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2020.06.08 16:00  マネーポストWEB

坂東眞理子氏 コロナ社会を生き抜くには「正しさ押しつけぬたしなみを」

新しい時代を生きるうえで坂東眞理子さんが心掛けることは?(撮影/小倉雄一郎)

 人生の折り返し地点を過ぎ、やっとひと息つけると思ったのに、コロナ禍で自粛を強いられている中高年世代も多くいる。そうした世の中に対し、『女性の品格』『70歳のたしなみ』など、女性の生き方や働き方に関するさまざまな著書がある坂東眞理子昭和大学理事長・総長(73才)が、アドバイスをする。

 * * *
 私は常々、何才になっても、キョウイク――「教育」を受けることと、「今日行く」ところがあることが大事だと口にしてきましたが、いまは、外出すらままなりません。

 勤務先の昭和女子大学も授業はオンラインになり、私も出勤日時を減らしながら、運動不足解消と公共交通機関での“密”を避けるため、40分ほどの道のりを歩いて通うようになりました。大学までの道のりの途中、いくつか坂があります。人生にも上り坂や下り坂がありますが、まさか新型コロナウイルスという、それ以外の急坂があるとは思ってもみませんでした。

 けれども振り返れば、人生は「まさか」の連続です。学生たちには、「想定外のときに、どう行動するか、という非常に得がたい経験を、いましているんだよ」と話しています。

 とはいえ、これから先が長い学生ならまだしも、自分の人生はこのまま穏やかに終わっていくのだと思っていたであろう60代よりも上の人たちは、「なんて運が悪いのだろう」とがっかりしているのではないでしょうか。

 しかしだからこそ「自分は乗り切れる」と一生懸命、自分で自分を励ますおまじないをかけて、この障壁を乗り越えていかなければなりません。たとえコロナがあったとしても、その一日は私たちの人生の中で大事な一日です。かけがえのない時間を、これからの人生でいちばん若いこの日を、コロナだから仕方がない、と言って過ごすのはもったいないと思います。ですから私はいま、できるだけ手紙を書くようにしています。

 これまでは、例えば贈りものをいただいたときなども、「今度会うからそのときにお礼を言おう」とか、「お互いに忙しいから、電話やメールで伝えた方がいいだろう」とか、何かと理由をつけてペンを取ることはしませんでした。

 だけどいま、時間はたっぷりあります。朝起きて、「今日は○○さんに手紙を書くんだ」と思うだけで、一日に張りが出る。特別な用事がなくても手紙は書けます。今日は家庭農園に小松菜の種をまいた、でもいいし、相手の健康や近況を尋ねるだけでもいい。こういうときって、人に気に掛けてもらうのは本当にうれしく、ありがたいことなんです。

 未曽有の事態が起きたとき、手紙に思いをしたためたのは、昔の人も同じです。

《災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。是はこれ災難をのがるる妙法にて候》

 これは江戸時代後期に歌人としても活躍した僧侶である良寛が越後地方を襲った地震の後に、知人に送った手紙の一節です。死ぬる時節には死ぬがよく候──私はまだ、そこまでの悟りの境地にはとても至りませんが、コロナでも地震でも、あるがままを受け入れることの大切さは日々、痛感しています。特にわれわれの世代は、罹患すれば重症化しやすい。しかしだからといって、大事な友人や家族と会うかけがえのない楽しさを、“自粛”することが本当に正しいのか。

 こうしたことを含め、今回のコロナ騒動では、同じ日本人でも意見が様々に分かれました。みながみな、自分の信じる正義を振りかざしています。私たちにできることは、「そういう考えもある」と、あるがままに受け止めること。

 自分が思う正しさは、他の人にとって正しいかどうかわからない。「違う」ことをわきまえ、正しさを押しつけない。それこそが、新しい時代を生きぬくためのたしなみではないでしょうか。

【プロフィール】ばんどう・まりこ/富山生まれ。東京大学卒業後、1969年総理府に入省。在豪州ブリスベン総領事、内閣府初代男女共同参画局長などを務める。女性の生き方や働き方に関する著書が多く、『女性の品格』『70歳のたしなみ』などベストセラー多数。

※女性セブン2020年6月18日号

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