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義親を介護した嫁への「特別寄与料」 認定への“高い壁”を越えるために必要なもの

相続人でない親族でも「特別寄与料」を請求できるが…(写真:イメージマート)

相続人でない親族でも「特別寄与料」を請求できるが…(写真:イメージマート)

「長年、一緒に住んで最期まで認知症のお義母さんの面倒をみてきました。私は相続では“よそ者”かもしれませんが、尽くしたことを誰かに認めてほしいという気持ちはあります……」

 都内在住の65歳の女性はそう語る。夫の親と同居する妻がそう思うケースは少なくないだろう。特に認知症などで、食事や入浴、排泄の世話や見守りなどの介護が必要になった時、「自分は仕事があるから」と妻にその多くを担わせてしまった場合はなおさらだ。

 相続の世界でもそうした世相を反映し、新たな制度づくりが進められた。2019年の民法(相続法)改正により、相続人でない親族(被相続人の配偶者、子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹ら血縁以外の親族。親の介護を担った長男の妻など)の貢献を考慮するため、「特別の寄与」の制度が設けられた。

 同制度により、長男の妻などが被相続人の看護や介護を無償で行なった場合、相続人に対し寄与に応じた額の金銭(=特別寄与料)を請求できることになった。

 冒頭の女性のように姑の世話に努めてきた嫁は、明治時代の旧民法を通じて100年以上、相続時に権利が認められることはなかった。令和になって初めて、その貢献に応じた金銭を自ら請求できるようになったのだ。

 これまで報われなかった“無償労働”が法律的に対価を認められることは、いかにも画期的な制度改正に思える。しかし、「そんな簡単な話ではありません」と言うのは弁護士の武内優宏氏(法律事務所アルシエン)だ。

「制度がスタートしてから3年近く経ちますが、相談を受けたことはあるものの、審判で認められた経験はまだ一度もありません。制度の運用上、なかなか難しい側面があるのです」(武内氏)

 概要だけ聞くと正当な権利が認められるようになったと思えるこの制度。ところが実際には「特別の寄与」が認められるケースはプロである弁護士でも「ほとんど聞いたことがない」という。背景には、どんな事情があるのか。

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