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2019.11.20 07:00  マネーポストWEB

アリババが巨額の資金調達、欧米金融機関が支援する背景

アリババ集団はNY市場に続いて香港市場にも上場へ(2014年のNY市場上場時の様子。Getty Images)

 アリババ集団(9988、BABA)は11月13日、香港市場に上場すると発表した。上場予定は11月26日。発行価格は188香港ドルを上限として、ブックビルディングを通じて20日に決定される。香港市場での公募株数は1250万株だが、グローバルオファリングとして主に海外機関投資家向けに4億8750万株が割り当てられる。そのほか、マーケットの状況をみたうえで最大7500万株の普通株を追加発行できる(オーバーアロットメント)権利を有している。最も大きく見積もれば1081億香港ドル(1兆5134億円、1香港ドル=14円で計算)の調達規模となる。

 今回の引き受けで主幹事を務めるのは中国国際金融とクレディ・スイスである。そのほか、シティグループ、モルガン・スタンレーなどが引受幹事団に加わるようである。

 アリババ集団は、ニューヨーク証券取引所に上場しており、11月15日のアメリカ株時価総額ランキングでは、アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムに続き第4位である。ちなみに、第5位はフェイスブックである。アルファベット(グーグルの持株会社)については、議決件“あり”の株式と“なし”の株式の2種類を上場させており、両方合計すれば、アリババ集団の一つ上の順位となる。

 時価総額ベースでみればアリババ集団は、GAFA、マイクロソフトなどとトップグループを形成するほど国際市場を代表する大企業だが、今回、香港市場を通じて、さらに巨額の資金を調達しようとしている。

 注目すべき点は、“誰がアリババ集団をこれほど巨大な企業に育てたのか、巨額の資金調達の手助けをしようとしているのか”といった点である。

 筆頭主幹事を務めるのは、発行済み株式総数の過半を国家が所有する中国国際金融である。香港、ニューヨーク、シンガポール、ロンドンなど海外にも拠点を置く、中国本土を代表する投資銀行である。しかし、クレディ・スイスを中心に複数の欧米系投資銀行が引受シンジケートを形成しており、彼らがグローバル投資家に株式を販売するのを助けている。

 アメリカのメディアは9月27日、「トランプ政権は“アメリカ市場に上場する中国企業を上場廃止とし、政府系基金が中国市場の金融商品に投資するのを制限する”ことを検討している」と報じた。その後、アメリカ財務省や、ナバロ大統領補佐官が否定はしているが、アメリカ国内の一部には米中の経済協力を引きはがそうとする勢力がある。こうした状況で、中国企業はアメリカでの資金調達に不安を抱え、その不安に乗じて香港証券取引所が積極的に誘致を進め、それを欧米金融機関が支援するといった構図となっている。

 ペンス副大統領は10月24日、香港での民主化デモ参加者に対する中国の行動を批判するなど、経済以外でも中国に対抗する姿勢を示す演説を行っている。

 一方、アリババ集団が予定通り資金を調達できれば、香港市場で史上2番目の規模の調達額となる。香港は金融、観光、不動産が主要産業であるが、長引く民主化デモによる混乱で経済は大きなダメージを受けつつある。大型上場が成功すれば、グローバルな資金を香港市場に呼び込み、香港金融の発展を支えることになるわけだが、それはペンス副大統領の考える対中政策とは大きな隔たりがある。

 アメリカの産業界の中には、中国の成長を自らの収益拡大のチャンスと捉える企業があるという点にもう少し注目すべきだろう。

 アメリカでは、中国の通信機、AI関連などのハイテク企業に対して禁輸措置を採る動きが活発となっている。しかし、アリババ集団については、そうした対象から外れている。その最大の要因は、アメリカはGAFAの勢力圏内であり、アメリカ国内経済にとってアリババ集団は脅威となっていないからではないか。

 それでは、日本はどうだろうか。中国からの観光客によるインバウンド消費が日本経済を下支えする経済構造となりつつあり、その中国人観光客の利便性を高めるために、末端の小売店ではアリババ集団の決済システムである支付宝、テンセントの微信支付が普及し始めた。また、中国での日本製品の人気は根強い。アリババ集団の越境ECが今後、存在感を強めるかもしれない。ソフトバンクがアリババ集団の筆頭株主であることから、無理な参入はないだろうが、少しずつアリババやテンセントのサービスが日本に浸透する可能性は否定できないだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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