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台湾企業・TSMCが半導体ファウンドリーで「一強」になった経緯 世界中の企業が受注する理由と各国が警戒する依存リスク

なぜ半導体ファウンドリーはTSMCの独壇場となったのか(写真/AFP=時事)

なぜ半導体ファウンドリーはTSMCの独壇場となったのか(写真/AFP=時事)

 世界の半導体市場は2024年に過去最高の5883億ドル(約87.5兆円)に達し、2030年には1兆ドル(約147兆円)を超えるとの予測も出てきた。需要を牽引するのはマイクロソフトやアマゾン、エヌビディアなどアメリカ企業だが、製造の主役を担うのはアジアだ。半導体分野の世界シェアを見るとファブレス(設計能力)では米企業で過半を占めるが、ファウンドリー(受託製造)では台湾企業が6割を超える。

 とりわけ台湾のTSMC(台湾積体電路製造)はファウンドリーでは一強で、2月に稼働を始めたTSMCの熊本工場は国を上げて誘致した。なぜ半導体のファウンドリーはTSMCの独壇場となったのか。半導体業界に精通する電子デバイス産業新聞特別編集委員の津村明宏氏は、こう語る。

「端的に言えば、圧倒的な技術力の賜物です。韓国のサムスンやアメリカのインテルといったライバル社はありますが、いまだにTSMCに追いつくことができない。TSMCの作る半導体の回路線幅は3ナノメートル(1ナノメートルは1メートルの10億分の1)で、台南の工場で製造している。この3ナノメートルの回路線幅で約120億個のトランジスタパターンを刻み込む。現状、製造できるのは世界でTSMCのみです。これにより世界中の企業から受注が集まるようになった」

 TSMCは2027年から2028年を目処に回路線幅が1.4ナノメートルの半導体チップの量産を計画している。なぜここまで高度な技術を得られたのか。

「半導体の設計ではなく『製造』に特化したことが大きい。他社から設計図を受け取って、製造だけに注力する。技術を突き詰め、利益はさらなる最新の設備投資に回し、再びそこで技術を磨き上げる。世界中の企業を相手にしているので開発スピードも速い。これにより他の追随を許さない立ち位置に到達しました」(津村氏)

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