健康

在宅復帰率80%超!全身運動「くるのびダンス」で転倒予防、立ち上がりもスムーズに

 55才を過ぎたあたりから「若い頃に比べて歩くのが遅くなった」「バランスを崩しやすい」「足腰が痛む」など、筋力や関節の動きの悪化を感じる人が増えてくる。このまま放置すると身体能力は徐々に衰え、寝たきりになる恐れも…。でも、そんな人生を避けられる楽しいダンスがあるんです!

 人生100年時代を見据え、

「いつまでも自分のことは自分でする生活をしていくためには、体を動かす習慣が大切」

 と言うのは、原宿リハビリテーション病院の名誉院長・林泰史さん。

「関節も筋肉も骨も、適度に刺激しないと衰えが進み、簡単に病気やけがをしてしまい、要介護状態になりやすい。そして、入院中にリハビリ訓練をして回復しても、退院後は動かさなくなり、要介護度が進むケースも多いのです。運動もリハビリも、楽しくなければ続きません。そこで、振付師のパパイヤ鈴木さんの協力を得て、体幹をほぐし、筋肉や関節の機能を高められるダンスを考えたのです」(林さん・以下同)

 体をねじり、伸ばす運動が多い「くるのびダンス」は、病院内はもちろん、健康を気遣う人たちにも広がっている。

「運動効果を高めるには、最初は動きを確認しながらゆっくり行うのがポイント。慣れてきたらアップテンポでリズミカルに行うといいですよ」

 全部で10ある動きから、効果の高い2つを紹介しよう。

脳を活性化!肩、手指にも効く「くるくる1週間」体操

肩、手指にも効く「くるくる1週間」体操の図

「月、火、水、木、金、土、日」と、声を出しながら、全身を動かす運動。「腕を大きく動かして肩を動かす運動に、指先をつけるという細かい動作を加えることで、脳の活性化が期待できます。肩がうまく上がらない人が無理して動かすと、関節を支える腱や細かい筋肉に負担がかかるため痛めてしまいかねません。腕はできる範囲で上げれば大丈夫。続けるうちに可動域は広がっていきますよ」(林さん・以下同)。

 両脚を肩幅くらいに広げて立ち、両腕を前に伸ばし、親指と人差し指以外は握る。親指と親指、人差し指と人差し指を交互につけながら、右斜め下から、頭上を通って左斜め下まで、円を描きながら両腕を動かす。目線は指先に向け、できるだけ大きく体を動かす。

Point【1】親指どうしをつける

右手のひらと左手の甲を自分に向けて、親指の指先どうしをつけた写真

 右手のひらと左手の甲を自分に向けて、親指の指先どうしをつける。

Point【2】人差し指どうしをつける

左手のひらと右手の甲を自分に向けて、人差し指どうしをつけた写真

 左手のひらと右手の甲を自分に向けて、人差し指どうしをつける。手のひらをくるくると返しながら、【1】と【2】の動きを繰り返す。

座ったままでもできる!

椅子に座ってくるのび体操をする男性の写真

 椅子の背にもたれかからず、腕を伸ばして行うと、体幹をしっかりほぐせる。

つまずき防止に! 股関節・腰・ひざ・足首にも効く「ペンギンスクワット」

 歩かなくなると、最初に固まるのが足首。

「10日ほど動かさないだけで足首は曲げにくくなり、ちょっとした段差でもつまずきやすくなってきます。足の甲を体に引き寄せ、つま先を上げる動きを繰り返すだけでも、足首の柔軟性は保てます。つまずきにくくなるため、骨折に直結する転倒事故の予防に役立ちます。また、片足で立つことや、前に大きく踏み出す動きも足首の運動になり、歩く速度の低下予防にもなるのです」。

【1】右足のつま先を上げて踏み出す

 両脚を肩幅程度に広げて立ったら、両腕を左右に広げながら右足を左斜め前に踏み出し、左足を床から離す。この時、右足のつま先は上げたままに。

【2】正面を向き、胸の前で腕を交差する

正面を向き、胸の前で腕を交差する男性の写真

 左足を床に下ろし、右足を元の位置に戻しながら体を正面に向け、胸の前で腕を交差する。

【3】背筋を伸ばし、お尻を引いてスクワット

背筋を伸ばし、お尻を引いてスクワットする男性の写真

 腕は組んだままの状態で、お尻は後ろに突き出すようにしてひざを曲げる。

【4】ひざを伸ばす

腕を組んでひざを伸ばし立つ男性の写真

 腕は組んだままでひざを伸ばす。

【5】両腕を左右に広げ、左足のつま先を上げて踏み出す

両腕を左右に広げ、左足のつま先を上げて踏み出す男性の写真

 両腕を左右に広げながら、左足を右斜め前に踏み出し、右足を床から離す。【2】、【3】、【4】を行い、【1】に戻る。

座ったままでもできる!

椅子に座り上半身をひねり、両腕を左右に広げた男性の写真

 足を踏み出す代わりに上半身をひねり、両腕を左右に広げる。 

椅子に座り腕を体の前で交差した男性の写真

 スクワットの代わりに、腕を体の前で交差して上下運動を行う。

『原宿リハビリテーション病院』と『蒲田リハビリテーション病院』の入院患者67人が週3回、3週間のリハビリ訓練にこのダンスを加えたところ、ダンスを行わなかった人に比べて、(1)日常動作がラクにこなせる (2)立つ、歩くがすばやくできる、の2点が回復。さらに、足元がしっかりして転びにくい、が有意に回復したという結果が報告されている。

「健康な人も、くるのびダンスを続けることで足腰が強くなります。特にペンギンスクワットでつま先を上げた踏み込み動作は、転倒予防に高い効果が得られます。普段動かしていない体の部位を動かすと、最初は筋肉痛になるかもしれませんが、『これは効いている!』とプラスに考え、1週間続けてみてください。週に3回程度、1~2セット行えば充分です」(林さん・以下同)

 さらに効果を上げるには、いつ行うのが最適なのか?

「ライフスタイルに合わせてある程度決まった時間に行うのが大切です。好きな曲に合わせて行うのもいいですね。運動後にたんぱく質を摂ると筋力が増えるといわれているので、運動後に食事をするのがおすすめです」

 楽しく行う毎日の積み重ねが転ばない体をつくるのだ。

教えてくれたのは…

原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林史さん/医学博士。整形外科医として高齢者医療に携わる。骨研究、リハビリテーション医療の第一人者。現在80才ながら、毎日1万歩以上も歩く健脚だ。

 撮影/菅井淳子

※女性セブン2019年11月28日号

●「足指のばし」が簡単にできる!【ゆびのば体操】のやり方、Q&A

●1回5分、1日2回で転ばない体に!話題の「転倒防止体操」<パート1>

●のどを鍛えて病気を防ぐ|『のどピコ体操』で若さをキープ!

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