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2019.10.30 07:00  マネーポストWEB

習近平主席の肝いり、中国「ブロックチェーン大国」への道

中国が世界トップの「ブロックチェーン大国」を目指そうとしている(イメージ。Getty Images)

 10月28日の上海総合指数は0.85%上昇した。特別高い上昇率ではないが、少し変わった相場つきの1日であった。通信、半導体・部品、ソフトウエア、新材料といったハイテク関連が強かったのだが、そうしたハイテク関連の中でもブロックチェーン関連の上昇が際立っていた。

 インターネット金融データサービス会社の同花順ネットワーク情報公司は、ブロックチェーン関連銘柄として173銘柄をピックアップしているが、この内、118銘柄がストップ高を記録した。

 中国共産党中央政治局は24日午後、ブロックチェーン技術発展の現状とその趨勢をテーマとした勉強会を開催した。この内容は直ぐには発表されず、25日の大引け後に市場関係者の知るところとなり、週明けの28日寄り付きから関連銘柄に資金が流入した。

 この勉強会で習近平国家主席は、「ブロックチェーン技術はデジタル金融、モノのインターネット、スマートマニュファクチュアリング、サプライチェーン管理、デジタル資産取引など多くの領域で応用される。基礎研究を強化し、イノベーション力を引き上げ、我が国のブロックチェーン技術が理論において最前線に位置し、イノベーションにおいて最も高いレベルとなり、産業における新たな優勢を獲得できるよう努力しなければならない。国際的な発言権、国際的な制度の決定権を持てるようにしなければならない」などと発言した。

 要するに習近平国家主席は、“ブロックチェーン技術は、国家を上げて世界のトップを取らなければならない分野である”と力説しているのだ。

 ブロックチェーン技術を一言で説明するとすれば、それは“情報を決して改ざんされない形で分散して記録することのできる技術”である。

 ブロックチェーンと聞くと、ビットコインなどデジタル通貨を連想するかもしれない。もちろん、デジタル通貨には欠かせない技術であることには間違いないが、その応用範囲は非常に広い。

 音声認識にしても、顔認識にしても、極めて高い信頼性を与えることができる。デジタル情報の著作権保護、売買取引情報の記録はもちろんだが、企業、研究機関から、危険物取扱所、原子力発電所、軍事施設に至るまで、あらゆるシーンのセキュリティーについて、高い信頼性を与えることができる。そのほか、医療サービスや、食品、高額ブランド品の製造販売、戸籍管理など、その応用分野は幅広い。ブロックチェーン技術の価値は計り知れない。

 民間でも、ブロックチェーン技術が重要なことぐらい、誰でも知っている。しかし、問題は、民間に任せた場合、十分な資金がその開発に注がれるかどうかという点である。

 市場の失敗という言葉がある。様々な例があるが、たとえば、「ベンチャービジネスに対して十分な開発資金が供給されない」という点もその一つに挙げられよう。将来上手く行くかどうかわからない新しい分野の研究開発はリスクが高い。銀行はもちろんだが、ベンチャーキャピタルでさえも、十分な資金を供給するのは難しい。

 そういうときこそ、国家がリスクを度外視して、国家政策としてベンチャービジネスを育成すべきではなかろうか。

 アメリカのイノベーション力は世界でずば抜けているが、それは、世界に対してオープンでリベラルな発想、能力のある者がすべてを得るような競争システムが背景にある。しかし、それは社会の構成員の間で格差を助長し、少数の勝者と多数の敗者を生み出し、それらの間に大きな亀裂を生み出してしまう。そうした悪影響が大きく蓄積されたからこそトランプ政権が生まれたのである。従来のアメリカ型資本主義が今、再構築されようとしている。

 政治が、シリコンバレーを敵視し、リベラルな思想を持つインテリジェンスの高い市民層を敵視するならアメリカのイノベーション力は大きく棄損する。

 米中貿易戦争の背景には、資本主義のほころびと国家資本主義の成功がある。果たして、アメリカは、政治的な力で中国の成長を封じ込めることができるのであろうか。中国では国家が全力を挙げてイノベーションを加速させるというが、アメリカや世界は、これに対抗する手段があるのだろうか。

 中国に関しては、景気減速に関する報道が目立つが、本当に注目すべきは、中国が景気刺激策には力を入れず、愚直にイノベーションを加速させようとしている点ではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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