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2021.09.13 19:00  マネーポストWEB

親の介護をした子供は他のきょうだいより遺産を多くもらえるか 弁護士が解説

ずっと介護をしたのは私なのだから…(イラスト/大野文彰)

 仲の良いきょうだいでも、親の遺産を巡って争いになることがある。とくに、きょうだいの1人が親の介護を担当し、実質“相続する財産を守ってきた”場合、等分では納得できないケースも出てくるようだ。遺言書がなくても、親の介護をした子供が多く遺産をもらうことはできるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 先日、父が亡くなり、相続のことでもめています。母はすでに亡くなっており、相続人は私と妹と弟の3人です。父は生前、介護が必要だったため、3人で協力して面倒を見るはずでしたが、妹と弟はほとんど協力せず、私が仕事をやりくりして介護をしました。私は「介護した分、遺産を多くもらいたい」と主張しましたが、2人は「遺産は3等分で」と譲りません。遺言書などはありませんが、遺産を多くもらうことはできないのでしょうか。(大阪府・56才・女性)

【回答】
 遺言書がない共同相続で相続人間で話がつかないときは、各相続人の法定相続分に従って遺産分割するのが原則です。しかし、相続人の一部が相続財産の維持形成に尽力した場合に法定相続分で分割すると、尽力が無視されることになり公正とは言えません。

 そこで、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人」には、寄与分が認められます。寄与分が認められると、相続財産から寄与分を控除した残りを相続財産とみなして分割します。寄与をした相続人は、分割で取得する財産に寄与分を加算した財産が取り分になります。

 寄与分はまずは相続人間の協議で決定しますが、協議ができないときは、家庭裁判所が「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」決定します。寄与分が認められる事情に「被相続人の療養看護」があります。ご質問の場合もこれに当たれば寄与分の主張ができます。

 しかし、「財産の維持又は増加につながる特別の寄与」であることが必要ですから、親子の間で普通に見られる日常の世話程度では、「特別の寄与」とならず、寄与分は認められません。

 例えば、長年同居して食事を出していただけでは寄与分は否定されます。しかし、お父さんが介護を必要とする場合で、本来であれば家政婦などを雇ったり、介護保険制度で介護サービスを受けることができる場合で、被相続人の「療養看護」をしたのであれば、これらに要する費用の実費分だけ相続財産の減少が防げたことになり、寄与分が認められることになります。

 お父さんの入浴や洗髪、さらに排泄を介助したり、失禁の後始末などを継続的にしていれば、相当の負担と思われるので寄与分が認められる可能性があります。

 妹さんたちが同意しない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、寄与分も含めて協議し、そこでも調停がまとまらないときは、寄与分の申立と遺産分割の双方の審判を申し立て、裁判所の判断を受ける必要があります。

 介護を必要とした程度、作業内容、介護した期間やヘルパー資格の有無などで寄与分の有無や範囲が違ってきますから、これらがわかる資料を準備して弁護士会などで法律相談を受けることをおすすめします。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※女性セブン2021年9月16日号

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