べるような内容ではない、ということだ。

◆米国の対中貿易赤字を解消する方法は2つあるが…

 普通に考えてみても、米国の巨額の対中貿易赤字が、解消に向かう合意策は、そう簡単には見つからない。仮に巨額の対中貿易赤字を解消せさる策があったとしても、中国の立場で見れば、到底、それを受け入れることはできないだろう。

 米国の巨額の対中貿易赤字を解消する方法は、「中国が米国から、巨額の輸入をする」あるいは、「中国が米国に輸出をしない」ということだ。

 中国が米国から巨額の輸入をするとしても、それに見合う物品(適合する品物)はなかなか無い。中国が米国から大豆などの農産物を大量に輸入しても、金額ベースで考えると、貿易問題を解消するには程遠いだろう。また、仮に米国から農産物を大量に輸入する場合には、中国国内の農業従事者を保護する政策も必要となる。

 金額ベースで考えると、中国が米国から自動車や機械を大量に輸入する方が理に適うわけだが、中国国内のそういった産業分野からは、当然、反発が起こるだろう。

 さりとて、中国が米国に輸出をしないことも、事実上、不可能と考えている。米国に代替して、中国で生産された物品を、大量に消費できる国も、おいそれとは見つからないからだ。

 だから、米中の貿易摩擦問題は、簡単には解決には向かわないのだ。

 個人的な意見だが、G20の理念は素晴らしいのだろうが、実質的にはG20は形骸化しており、決定力に欠けると考えている。米中に貿易摩擦問題があるのならば、さっさと米中首脳会談を行えば良いのに、2国間で対応せずに、今回のG20まで、先延ばししてきた。G20があったので、仕方なしに米中の首脳がテーブルに付いただけに映る。

 それでは、双方に、解決に向かう本気の姿勢が見えない。だから、ブエノスアイレスのG20は、個人的には全く期待できないと考えていた。案の定、今回の米中の合意は、単なる90日間の先延ばしに過ぎない。2国間の問題が、何かしらの解決に向かっている訳ではない、というのが現状なのだ。

(2018年12月06日東京時間13:30記述)

◆松田哲(まつだ・さとし):三菱信託銀行、フランス・パリバ銀行、クレディ・スイス銀行などを経て、オーストラリア・コモンウェルス銀行のチーフ・ディーラーとして活躍。現在は松田トラスト&インベストメント代表取締役として外国為替や投資全般のコンサルティング業務を行う。HPは「松田哲のFXディーラー物語」(http://matsudasatoshi.com/)。メールマガジン「松田哲の独断と偏見の為替相場」も発信中。

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