健康

100才まで元気に生きるための脳トレ「切り絵、左右対称文字書き」ほか5選【医師監修】

 80代、90代でも元気に働き、SNSや動画配信などでその活躍を発信している“アクティブシニア”が増えている一方で、長年寝たきりのまま最期を迎える人も…。その差は一体何なのか――。いくつになってもボケずに自分の足で歩ける“健康長寿”を目指して、50代からやっておきたい脳トレを紹介します。

 厚生労働省が2021年に公表した「簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は、女性が87.74才、男性が81.764才で、男女ともに過去最長を記録した。しかし、この数値だけでは、「人生を長く享受できる」と喜べない。というのも寿命の“ものさし”には「健康寿命」もあるからだ。

 平均寿命が、その年に生まれた0才児が平均で何才まで生きられるかを予測した数値であるのに対し、健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく送れる期間を表した数値だ。

 日本の場合、この2つの数値は一致せず、平均寿命に比べて、健康寿命の方が、男性で約9年、女性で約12年も短いとされる。つまり、たとえ長生きしても、晩年の約10年は、介護や支援が必要になったり、寝たきりになって不自由な生活を強いられる可能性が高いというわけだ。

手を動かすのは運動と同じ効果が

 アルツハイマー患者は2度死ぬ──という言葉をご存じだろうか。医学博士で精神科医の古賀良彦さんが言う。

「アルツハイマーになると人格が損なわれ、失礼な言い方をすれば、生きながら死んだ状態になってしまう、というたとえです」

 脳の健康を維持するのに大切なのは、脳を程よく働かせられる「脳トレ」だという。

「特に、手を動かすことが脳トレになります。たとえば『ぬりえ』。運動をしたときと同じように脳全体が活性化するので、運動が苦手な人や疲れて運動する気になれない人、体が不自由な高齢者にもおすすめです」(古賀さん・以下同)

 さらに、「折り紙」や「切り絵」も、ぬりえ同様、手を使うことで脳全体が活性化するため、おすすめだという。ストレスを解消して脳を活性化させるなら1日約15分、認知症予防のためには、1日約30分を目安に続けるといい。このほか、下に紹介する「左右対称文字書き」や「半分神経衰弱」も効果的だ。

声を出したり会話することもおすすめ

「手を動かす以外では、『話す』『声を出す』というのも脳の活性化につながります。とはいえ、最近は外出自粛で、“誰とも話さなかった”という日もあるでしょう。そんなときにおすすめなのが、『逆唱テスト』や、『マジックセブン』(下に詳述)。また好きな本を約1分音読するのもおすすめです」

 音読を続けていると、はっきりしゃべろうと意識するようになり、結果、滑舌がよくなったり、腹式呼吸を心掛けるようにもなるという。

「脳トレのレパートリーがいくつかあると、その日の気分で選んで楽しめるので、いろいろ試してみてください」

脳トレ メソッド1:切り絵

2枚の紙をそれぞれ半分に折り、チューリップとハートの半分を描いた紙の画像

《ハート》

 上図の点線が「わ」になるように2つ折りにして、ハートの半分を描き、実線に沿ってはさみで切る。

《チューリップ》

 上図の点線が「わ」になるように2つ折りにして、チューリップの半分を描き、実線に沿ってはさみで切る。

《りんごのリース》

 折り紙が三角になるよう半分に折る。これをあと2回繰り返す(二等辺三角形が8つ重なった状態に)。「わ」を右下に配置して(左と右上はバラバラした状態)りんごを描き、実線に沿ってはさみで切る。

脳トレ メソッド2:左右対称文字書き

 たとえば、「みかん」を書くと決めたら、イラストのように両手に筆記具を持ち、左右同時にスタートさせて文字が左右対称になるように書く。

「みかん」を右手と左手でそれぞれ左右対称に書いているイラスト

「難しければ、最初は1文字でもOK。ひらがなやカタカナから始めて、漢字へと徐々に難しくしていきましょう」(古賀さん・以下同)。

脳トレ メソッド3:逆唱テスト

 2人で行うトレーニング。たとえば相手が「846」とランダムな数字を読み上げたら、すぐに「648」と逆唱する。お題を読み上げるスピードは約1秒を目指す。5問正解したら、4桁へと難易度を上げる。4桁の場合は、2秒かけるなど、読み上げにかける秒数を増やしていく。

脳トレ メソッド4:半分神経衰弱

「神経衰弱」を1人用にアレンジ。トランプ52枚のうち、「赤の札」のみ、あるいは「黒の札」のみに分け、枚数を半分にしたら、カードを裏返しにし、あとは通常の「神経衰弱」の要領でカードを1枚ずつめくる。2枚の数字が一致したら除いていく。慣れたら枚数を増やしていこう。

脳トレ メソッド5:マジックセブン&ひとりしりとり

「マジックセブン」とは、記憶を衰えさせないための脳トレ。「お題の答えを必ず7つ挙げるゲームです。なぜ7つかというと、人間が一度に思い出せるのは大体7個とされているからです」。「ひとりしりとり」は「マジックセブン」の応用編だ。

■マジックセブンのお題例

●カレーの材料を7つ挙げよう

●よく使う調味料を7つ挙げよう

●世界遺産を7つ挙げよう

●白い花を7つ挙げよう

●県名と県庁所在地が同じ県を7つ挙げよう

■ひとりしりとり例

【1】「ごちそう」からスタート。【2】「う」で始まる言葉を7つ挙げる。「馬」「浮き輪」「牛」「運動場」「ウーロン茶」「上着」「うわさ」など。【3】7番目の「うわさ」の語尾「さ」で始まる言葉を7つ挙げる。【4】同様のやり方で続けていく。

教えてくれた人

杏林大学名誉教授・古賀良彦さん/医学博士。精神科医。専門は睡眠障害と関連の深い統合失調症、うつ病の治療。脳トレに関する著書は数多く、日本ブレインヘルス協会理事長も務める。

取材・文/上村久留美、鳥居優美 撮影/黒石あみ

※女性セブン2022年4月28日号
https://josei7.com/

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