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2020.09.16 07:00  マネーポストWEB

中国の「一帯一路」戦略は着実に加速している

中国の航空会社の業績から見える国家戦略の進捗とは(東方航空。dpa/時事通信フォト)

 コロナ禍の中でも中国本土の航空会社の株価が底堅い。三大航空会社である国際航空(A株:601111)、南方航空(A株:600029)、東方航空(A株:600115)の中では、特に東方航空の値動きが良い。市場では、新型コロナ騒動が落ち着くといち早く乗り放題チケットを売り出すなど、積極的な顧客獲得戦略が評価されたようだ。

 東方航空の年初来安値(修正株価、場中ベース、以下同様)は3月23日に記録した3.96元。その後、緩やかにリバウンドしており、戻り高値は9月9日の5.38元で、この間、35.9%上昇している。年初来高値は1月3日に記録した5.85元なので、まだ少し足りないものの、2019年の安値4.92元(2019年8月13日)については、すでに上回っている。9月14日の終値は戻り高値よりは少し安く5.15元で引けているが、チャートは崩れておらず、押し目の範囲内での下げである。

 ただ、足もとの業績を見ると、回復はまだ覚束ない。中国は1月下旬からから4月にかけて、新型コロナウイルス対策として全国レベルで厳しい移動制限を行ったが、その影響から、業績は大きく落ち込んでいる。

 2020年6月中間期の業績は57.3%減収、85億4200万元の赤字(前年同期は19億4300万元の黒字)となった。4-6月期は66.3%減収、46億900万元の赤字で、直近の状況は厳しい。

 しかし、厳しい決算の中、注目すべき変化があった。旅客輸送容量の単位となる有効座席キロ(ASK。総座席数×輸送距離)をみると、中間期で国際旅客は▲68.2%減と厳しいが、国内旅客は▲43.9%減に留まっている。また、旅客と比べると貨物の落ち込みは小さく、貨物輸送容量の単位となる利用可能貨物郵便トンキロ(AFTK。総輸送容量×輸送距離)は▲34.1%減、主力の国際貨物に限れば▲24.0%減に留まっている。

 前者の旅客輸送について、2019年12月期の決算をみると国内売上高が64.9%を占めており、国際業務よりも国内業務の方が収益ウエイトが高い。中国国内では既に新型コロナの流行封じ込めに成功しており、人の移動制限が緩和されつつある。秋の旅行シーズンにはこれまでの反動もあり、国内旅行需要の回復が大きく進むとみられる。そうした見通しからアナリストたちの予想は楽観的となっており、2020年12月期業績の市場コンセンサスは35.9%減収、61億3100万元の赤字、下期では15.7%減収ながら、92.6%増益を見込んでいる(中国株データベース・同花順より。9月14日現在)。

◆中国と“一帯一路”国家・地区の定期貨物便は大幅増

 後者の貨物輸送について、貨物サービスの売上比率(2019年12月期)は3.2%でしかない。客運サービスが91.3%を占めるといった収益構造なので、貨物サービスがいくら増えても収益に与える影響は小さい。しかし、国際間の荷動きの変化は、国家間の貿易上のつながりの変化を表している。

 その鍵を握るのが、中国政府が推進する「一帯一路」戦略だ。中国中西部と中央アジア・欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、中国沿岸部と東南アジア・インド・アラビア半島・アフリカ東を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の2つの地域でインフラを整備し、経済・貿易関係を強化するといった大構想である。

 第2回「空中シルクロード」国際協力サミットが9月8日、北京で開催された。中国民用航空局の崔暁峰副局長の説明によれば、中国は現在、96の“一帯一路”国家・地区と政府間航空運輸協定を結んでおり、中国で新型コロナが蔓延していた時点においても、45の国家・地区と客貨物輸送定期便を保持していた。こうした定期便を通じて“一帯一路”国家・地区に支援物資を提供し、支援物資は累計で1700トンを超えている。

 現在、中国と“一帯一路”国家・地区における1週間当たりの定期貨物便は1068便で、新型コロナ発生前と比べて2.6倍に達している。「この定期貨物便は、“一帯一路”国家・地区と手を携えて新型コロナに打ち勝つための“生命の通路”であり“命運の絆”となっている」などと発言している。

 米中関係が緊迫化する中で、中国の一帯一路戦略は着実に加速しているようだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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