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“不動産女王”だった樹木希林さんの家族を幸せにする相続術

2019.02.08 07:00

《ローン返済が終わってからは義理で仕事をしていたの。目指すものもなければ、役作りの努力もしないタイプ

《ローン返済が終わってからは義理で仕事をしていたの。目指すものもなければ、役作りの努力もしないタイプ。ずうずうしい人間です》

 全身がん闘病の末、この世を去る1か月前の2018年8月、樹木希林さん(享年75)は、地方紙のインタビューにこう答えていた。1月28日に発売された『樹木希林 120の遺言』(宝島社)に収められた“遺言”の1つである。

 極力服を買わず、手土産も断るなど「物を持たない生活」にこだわった樹木さん。そんな彼女が、ローンを組んででも持つことにこだわったのが不動産だった。

「樹木さんは若い頃から不動産が趣味でした。女優を始めて間もない21才で初めて東京・大田区に戸建てを購入し、その後も売買を続けていましたね。“女優になっていちばんよかったのは、住宅ローンを早く返せたこと”と言い、目の病気で入院した際は、“お見舞いの品はいらないから、不動産屋のチラシを持ってきて”と頼むほどだったそうです」(芸能関係者)

 忙しい日々の合間を縫って、有名人が住むマンションや戸建てを見学していた樹木さんは、親しい人にもアドバイスを繰り返していた。

「樹木さんは口癖のように、“芸能人は生活の保証がないから、お金があるうちに不動産を買うべき”と言っていました。娘の也哉子さん(42才)、本木雅弘さん(53才)夫妻にも“年金のつもりで家賃収入をいただきなさい”と勧めて、本木さんは都内に高級マンションの一室を購入。後にこのマンションは、洗脳騒動があった元オセロの中島知子さん(47才)が住んだことで有名になりました」(前出・芸能関係者)

 樹木さんは仲がよかった浅田美代子(62才)にも、「60過ぎた独身女に部屋を貸すところなんてないのよ」とマンションや別荘の購入を勧めた。浅田は大きな仕事が入るたび、樹木さんから「まとめて返済したら」とローンの繰り上げ返済を助言されたという。

 そんな樹木さんは、亡くなる前、本誌・女性セブンの取材で把握しただけで8軒もの不動産を所有していた。都内の高級住宅地にある地下1階、地上3階建ての戸建てA。1978年に新築し、也哉子と一緒に住んでいたが、現在は飲食店に貸し出している。

 都内の一等地で約400平米の土地に建つ戸建てDは、2001年に新築したバリアフリー対応の2世帯住宅。樹木さんはここで最期を迎えており、2012年にイギリスに移住した也哉子一家も東京に戻った際はここを拠点にしている。

 そこから車で10分ほどの距離にあるマンションEは、樹木さんの個人事務所である「希林館」が所有し、樹木さんの夫・内田裕也(79才)が住む。

 そのほかに都内に戸建て3軒、マンション2室を所有。樹木さんの場合、前述した2つの戸建ては土地だけで評価額は4億円近くにのぼり、8つの不動産の土地、建物を合算したら総額は優に10億円を超えると予想される。その空き家のいくつかは第三者に貸し出しもしていた。

「このほかにも年に2~3本の映画やドラマ、CMなどの出演料もあり、預金も相当な額があったはず。がんの治療代がかかったとはいえ、決して贅沢はせず質素な生活を送っていましたからね。でもこれだけ巨額の遺産がありながら、樹木さん亡き後、遺族の相続はもめることなく驚くほどすんなり決まったそうなんです」(前出・芸能関係者)

◆「内田裕也」名義は1つもない

 樹木さんが亡くなったのは昨年9月15日。その半年ほど前に余命宣告を受けていた。

「樹木さんは“今年一年もつかもたないか”と本木さんに告げ、好きなお寺でお葬式ができるよう準備を始めました。並行して、遺産相続の準備も進めたようです」(内田家の知人)

 相続コーディネーターの曽根恵子さんは、樹木さんが遺言書を作っていた可能性を指摘する。

「通常の相続では、亡くなった後10か月の申告期間中に不動産などの財産評価を行って相続税を算出し、遺産分割協議を行います。樹木さんの場合は早いうちに遺産相続が終わっていたようで、生前に相続先を指定する遺言書を書いていたと思われます」

 樹木さんの遺産の法定相続人は配偶者の内田と、娘の也哉子、婿養子として養子縁組を結んだとされる本木だ。しかし、本誌が把握する限り、内田は相続のすべてを放棄することに同意したとみられる。

 樹木さんの死後、都内にある3つの戸建ては相続により名義が樹木さんから也哉子に変更された。樹木さんが2分の1、本木が2分の1を所有していた戸建てDの土地も、樹木さんから也哉子に名義変更されている。マンションも、本木や孫の伽羅(19才)の所有となり、「内田裕也」名義のものは、1つもない(下図参照)。

「配偶者が相続する場合、1億6000万円まで非課税という配偶者控除があり、大幅に節税できます。それでも今回、内田さんが不動産の相続を放棄したとみられるのは、樹木さんの遺志を尊重し、『2次相続』の対策を考えたのかもしれません」(前出・曽根さん)

 2次相続とは、最初の相続で残された配偶者が亡くなった際、子供に降りかかる2回目の相続のこと。

「親が高齢なほど、2次相続を迫られる時期が早まる可能性があります。こうした場合、1次相続の段階で残された配偶者が財産を増やさないようにする方が家族全体の負担は少ない。樹木さんも、将来也哉子さん一家が2次相続で多額の税で苦しむことがないように、内田さんを含めてご家族で話し合い、マンションに住み続けられるようにして、内田さんが樹木さんの遺言書の内容を受け入れられるようにしたのではないでしょうか」(前出・曽根さん)

 確かに2次相続のことを考えて放棄すればその分節税にはなるが、生前の樹木さんは夫に使うお金を惜しまない人だった。家、衣装代、保険料などほとんどを樹木さんが負担していた。そんな彼女が内田に不動産を渡さなかったのはこんな理由もあるという。

「樹木さんは生前、“私が死んでも、夫には遺産を残さないわよ”と言っていました。理由は“あの人、お金があったら一晩で全部使っちゃうから”と。いかにも樹木さんらしい愛情の表れです。とはいえ、自分がいなくなった後の内田さんのことを心配していましたから、相続税がかからない配偶者控除額の範囲で、預貯金を遺産として渡したんじゃないでしょうか」(前出・内田家の知人)

※女性セブン2019年2月21日号

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