島根県は100才超人口が9年連続1位　長寿の秘訣は「しじみ・さば・高齢者サロン」

「世界でいちばん長生きな国は？」もちろん、わが国日本！　「…ですが、日本でいちばん長生きな人が多い都道府県は？」　人口の多い東京でも、一年中暖かい沖縄でもない。実は、長寿がいちばん多いのは島根県。白寿どころか紀寿まで超える、島根の元気の秘密とは？

　9月13日、島根県がある記録を更新した。

　住民基本台帳にもとづいた「百歳高齢者表彰の対象者」が前年から45人増加の905人となり、100才以上の人数はなんと9年連続で日本一となった。そのうち、女性は781人で最高齢は109才、男性は124人で最高齢は108才だ。

「平均寿命が長い都道府県」では23位と、滋賀県や長野県などのトップグループに後れを取るが、島根県は「長生きできる人が日本一多い県」。

　島根県で生まれ育ち、現在も県内で高齢者の在宅リハビリなどを行う作業療法士の藤井寛幸さんは「島根では80才はまだ若い」と語る。

「普段から高齢者と接する中で、80代ではピンピンしている人が多いと感じます。なかには100才を過ぎても農作業をしている人もいるほどです」（藤井さん・以下同）

“ご長寿大国”島根―元気の秘訣は何なのだろうか。

名産品はどれも健康長寿食

　藤井さんは、島根では特に「地のもの」を食べる習慣が根強いと話す。

「島根県は、人口は全国46位で下から2番目なのに対し、森林面積は全国4位。人が少なくて自然が多く、畑や田んぼを持っている人も多い。そのため、旬の野菜や魚介類といった地域の特産品を食べるのが当たり前の環境なのです」

　島根県の特産品といえば、宍道湖でとれるしじみ。漁獲量、消費量ともに全国1位だ。藤井さんの実家もしじみ漁師で、幼い頃からとれたてのしじみを食べて育ったという。

　しじみに含まれるオルニチンは肝機能の改善効果で知られているが、実は疲労軽減や糖尿病の予防にも役立つ。

　事実、最新の統計では、島根県では肝臓病や糖尿病で亡くなる女性は2％未満と、全国で最も少ない。

　また、しじみにはビタミンB12も豊富に含まれており、神経や血液の働きを正常にして、動脈硬化やうつ、アルツハイマー型認知症の予防に役立つ。そのほか、カルシウム、鉄分、亜鉛といったミネラルも摂取できる。

「しじみに限らず、島根では魚介類を盛んに食べます。地域にもよりますが、家の近所でとれた魚や貝が安く手に入ったり、ゆずってもらえたりして“魚介類が食べ放題”というのは珍しくない。

　また、人が少ないこともあり、とれた魚介類をできるだけおいしく保存・調理して広めたいという思いがあるように感じます。雲南市の焼きさば寿司は有名ですよね」

　数年前から水煮缶が全国的にブームを巻き起こしているさばも、長寿を支える健康食材。2020年度の家計調査では、さばの消費量の全国1位は島根県松江市だ。

　認知症予防に効果的なDHAのほか、血糖値を下げて血圧改善が期待できるEPAなど、良質の油をたっぷり摂ることができる。

　動脈硬化やがん、アルツハイマー型認知症の危険因子である血中の「ホモシステイン」の濃度を正常に保つのに役立つビタミンB6や、脳の働きを助けるビタミンDも豊富だ。

　そのほか、漁業が盛んな島根県ではあじやいわし、十六島のりに代表される海藻類も他県よりも安く手に入り、食卓にのぼる機会も多い。お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二さんが言う。

「魚介類は総じて、高い健康長寿の効果が期待できます。穀物などを食べて育った肉と比べると、天然の魚介類は、より自然な状態に近い脂肪酸やミネラルが含まれているのです。しかし、ただ魚介類の消費量が多いからといって、それだけでは健康的とは言い切れない。魚も、大型のものや養殖のものを食べすぎれば含有重金属などのリスクが考えられます。トータルでの食事内容やそのほかの生活習慣も非常に重要です」

　島根県健康推進課の担当者も「他県と比べてしじみの消費量が多いのは、しじみがとれる宍道湖付近や県東部が中心で、それ以外の地域はほかの都道府県と大きな差はないのでは」と語る。

　島根県民の健康長寿を支えているのは、しじみとさば以外にもあるということか。

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