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【東急東横線】注目の特別養護老人ホームと介護付有料老人ホーム【まとめ】

 評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。

 渋谷から横浜までを結ぶ東急東横線。全部で21駅あり、沿線には田園調布や武蔵小杉など人気の住宅地も数多い。代官山や自由が丘などで買い物や食事を楽しむために利用する人も多く、2019年度の一日平均利用者数は123万人を超えている。そして今、沿線の高齢者人口は増加傾向にあり、高齢者向け施設のニーズも年々高まっているという。そこで今回は、東横線の特別養護老人ホーム(以下、特養)と介護付有料老人ホームを紹介する。

小規模多機能居宅介護、保育園もある目黒区の特別養護老人ホーム「目黒中央の家」

 東京・目黒区に19年ぶりに開設された「目黒中央の家」。東急東横線「学芸大学」駅から徒歩7分の旧区立第六中学校南側跡地を活用し、広々とした敷地に5階建ての建物が建てられている。ここにはユニット型の全室個室の特養だけではなく、ショートステイや小規模多機能居宅介護(※)、保育園、地域交流スペースが入っている。

※「通い」を中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービスを提供することで、中重度となっても在宅での生活が継続できるよう支援するため、小規模多機能型居宅介護が創設された(厚生労働省「小規模多機能居宅介護の概要」より)。

 小規模多機能型居宅介護では、自宅から通える「通いサービス」や「宿泊サービス」、自宅への「訪問サービス」が受けられる。住み慣れた自宅、地域で可能な限り自立した生活ができるよう、心身の状況や置かれている環境に合わせたサポートをしてくれる。家庭的な環境と地域住民との交流も特徴の一つ。

 ここには訪問や通い、泊まりの機能があるが、同じ職員が対応するため、いつもの生活環境から変化があると混乱してしまうことがある認知症の人でも、安心して利用できるという。利用を申し込むことができるのは、目黒区に住民票があり、介護認定を申請している人。定員は18名で、料金はサービスを受けた量に関係なく定額制だ。そのため、利用者やその家族、地域の住民の制度に対する理解と協力が不可欠だという。

「ここには特養があるので、機械浴など必要な設備は一通り揃っています。小規模多機能を利用していた方が特養に入居される場合、その方の状態や人となりを職員が把握しているので、受け入れがスムーズだという利点もあります」(施設長の小林健太郎さん 以下「」は同)

 泊まりの部屋にも工夫が凝らされている。利用者のライフスタイルや価値観に合わせて、「書斎的雰囲気」「リラックスできる趣味部屋」「心地よい香りで優雅な空間」「和の空間」の4種類から選べるという。1階のカフェスペースや2階の機能訓練室など建物全体を活用した運営もここならでは。

「最近は在宅復帰もキーワードになっています。特養から在宅に復帰する場合、自宅近くに対応してくれるサービスが少ない場合がありますが、こちらの小規模多機能には通いと訪問、泊まりが準備されていますので、ご自宅に復帰された後も一か所でまとまった支援ができます」

 目黒中央の家の3階にある「優っくり保育園」は事業所内保育所。事業所内保育所とは、従業員の児童並びに地域で保育を必要とする0歳から2歳の乳幼児に保育活動を提供する家庭的な認可保育園のこと。同じ建物に入っているので、特養の入居者とも自然な形で日常的に交流があるそうだ。認知症の入居者が子供と触れ合うことで、普段見せないような笑顔を見せることもあるという。

「目黒中央の家のコンセプトは新福祉創造です。特養とショートステイ、小規模多機能型居宅介護があり、さらに法人として新しい取り組みとなる保育園を運営しています。12名が定員で8名が事業所内保育です。地域に貢献しながら、職員が産休から復帰しやすくし、働きやすい環境を整えたいと思っています。高齢者施設でお子さんの声が聞こえるのはすごくいいですね。入居者の方々も触れ合うのを楽しんでいるようです」

 ここには、地域コミュニティの中心だった中学校の役割を引き継ぐため、1階にWi-Fiやプロジェクター、図書コーナーなどの設備も充実した地域交流スペースが作られている。災害備蓄倉庫もあり、非常時には福祉避難所としても機能するという。

 いかがだっただろうか。特養に加えて小規模多機能型居宅介護や保育園、地域交流スペースを持つ「目黒中央の家」。年月と共に高齢者のためだけに留まらない地域の福祉拠点に育っていきそうだ。

→全室個室のユニット型!従来のイメージを覆す特別養護老人ホーム<前編>
→小規模多機能居宅介護、保育園もある目黒区の特別養護老人ホーム<後編>

自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム「ウェルケアガーデン久が原」

 東急東横線「田園調布」駅よりバスで17分(久が原特別出張所前から徒歩2分)の静かな住宅街にある「ウェルケアガーデン久が原」。東京都大田区久が原は高級住宅街として人気で、緑が多く、住み心地は折り紙付きだ。発掘調査で縄文時代や弥生時代から人が住んでいたことが分かっているほど、古くから住みやすい場所として知られている。

 ウェルケアガーデン久が原を運営する株式会社サンケイビルウェルケアは「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」をテーマに高齢者向け施設を運営し、お世話型の介護ではなく、自立支援介護を提供しているという。「入居時は車椅子だった入居者が歩けるようになった」「徘徊など認知症の周辺症状がなくなり、豊かな表情を取り戻した」など目に見える成果をあげているそうだ。同社はそうした自立支援介護の取り組みの一つとして、「パワーリハビリテーション」を導入。パワーリハビリテーションは、専用のトレーニングマシンを用いて低負荷の動作を繰り返す運動のことだ。

 マシンを使ったトレーニングというと尻込みしてしまう高齢者もいるが、パワーリハビリは入浴よりも心臓への負荷が軽いそうだ。筋肉量を増やすのではなく、使われなくなった筋肉をうまく動かせるようにすることに主眼を置いているという。導入しているトレーニングマシンは、医療用として設計された専用のもの。また、パワーリハビリのマシンではないが、脳卒中や脊髄損傷などで歩行が難しくなった場合や関節の負担を軽減する必要がある症例でも歩行訓練ができる「アンウェイシステム」も導入している。

 理念の「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」はただ掲げているだけではない。理念を実現するために、会社全体で改善実績を数値化して、チェックしている。社内集計によると、要介護5から要支援2に5段階改善した入居者が2名いるそうだ。他にも4段階改善が7名、3段階改善が4名、2段階改善が14名、1段階改善が65名という実績が出ているという。ADL(Activity of daily living)=「日常生活動作」の改善状態も集計しており、寝たきりから車椅子、つたい歩きから自立歩行、粥から米飯、オムツから布パンツ(パット含む)など、目に見える実績が出ているとのこと。

 サンケイビルウェルケアの自立支援介護を顧問として指導しているのは、国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授。医学的根拠を基盤とした4つの基本として実践されているのが、水分摂取、運動、食事・咀嚼、自然な排便だ。水分摂取は1日1500mlを目標にしていて、水分を摂取し、食事を良く噛んで栄養を取り、運動をすることが自立した排泄につながるという。こういった積み重ねがオムツを外せるようになるなど、入居者の日常生活の改善につながっていくそうだ。

 自立支援介護の理念は、施設内の設備にも反映されている。例えば様々な状態の入居者が座れるように、座面の幅や高さなどの違った椅子を揃えているという。病院のベッドであまり食が進んでいなかった入居者が、歩いて食堂に来て、座って食事をするようになったことで生活への意欲を取り戻したこともあったそうだ。

 他者とのコミュニケーションは認知症にも効果的だという。食事などで使うテーブルを六角形にし、コミュニケーションを取りやすくしているのもそのため。細かいところまで配慮が行き届いている印象だ。

 ウェルケアガーデン久が原は、リハビリの一貫として歩くことにも力を入れているという。歩くようになると食事の量も増えるそうだ。自宅に戻ることを目標に掲げており、高齢者向け施設に期待される介護の部分が柱としてしっかりしている印象を受けた。

→自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<前編>
→自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<後編>

木と人のぬくもりに包まれた介護付有料老人ホーム「グランフォレスト学芸大学」

 東急東横線「学芸大学」駅から徒歩8分の閑静な住宅街の中にある「グランフォレスト学芸大学」。駅前やその周辺には商店や飲食店も多く、生活に不自由することはない。渋谷駅まで電車で8分とアクセスもよく、人気の居住エリアだ。

 こちらの建物の特徴は、とにかく木がふんだんに使われていること。居室だけではなく、共用スペース、廊下、手すりなどその多くに良質な木材を使っており、温かみを感じる。自動販売機や消火設備の収納場所にまで使う徹底ぶり。それもそのはず、こちらを運営する「株式会社フィルケア」は住友林業グループの一員なのだ。

 訪れた時間帯は昼食を終えた午後のひと時。職員とだけではなく、入居者同士で自然に会話を楽しんでいる様子が印象的だった。木のぬくもりの中で落ち着いて生活できる環境が関係しているのかもしれない。

 居室の床にももちろん木が使われている。しかもただの木ではなく、住友林業が戸建て向けに使っている衝撃吸収床を使っているという。そのため、入居者が転倒した場合の骨折のリスクを減らすことができるそうだ。また介護の仕事は仕事中に歩く距離が長く、立ち仕事のため足腰の不調が起こりがちだ。しかし衝撃吸収材は廊下などでも使われており、入居者だけではなく職員の足腰の負担も減らしているという。

 住友林業の系列会社の知見を活かして、庭の植栽もきれいに整えられている。「花笑(はなえみ)の庭」と名付けられたその庭では、入居者と共に草花を育てていて、四季折々の花が楽しめるように工夫されている。花や野菜を育てることは、高齢者の心身に良い影響を与えるそうだ。丁寧に手入れされた植栽は本格的で、居室の窓際にソファを置いて庭を眺めながらくつろいでいる入居者も多いというのもうなずける。

 入居者は育てた花を切り花にしてアレンジメントをしたり、押し花にしたりして楽しんでいるという。そのような楽しみが認知症の入居者の気持ちを落ち着け、認知行動療法としての効果も期待できるという。庭には花の名前が全部表示されていて、「これは昔、自分の家の庭に咲いていた」「母の家に咲いていた」などと職員と昔話に花が咲くことも多いそうだ。

 木のぬくもりに包まれた住環境を高齢者に提供しているグランフォレスト学芸大学。ふんだんに使われている木や整えられた多品種の植栽は、毎日ここで過ごす入居者の心身に良い影響を与えていそうだ。

→木と人のぬくもりに包まれた介護付有料老人ホーム<前編>
→木と人のぬくもりに包まれた介護付有料老人ホーム<後編>

 住宅地としても商業地としての人気の東急東横線の沿線。今後、建設が計画されている高齢者向け施設もあるので、住まいを構えている人も、遊びに行くことで好きになった人も、東横線沿線で探してみてはいかがだろうか。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。

→このシリーズのバックナンバーを見る

●特養に早く入所する裏ワザ|判定会議で優先順位を上げる方法や狙い目

●施設内「感染リスク」の高い危ない老人ホームの見分け方

●新型コロナで要介護認定はどうなる? 要介護申請の流れをおさらい

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