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老後の身辺整理、潔く片づけるための5つの心得「洋服と人形は必ず自分で処分を」

 連れ合いや子供に迷惑をかけないよう、自分の身の回りを整理してから旅立ちたい。そう思って片づけを始めようにも、荷物が多すぎてどうしたらいいのか分からない。という方も多いと思う。「“とにかく3、4年はかかる”と覚悟を決めた方がいい」と、専門家は言う。美しく去っていくために何をしたらいいのか、専門家に聞いた。

1:最初は年賀状や手紙類の整理から

 老後に備えた身辺整理を始めようと思った時、まず何から手をつければいいのだろうか。

「まずはいちばん簡単な、古い年賀状や手紙類から処分するのがいい。サラリーマンだった人は、ここに名刺が加わります。定年退職した会社の元同僚や大昔の知人と、漫然と年賀状を交換し続けている人は多い。しかし、彼らの中に、この先頻繁に顔を合わせたいと思うほど親しい人が、何人いるでしょうか?」(精神科医・保坂さん)

 保坂さんは、年賀状や手紙を捨てるのと一緒に、人間関係も整理すべきだと話す。

「一般的に、高齢になると、頻繁に言葉を交わす必要があるのは、家族や友人、親戚、ご近所の人など、多くても20人程度です。それ以外の“それほど大切ではない人たち”に毎年、年賀状を出し続ければ、手間になるうえ、相手から送られてきたはがきがたまってストレスになります。来年は“これが最後の年賀状になります”と書いて、年賀状をやめましょう」(保坂さん)

2:紙袋をため込まず、使う分以外は処分する

 次に、しまい込んでいた不用品を見極めて処分する。高齢者に多いのが、紙袋や密閉容器などを大量にため込むケースだ。

「“子供や孫が来たときにお土産や手料理を持たせるのに使える”という親心から、ついついこういったものをためてしまう人は多い。しかし、同じようなものをいくつも持っておく必要はありません。使う分だけにして、残りは処分して」(片づけヘルパー・永井さん)

3:「いる」、「いらない」の基準は全て「自分」

 「わが子のため」とモノをため込んだまま、もし突然この世を去ってしまったら、その品物を仕分け、処分しなければならないのは子供自身だ。本当に子供のことを思うなら、黙ってとっておかず、「〇〇があるんだけど使う?」

「あなたのためにとっておいてあるのだけど、必要?」と尋ねるべきだ。

 そもそも、処分するかどうかを仕分ける際、ほかの家族のことを考える必要はない。

「仕分けの基準は自分だけでいい。自分が今後使うかどうか、思い出があるかどうかだけで判断すべきです“娘が使うかも”というのは、いらぬお節介。もしそう思ったら必ず本人に聞いて、本人が“いらないわ” “へえ、そんなものあったのね”という反応なら、迷わず捨ててください。

4:貴金属や着物は自分が元気なうちに譲る

 貴金属や着物といった価値の高いものは、お金に換えられる可能性が高いので喜ばれることが多い。こういったものほどしまい込まず、元気なうちにゆずりましょう。生きている間にゆずらないと、喜ぶ顔を見ることもできません」(老前整理コンサルタント・坂岡さん)

 処分するかどうかの“自分基準”は、使っていてストレスがないかどうかだ。

5:わが子の為にも洋服はできるだけ残さない

「いま使用頻度が低い服や靴は、この先もっと年を取ったら、ますます身に着けなくなるでしょう。ストレスになるので、思い切って手放して」(永井さん)

 洋服や着物は、できるだけ残さない方がいい。もしそれが遺品になったら、処分しづらいからだ。

「子供は、亡くなった親の服を整理する際、〝これはあのときに着ていた服だ〟などと思い出がよみがえってきて、片づけるだけでつらくなるものです。服を処分しないということは、残された家族を悲しませることなのです」(坂岡さん)

 以下のチェックリストを参考に心地よくないものは、捨てたり売ったり、人にゆずったりしよう。

日用品の仕分け、処分品チェックリスト

<服・靴>

□1、2年近く着ていない
□重くて着づらい
□洗濯機で洗えない(クリーニングが必須)
□ヒールが高すぎる靴
□滑りやすい靴

<食器>

□大きすぎる
□重すぎる
□おしゃれすぎる
□電子レンジや食器洗い乾燥機に対応していない
□数枚セットになっている
□デザインが好みではないノベルティや引き出物
□同じものが大量にある

当てはまることが多ければ処分してよい。それでも迷うなら、「グレーゾーン・ボックス」に入れて3か月ほど放置したのち、どうするか決める。

■人形類も自分で処分を

 洋服と同様、絶対に残してはいけないのは、人形やぬいぐるみ、置物など、人の思いがこもりやすいもの。

「そもそも、“顔があるもの”は、誰にとっても捨てにくい。それが思い出の品なら、なおさら手をつけたくありません。実は、私も母が残した人形を捨てられずにいます」(保坂さん)

 洋服、人形は、必ず自分で処分しよう。

教えてくれた人

保坂隆さん/精神科医、永井美穂さん/片づけヘルパー、坂岡洋子さん/老前整理コンサルタント

※女性セブン2021年4月22日号

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