• TOP
  • コラム
  • 大阪vs兵庫の「来るな」バトル 両府県の間にある深い溝とは

コラム

2020.04.02 07:00  マネーポストWEB

大阪vs兵庫の「来るな」バトル 両府県の間にある深い溝とは

吉村洋文・大阪府知事(左)と井戸敏三・兵庫県知事(写真:共同通信社)

 3連休直前の3月19日、大阪府の吉村洋文・知事が「大阪・兵庫間の不要不急の往来を控えてほしい」と自粛を訴えたことが、新型コロナ対策とは別の意味で波紋を広げている。

 これを受けて、井戸敏三・兵庫県知事も記者会見で大阪など他の地域との往来自粛を求める方針を打ち出して、こう付け加えた。

「大阪府からは事前の調整はなく、向こうが勝手に発表した。大阪はいつも大げさ。過激な発言をして、責任は取らない」

 大阪側が兵庫を名指ししたことで、「大阪も言ってるので、あえて“大阪”を入れた」とも明かした。

 感情的な応酬にまるで“国境封鎖”のように見えるが、実際には3連休中も、大阪と神戸の間はJR、阪急、阪神の3本の鉄道が並行して走り、阪神高速や名神高速でもつながっていた。

 大阪府(人口約880万人)と兵庫県(同約550万人)の往来は活発で、2015年の国勢調査によると、大阪府から他県への通勤・通学者(流入人口)では兵庫県が約11万人で最も多く、兵庫県から大阪府に来る流入人口も33万人で最も多い。

 往来は活発なのだが、両知事がバトルを繰り広げたことで、大阪と兵庫の間にある深い溝が浮き彫りになった。両府県の対立関係について、元読売新聞大阪本社の社会部記者で、ジャーナリストの大谷昭宏氏はこう語る。

「関東は東京一強ですが、関西では大阪、神戸がそれぞれ自分のところが一番だと思っている。大阪は天下の台所で関西経済を支えているという自負があり、神戸は港町で早くから異文化を取り入れて開かれた街で、それぞれプライドが高く、バチバチやっている。だから、神戸は『大阪が来るなとは何事や』となり、大阪は『お前らに来てほしないわ』と言い返すことになる。鼻っ柱が強いんです」

◆大阪都構想で確執

 そんな大阪と神戸の間の確執を浮き彫りにしたのが、「大阪都構想」だったという。2010年に当時の橋下徹・府知事を代表とする「大阪維新の会」が発表した行政構想で、次第に大阪だけでなく阪神間や神戸までひとつにまとめようとしたことで、猛反発を食らった経緯がある。

「2013年に『日本維新の会』の政調会長が、尼崎や西宮、さらには神戸まで特別区にすれば東京に負けない自治体になると話し、兵庫県知事選と神戸市長選に維新から独自候補を出す動きが出た。これに反発したのが兵庫県民や神戸市民。『大阪と一緒にすんな』『上からモノをいうな』『お前らだけで勝手にやれ』と一斉に反発した。

 橋下氏は、関西国際空港への補給金が事業仕分けの対象になったときに大阪国際空港、いわゆる伊丹空港を廃港にすると掲げましたが、やはり兵庫県民が『兵庫県にある空港を勝手に大阪空港と名乗って、勝手に廃港にするな』『他府県が口を出すな』と猛反発していた」(地元記者)

 時代を遡ると、両府県の軋轢が露わになった事件もあった。1984年の「グリコ・森永事件」である。事件が発生したのは、兵庫県西宮市の江崎グリコの社長宅だったが、犯人が江崎社長を監禁したのは大阪府摂津市の防災倉庫だったので、兵庫県警と大阪府警の合同捜査本部が設置された。

「縄張り争いで双方の情報交換がうまくいかなかったために捜査が難航したとされ、事件は未解決のまま時効となった。大阪府警と兵庫県警の仲が悪いことが利用された事件だと当時から見られていました」(地元紙社会部記者)

※週刊ポスト2020年4月10日号

関連記事

トピックス