健康

“笑い”は即効性があり副作用のない治療法|免疫の権威が勧める生活習慣「1時間のお笑い番組・旅行・読書」

 さまざまな病気から身を守るために、できるだけ免疫力を上げたいもの。そこで、おすすめの方法を専門家の方々に教えてもらいました。今すぐできるので、免疫力をめいいっぱいアップさせちゃいましょう!

がんの治療現場で実際に行われている治療法「笑い」

 もし、がんを発症した場合、医学的にリンパ球を増やす治療法もあると、たにぐちクリニック院長の谷口一則さんは言う。

「細胞免疫療法といって、T細胞やNK細胞などのリンパ球を取り出して培養する方法があります。月に1度、1回20万~30万円ほどの治療を5~6回繰り返す必要があり、もちろん効果は期待できますが、100%の人に有効とは言い切れません。それよりも、生活習慣を整える方がずっと安くて簡単です」(谷口さん)

 現在、がん治療の現場で実際に行われている治療法はなんと、「笑い」によるもの。外科医で笑医塾塾長の高柳和江さんは、実際に実験をした1人だ。

「20人の被験者を2つのグループに分け、閉鎖空間で1時間何もせず過ごした場合と、お笑いのビデオを見せた場合のNK細胞の活性を比べたところ、笑って過ごしたグループの方が、圧倒的に数値が高かったのです。これは、笑うことで脳に興奮が伝わり、神経伝達物質の善玉ペプチドが大量に分泌されるため。この刺激によってNK細胞が急激に活性化するのです」(高柳さん・以下同)

即効性があり副作用がない

 高柳さんは、「薬には必ず何らかの副作用があるが、笑いには副作用がなく、しかも即効性がある」と語る。

 中には、こうした笑い療法を受けたことで、脳梗塞の後遺症である顔面麻痺(まひ)が治ったり、認知症によって寝たきりだった自営業の高齢者が仕事に復帰できるほど回復した例もある。

 2019年の山形大学医学部の発表では、年齢や飲酒・喫煙習慣に関係なく、ほぼ毎日笑う人と比べて、月に1回程度しか笑わない人は、心血管疾患のリスクが1.6倍にもなることがわかった。

「ただし、ブラックジョークや、人をおとしめるような笑いに効果はありません。理想は誰かと褒め合ってついこぼれてしまうような“感動の笑い”です。笑点や落語などでお腹を抱えて笑うのもいいでしょう。感動の笑いはストレスホルモンを減らし“幸せホルモン”のセロトニンやβエンドルフィンの分泌を促し、さらには、免疫の大敵の血糖値を正常化させることもわかっています」

 笑いのほか、スポーツ観戦やカラオケ、映画鑑賞など、頭を真っ白にして没頭できることなら、同様にリンパ球を活性化する効果があるという。奥村さんによれば、1日につき100~120分ほど、何かに没頭できる時間をつくるのが効果的だ。

ワクワクするような体験は、リンパ球を増やす

 谷口さんは、2005年、9人のがん患者を連れて、モンゴル旅行に出発した。旅行の前後で患者のリンパ球数を比べると、9人中8人のリンパ球数が上昇しており、なかにはリンパ球数が1000近く増えた人もいた。

「旅行に行くことは、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の分泌を促し、ストレスを解消できるほか、旅先で動き回ることが適度な運動になり、自然や現地の人と触れ合うことが副交感神経を優位にします。つまり、非常に効率的にリンパ球を増やすことにつながる刺激を得ることができるのです」(谷口さん・以下同)

 いまの状況では気軽に旅行に行くことは難しいが、知らなかったアーティストの曲を聴いたり、読書量を増やしたり、いつもと違うルートで帰るなど、ワクワクするような「未知の体験」であればなんでも、リンパ球を増やすことにつながるはずだ。未知の体験に踏み出すために、谷口さんは「人生の残り時間」を計算することをすすめる。

「いまの“余命”を意識することで、これまではやりたくてもがまんしてきたことや、挑戦できなかったことに踏み出すきっかけになります。自分の人生の残り時間を計算して“死ぬまでにやっておきたいことリスト”をつくり、1つずつ実践してみることをおすすめします」

 ただし、「リストをつくらなければ」「毎日笑わなければ」などと、自分にルールを課してしまわないこと。免疫の権威で、順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター長の奥村康さんは言う。

「“○○せねばならない”という思考は大きなストレスになり、NK細胞の働きを低下させることが、あらゆる研究で明らかになっています。新しいことに挑戦するなど、ポジティブな緊張感による心地よいストレスならよいのですが、自分を追い込むようなルールはつくらないようにしてください」(奥村さん)

 谷口さんは、「これさえやれば立ちどころにリンパ球数が増える」という劇的な方法はないと語る。過度な期待もがまんもせず、ゆるく、笑って過ごすのが、免疫力を上げるためのいちばんの近道。人生を楽しむことこそが、何才になっても「超免疫ライフ」を続ける秘訣なのだ。

■「残り寿命計算式」で、死ぬまでにやりたいことを書き出そう

(女性)(86-自分の年齢)×2/3=あと 年
(男性)(79-自分の年齢)×2/3=あと 年

 自分の“残り寿命”を計算すれば、人生で本当にやりたいことに踏み出しやすくなる。

*谷口一則『なぜ、あのおっちゃんはいつも元気なのか』(自由国民社)より

教えてくれた人

谷口一則さん

たにぐちクリニック院長。著書に『なぜ、あのおっちゃんはいつも元気なのか―名医が教える健康長寿のカギ「リンパ球数2000」の秘密』(自由国民社)。

高柳和江さん

笑医(わらい)塾塾長。著書に『死に方のコツ』(小学館文庫)、『笑いの医力』など。

奥村康さん

順天堂大学医学部特任教授、アトピー疾患研究センター長。著書に『面白いほどわかる免疫の新常識』など。

※女性セブン2022年3月24日号
https://josei7.com/

●免疫の権威が解説!“リンパ球”の役割「理想の数はT・B・NK細胞、合わせて2000」

●高免疫力ボディになる生き方|「まじめ」より「がさつ」、「やせ」より「ちょいポチャ」、 「ジョギング」より「早歩き」

●免疫力の低下を防ぐ「歯ヨガ」とは…4つのトレーニングで口から健康!

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