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コラム

2020.09.26 16:00  マネーポストWEB

テレビの「混んでます!」報道が社会の分断を加速させている

4連休中の観光地では大勢の人出で賑わった(東京・浅草。AFP=時事)

 9月19~22日の4連休、多くの人々が各地の観光地を訪れ、大混雑となった。テレビ番組はしきりと「混んでます!」報道を繰り返したが、この報道のあり方にネットニュース編集者の中川淳一郎氏は違和感を覚えるという。その真意について中川氏が解説する。

 * * *
 この4連休、高速道路で47kmの渋滞が発生したり、スーパー銭湯は2時間待ちだったり、キャンプ場には1000張のテントが張られてトイレは1時間待ちの行列、といった「混んでます!」報道をよく見かけました。

 普段の私は「こんな混んでいる時に遊びに行くなんて、何を考えているんだろう?」と鼻で笑うところですが、今回ばかりはまったくそう思いませんでした。テレビに取材される観光客が気の毒になってしまったのです。

 番組制作サイドの意識としては「コロナ禍なのになぜ遊びに来ているのか?」ということを聞きたいわけです。そして「気の弛んだ国民がこんなに羽目を外して遊びまわってます! 緊張感が足りない!」といった感覚を視聴者に抱かせたいという意図もあるのでは。

 何しろ、取材される人は、決まって同じようなことを口にします。それは、慎重に行動していること、他人に迷惑をかけなにようにしていること、そして若干の言い訳めいたことです。恐らく質問は「なぜ、今回はここに来たのですか?」と「感染対策は大丈夫ですか?」の2つでしょう。以下のようなコメントが定番です。

「マスクは予備も含めてたくさん持ってきていますし、除菌スプレーも用意しています」
「ゴールデンウィークも夏休みも子供たちを連れて来られなかったので……」
「アウトドアだったら『密』にならないと思いまして……」

 以前見た報道ではこんなのもありました。インドネシア人の妻の母親を登山に連れてきた男性の発言です。

「義母を山に連れてきたかったのですが春は連れて来られず、緊急事態宣言も解除されたので……」

 こうした報道を見た「自粛者」は「こういった危機感のないバカが感染を拡大させるんだ! ワシは我慢して家に閉じこもっているというのにけしからん!」なんて怒りを沸々とたぎらせることでしょう。かくしてコロナを巡り社会がますます分断されてしまうのです。

◆観光地に行っても「楽しい」アピールはNG?

 かような「自粛警察」の皆様方の存在があるがために、「謎ルール」も誕生しています。マナー講師の井垣利英氏は、9月22日に放送された『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ系)「withコロナ観光地 混雑時の新マナー」という特集の際に「SNSの新マナー」を紹介していました。同氏によると「旅行時の投稿は『楽しい』アピールではなく施設の感染対策などを伝える」だそうです。

 つまり、観光地に行った場合は「いぇーい、温泉最高!」などと書いて楽しげな写真を載せるのではなく、「○○温泉の××ホテル、入口の消毒液は充実しているし、部屋にも消毒液完備。お風呂はフロアごとに入れる時間が決まっている“密”を避ける充実の感染対策です」などと書け、ということですね。

 まぁ、自粛をしている人への配慮をしましょう、ということなのですが、「遊ぶ」という行為は人間に与えられた尊い権利ではないのでしょうか。2月からもう7か月も自粛を強いられたんですから、もう我慢できなくなった人を責めるのはやめましょうよ。

 正直、遊びたい盛りの子供達や若者がずっと自宅に籠っていられるわけもありません。いちいち監視をし合い、遊んでいる人が糾弾されるような社会は健全ではないでしょう。

 こうした今の社会の有り様を、恐ろしいことと考えるか、「安全のためには仕方がない」と捉えるか――。これは人々の思考を判断するにあたって、分かりやすいメルクマールとなるのではないでしょうか。この面で考えが合致する人同士は気が合うと思います。

◆中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう): 1973年生まれ。ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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