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元徴用工問題で相次ぐ「日本企業敗訴」の韓国最高裁判決 「雪解け」間近の日韓に尹政権の“ちゃぶ台返し”はあるのか

2023年は互いの国を行き来し合う「シャトル外交」を復活したが…(EPA=時事)

2023年は互いの国を行き来し合う「シャトル外交」を復活したが…(EPA=時事)

 韓国で、いわゆる「元徴用工」をめぐり日本企業に賠償を命じる大法院(最高裁)判決が相次いでいる。1月25日には、元勤労女子挺身隊員らが「強制労働させられた」として日本の機械メーカー「不二越」に損害賠償を求めていた裁判の最高裁判決が下され、原告らに計21億ウォン(約2億3000万円)の支払いを命じる判決が確定。最高裁による判決はこれまで12件あり、いずれも日本企業側が敗訴している。1965年の日韓請求権協定で元徴用工らに対する賠償は解決済みとしてきた日本政府の立場と相容れない状況が生まれつつある。

 また、昨年末、韓国大法院は、元徴用工の訴訟で日立造船に賠償金5000万ウォン(約550万円)の支払いを命じる判決を下した。同社は1審、2審でも敗訴していたので、強制執行を避けるために裁判所に6000万ウォン(約660万円)を供託していたが、この1月24日、原告側弁護士は供託金の差し押さえが認められたと発表。これを受け、日本の新聞やテレビは「供託金が差し押さえられれば、日本企業に初めて“実害”が及ぶ」と報じた。

 2022年5月に韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が誕生して以来、岸田文雄首相と会談を重ね、そのたびに友好ムードが伝えられてきた。凍り付いていた日韓関係は雪解けの時期を迎えたと思われていただけに、これら一連のニュースで、冷や水を浴びせられたように感じた人は多いかもしれない。

 ただ、これまでの元徴用工訴訟でも、韓国の裁判所は原告側の主張を認めてきたので、今回の判決もそれを踏襲しただけとも言える。韓国社会に詳しい作家の崔碩栄氏はこう語る。

「今回の韓国大法院の判決は、1審、2審の判決を確認しただけなので、韓国世論では特に驚きも反発もなく受け取られている。むしろ、逆の判決が出ていたら、大きな話題になっていたでしょう」

 過去の判例から考えれば、こうした判決が出るのは当然とも言える。そもそも尹政権は2023年3月に、元徴用工訴訟について、「韓国政府傘下の『日帝強制動員被害者支援財団』が肩代わりして、原告に賠償金を支給する」「係争中の訴訟についても、原告の勝訴が確定した場合は、財団が支給する」といった解決策を提示している。

次のページ:尹大統領が元徴用工問題の「解決策」を提示した意図
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