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コラム

2020.04.02 07:00  マネーポストWEB

年金制度改正に対応すべく「人生設計を見直す3つのタイミング」

老後の人生プランを見直す3つのタイミング

 老後資金2000万円不足問題が取り沙汰されて以降、「年金だけで暮らせないのでは」と不安を募らせる人は多い。『週刊ポストGOLD あなたの年金』より、“年金博士”として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏が、制度改正のポイントと「人生プランを見直すタイミング」について解説する。

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 年金制度は5年に1度、大きな改正が行なわれます。そして改正のたびに年金額が減らされるか、保険料が値上げされてきました。

 しかし、今回の年金改正はこれまでとは性格が全く違うものです。「年金の役割」「制度のあり方」を根底から見直し、人生100年時代に向けて新たな制度をつくりなおす大改革の波が押し寄せていると言えるでしょう。率直に言えば、もはや年金では「老後の生活保障」の役割を果たせなくなってきたわけです。

 今年の年金改正は改革の第1弾ですが、国が目指す「新しい年金制度」の全体像が見えてきました。ひとことで言えば「年金をもらいながら働く」という高齢者のこれからのライフスタイルに合わせた新制度の構築です。

 一時代前のサラリーマンの理想の老後は、「悠々自適の年金生活」でした。厚生年金と退職金で、老後は働かなくても生活が可能な時代だったのです。

 いまや状況は一変しました。少子高齢化で年金財政は破綻寸前、年金は年々減らされ、国民は「年金はあてにできない」と老後に不安を募らせています。年金と並ぶ老後資金の柱である退職金も、この20年で1人平均1000万円以上減っています。

 そこに追い打ちをかけたのが、「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」という金融庁の報告書でした。具体的な金額を示されたことで「そんなに足りないのか」と年金に対する漠然とした不安が現実であると思い知らされたのです。

◆もらいながら働く人が有利

 それなのに、年金に不安を抱きながらも、いまなお、「65歳まで働き、年金生活に入る」を基本に定年後の人生設計を考えている人がほとんどです。そこに年金制度の大きな問題が潜んでいます。

 年金だけでは足りないなら、誰もがまず「長く働こう」と考えるはずです。幸い、日本人の健康寿命は延びており、60代はまだ現役、70代でも健康で働きたいと希望している人は多い。ところが、その世代が生活を少しでも豊かにしようと会社員として働き続けると「給料があるから年金はいらないだろう」と受給額を減らされる。それが「在職老齢年金」制度です。

“働けば働くほど年金を損する”制度では、多くのサラリーマンは、65歳の雇用延長期間が終わると「完全リタイアしたうえで年金生活に入る」という道を選ぶことになる。第2の人生の選択を狭め、「長く働く」道を塞いでしまうような制度になっているのです。

 今回の年金改正ではその仕組みが転換され、「年金をもらいながら働く人」が有利になるような様々な新制度がつくられます。年金以外にも、「70歳までの雇用延長」が制度化され、「相続制度」も変わります。〈65歳で年金受給し、70歳まで働く〉といった人生プランがスタンダードになっていくでしょう。

 こうした大改革の波は、年金世代だけではなく、現役世代にも及びます。サラリーマンはこの大改革によって、現役時代の「老後資金の作り方」から、「定年後の働き方」、「年金のもらい方」まで人生プランの練り直しを迫られるのです。

◆人生プランを見直すタイミング

「第2の人生」のプランを見直す場合、何歳から始めればいいのでしょうか。そこには3つのタイミングがあります。建築工事にたとえると50代は定年後の大まかな基本設計、60代前半は年金受給を盛り込んだ実施設計、60代後半は人生設計の修正の時期。それぞれ準備する内容やチェックするポイントが違います。

 まず【50代の基本設計の時期】です。65歳までの雇用延長が義務化された現在でも、日本企業の7割以上が「60歳定年制」を採用しています。そのため、多くのサラリーマンは60歳になるとき、そのまま勤めている会社で「雇用延長」か、キャリアを生かして転職か、それとも脱サラで起業の道を選ぶかという「定年後の働き方」の大きな選択を迫られます。

 50代の働き盛りの時期は、「60歳の選択」のための準備をしなければなりません。定年後、条件のいい会社への転職のためにスキルアップを図ったり、独立するなら人脈や取引先の開拓も考えたりする必要があるでしょう。

 年金の面でも重要な時期です。将来に備えてイデコ(iDeCo・個人型確定拠出年金)など私的年金を積み立てるなら、収入が多い50代が最も節税効果が大きくなります。さらに厚生年金の「60歳繰り上げ」を選ぶかどうか50代のうちに判断する必要があります。50代になると両親は80代を超え、介護や老人ホームへの入居、実家の処分や相続にも備える必要があります。

 次に【60代前半】は65歳からの受給に備えて老後プランを立てる時期です。

 2021年4月からは雇用延長期間が現在の65歳から70歳に引き上げられる予定なので、65歳以降も「年金をもらいながら働く」か、それとも働いている期間は年金受給を我慢して繰り下げを選び、受給時に割増し年金をもらうかという「働き方」と「年金のもらい方」を決めなければなりません。

「得する年金」がもらえる世代(男性は1961年4月1日以前に生まれた人)は、65歳になる前に特別支給を受け取ることができます。

 そして【60代後半】は人生設計の修正の時期となります。65歳以降も働く人は、何歳まで働くかを判断する時期です。「年金をもらいながら働いている」人なら、リタイア後は年金収入に頼ることになるため、生活のダウンサイジングを始めることが重要になります。

 また、70歳が近づけば、自分たち夫婦の介護や老人ホーム入居、相続を視野に入れた資金計画の見直しも考え始める時期でしょう。別掲の「3つのタイミング」の表を見ながら、自身のライフプランを確認してみてください。

※週刊ポスト2020年5月1日号増刊『週刊ポストGOLD あなたの年金』より

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