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毒蝮三太夫、外出したがらない母親を心配する娘に「一緒に出かけてあげて」【連載 第5回】

 親子の関係は、お互いが年齢を重ねるにつれて変化していく。生まれてから長いあいだ「心配される側」だった子どもが、いつしか親を「心配する側」になる。大好評の「マムちゃんの毒入り相談室」。今回は、外に出かけたがらなくなった親を心配する50歳の娘からの相談。マムシさんは、どんなアドバイスを贈ったのか!?(聞き手・石原壮一郎)

今回のお悩み:「親にもっと外出してもらいたい」

 親にとって、子どもはいくつになっても「子ども」だって言うよね。テメエのほうがよっぽど心配な状態になっても、もう大人になった子どもを心配してる。親心っていうのはありがたいもんだ。子どもは親が高齢になればなるほど、どんどん心配が増えていく。自分もさんざん心配をかけてきたんだから、お返しだと思っていっぱい心配してやってくれ。

 今回は50歳の女性から、親が心配だという相談をもらった。

「母が歳を取ってから、外に出かけたがらなくなりました。家にこもってばかりだと、余計に老け込むし体力も落ちてしまうので、会うたびに『もっと出かけたほうがいいよ』と何度も促しますが、なかなか重い腰をあげてくれません。もともと人づきあいが苦手で、コロナのことも心配なので、もうしょうがないのかなと思っているのですが……。どうしたらいいのか、アドバイスよろしくお願いいたします」

回答:「娘さんの行きたいところに、一緒に出かけるのがいいよ」

 これは、娘さんが一緒に出かけてあげるのがいちばんいいよ。口で言うだけだと、なかなか動かないだろうな。歳を取って足腰が弱ってくると、どんどん出不精になる。俺はそうならないように家でスクワットしたりスポーツジムに通ったりしてるけど、昔よりもフットワークが軽くなるってわけにはいかないからね。

 娘にしてみれば、親はいつまでも元気ハツラツなイメージがあるかもしれない。だけど、歳相応に体力が落ちたことに気付いてあげないといけない時期が来たってことなんじゃないかな。たしかにコロナは心配だけど、神社とか公園とか密にならない場所はたくさんあるから、そういうところに行けばいいよ。

 親がそれなりに小金を持ってるなら、「今日はあのお店で天丼おごってね」「今日は鰻が食べたいな」なんておねだりするのも手だ。そしたら親のほうも「娘に面倒かけて申し訳ない」なんて思わずに、堂々と連れて行ってもらえるからね。こっちだってそういう楽しみがないと、だんだん面倒くさくなってくるかもしれないしな。

 親に「どこに行きたい?」って聞いても、とくに行きたいところがないなら、娘の行きたいところに行ったっていいんだよ。「買いたいものがあるから」とか「あそこの神社のお守りが欲しいから」とか言って。

 自分が一方的に世話になってると思うのが、親としてはいちばん嫌なんだ。「天丼をおごってあげる」でも「娘が言うから一緒に行ってあげる」でも何でもいい。有用感っていうのかな、自分が果たす役割があると思うことで活力が湧いてくるんだよ。

 家にじっとしてたら着たきり雀になりがちだけど、出かけるとなれば髪の毛を撫でつけたりお化粧のひとつもしてみたりして、身なりにも気をつかうようになる。新しい洋服が欲しいなんて思うかもしれない。お母さんもきっと、今よりグレードアップしてチャーミングになるよ。

 一緒に出かけるのは、子どもにとってもいいことだらけだ。親の足腰の衰えを実感して、こうして歳を取っていくんだなと知ることができる。日常生活を離れて違う場所に行くことで、歳を取ったらこういうところを喜んで、こういうことに興味を示すんだなということもよくわかる。自分だってやがて行く道なんだから、いい勉強になるはずだ。

 一緒に外に出かければ、いつもはできないような話もできるしね。「どうしてお父さんと結婚したの?」「私は小さい頃、どんな子どもだったの?」なんて聞いてみるのもいいんじゃないか。あの世に行ってから「聞いておけばよかった」と思ったところで、もう遅いんだから。

 前に聞いたことがある話でも、また聞けばいいんだよ。過去のことを自分の言葉で話させるのは、認知症を予防する「回想法」っていう手法にもなってる。

 親がだんだん歳を取っていくのは、逃れようのない運命だ。体力が衰えるだけじゃなくて、物事に対して消極的になっていくかもしれない。「前はもっと元気だったのに」「前はもっと意欲的だったのに」と、昔と比べてガッカリしたら可哀想だ。今の状態に合わせて、子どもとしてどんな手助けができるかを考えながら、いい毎日を過ごさせてやってくれ。

→「親が好きになれない…」と悩む人に毒蝮三太夫が目からウロコのアドバイス

→「もう死にたいよ」と親に言われたらどう返すか。毒蝮三太夫がアドバイス

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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。84歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も大好評! 第一回のゲストは俳優の古谷敏さん、第二回のゲストはタレント・女優・歌手のマッハ文朱さん。

たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

超実用 好感度UPの言い方・伝え方

撮影/政川慎治

●「親の無駄遣いが目に余る」と悩む48歳・男性に毒蝮三太夫がズバリ!アドバイス【連載 第3回】

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