• TOP
  • コラム
  • コロナ禍で「終の住処」問題に変化 施設入居や地方移住の想定外トラブル

コラム

2021.06.16 16:00  マネーポストWEB

コロナ禍で「終の住処」問題に変化 施設入居や地方移住の想定外トラブル

コロナが「終の住処」選びにどう影響?(イメージ)

 近年、メディアなどで度々話題になる「終活」。豊かな老後を過ごすため、万全の備えで終活に臨む人も増えているが、一つの判断がかえって思いがけないトラブルを招くこともある。特に、高齢になるほど現実的になる「終の住処」問題には注意が必要。自宅を手放し、介護施設入居を考えているならなおさらだ。介護評論家の高室成幸さんは「どの施設を選ぶかで老後の明暗が分かれる」と語る。

【表】5位は宮城県、4位は福岡県…、ベスト3は? 2020年移住希望地ランキングTOP5

「入居金が安くて人気なのが、外部の介護や医療を利用する『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』や一部の住居型有料老人ホームです。これらは届け出だけで済むので、異業種からの参入例が多くみられます。

 そのため施設管理が緩くなりがちで、せっかく入居したのに『スタッフのサービスが雑』『隣の住人がうるさい』『部屋が狭くて窮屈』などの理由で住み替えを希望するケースが案外あります。しかし、資金的に余裕がなかったり、実家を手放していて帰る場所がないために、ストレスがたまるのをがまんし続けるという悩みは珍しくありません」

 終の住処にしようと入居したのに「経営上の理由」からトラブルに巻きこまれることもある。

「サ高住や有料老人ホームは運営の自由度が高い代わりに倒産のリスクがあります。2019年度のサ高住の倒産や廃業は53施設あり、過去最高でした。施設が倒産すると入居者に住み替えの必要が生じて、古い物件に移ったり、子供の家から遠くなったりするケースが実際に起きています。老人用の施設全体で見ても、経営者や経営母体、理事長などが交代すると、掃除や洗濯などの生活支援サービスの内容や単価も変わり、食事や介護の質が低下することも起こっています」(高室さん・以下同)

 さらに、コロナ禍によって介護施設での生活は不自由を強いられることとなった。

「新型コロナで“多くの人が集まる箱物は危ない”という意識が浸透しました。実際にフリースペースが閉鎖されて自分の部屋から一歩も出られない施設も出ています。この先、『年老いたら自宅を処分して、施設に入る』という老後のスタンダードは廃れていくかもしれません」

◆地方移住したら「話が違うじゃないか!」

 子供が独立して親が高齢になったら、田舎の自宅を処分して都会のマンションに引っ越す「ダウンサイジング」も人気だが、健康面と認知症に不安がある。

「団塊の世代以上は広々とした家で悠々と暮らしてきた人が多く、その生活が染みついています。それなのに都会の狭いマンションに引っ越したら運動や近所づきあいが減って老化や認知症のリスクが増加し、結果的に子供世代に介護の負担がのしかかります。

 そのリスクを避けるために、今後は安易に自宅を手放すのではなく、自宅を療養生活対応型にリフォームして住み続けることが選択肢の筆頭に変わっていきそうです。コロナ禍における訪問医療、ウーバーイーツやアマゾンなどの宅配サービスの普及も、『年老いてからも自宅に住み続ける』という流れを今後さらに後押しするでしょう」

 一時は老後を田舎で過ごす「地方移住」が注目されたが、その様相はコロナ禍で一変した。街づくりのスペシャリストで、エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんが指摘する。

「軽井沢や鎌倉など、都会から近く、もともと移住者が多かった地域はコロナ禍でますます人が集まる一方、人口が10万人を切るような小さな地域は、外部から人が来ることに神経質になりました。閉鎖的だった地域がさらに閉鎖的になっており、いまは地域住民の家族が東京や大阪から帰省してくることすら拒絶する人たちもいます。この時期に地域と関係のない人が地元への配慮なしに都市部感覚で移住するのが歓迎されるはずがありません」

 コロナ禍に限らず、地方移住が失敗するケースは後を絶たないと木下さんが続ける。

「そもそも地方には町内会の行事などが多く、地域のおつきあいが苦手な人は移住しても失敗しやすい。また地方は水道代やガス代などが高く、バスの本数の減少や病院の老朽化などで公共サービスを都会並みに提供することが難しい。都会と同じような生活をして豊かな自然だけ享受しようともくろんで移住すると、『話が違うじゃないか!』となってしまう」

 田舎は都会よりシビアな一面も多い。安直な夢を抱くのはやめた方がよさそうだ。

※女性セブン2021年6月17日号

関連記事

トピックス