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60才からの再就職 就職先や面接の不安を専門家が解説「家事が得意は大きな武器になる」

 60才以降に働くならどんな仕事や業界がいいのだろうか?「長年専業主婦だったけど、夫の定年後は自分のためにお金を稼ぎたい」「年金も不安なのでふたたび仕事をはじめたい」。そんな60代女性に向け、おすすめの就職先や就職活動の基本について、専門家に話を伺った。

60才女性におすすめの就職先・業種6選

「今年60才になる女性の中には、長らく専業主婦で、家族の事情や社会的背景などから、働きたくても働けなかったという環境にあった人もいるのではないでしょうか」

 こう語るのは、シニア世代の生き方や就職事情に詳しいシニアライフアドバイザーの松本すみ子さんだ。

 いまはシニアが活躍できる職場も増えているので、60才という節目に働くことを考えてみるのもおすすめだと、松本さんは続ける。

 とはいえ、長年専業主婦でブランクがある場合、ましてや60才を過ぎて仕事を見つけるのは難しくないのだろうか?

「主婦だからこそスキルをいかせる業種や職種を選べばいいんです」と、松本さん。60才以降におすすめの業種や再就活に向けてのアドバイスを伺った。

1.家事代行サービス

「専業主婦をしてきた人の中には、『私は家事しかしてこなかったから…』と言う方がいますが、いまの時代はむしろ大きな武器になります。

 単身の高齢者や、未婚男性のひとり暮らしの方など、掃除や洗濯、料理などの家事代行サービスを活用する人が増えていくと考えられます。家事代行サービスは、今後も成長していくことが予想されますので、家事経験が豊富な60才以降の女性が必要とされる業界といえますね」

2.飲食業

「飲食業は、女性のホスピタリティや気遣い、アイデアをいかして働ける職場です。コロナ収束後、インバウンド需要が復活すれば、求人が増えていくでしょう」

 居酒屋の昼間の時間帯や、ファミリーレストランのパートなら、時短で勤務できるところも。
 
3.宿泊業

「主婦はいわば家事のプロであり、気遣いもできる能力の高い人も多いはず。お客様へのきめ細やかなサービスを求められるこの業界では重宝されるでしょう。和風旅館などでは、着物の着付けが得意な人にはなおおすすめです」

4.コンビニエンスストア

「コンビニは街のインフラともいえます。商品を売る以外に、住民票の写しの発行や税金の支払いなど、役所のような機能もありますし、高齢者や子供たちを見守る役目を担うコンビニ店舗もあります。お客さんの多様なニーズに応える必要があり、機転が効くベテラン主婦は貴重な戦力になりますね」

5.ファストフード・お弁当屋さん

「ファストフードやお弁当屋さんは、主婦の料理経験をいかせる職場といえますね。家庭的な親しみやすい接客も歓迎されます」

6.自営業

「雇われることばかり考えるのではなく、自分の得意技ややりたいことを見つけ、自分なりの仕事を自分ではじめることも考えてみましょう。特に外出の難しい介護中の人には、ぴったりな方法です。

 手芸が得意なら専門サイトで販売したり、料理が得意なら料理教室を開いたり、子供たちにピアノや英語や勉強を教たりするのもいいでしょう。自分の特技をいかす道を探ってみるのがおすすめ。得意な道を見つければ、一生働くこともできるかもしれません」

 一方で、60才を過ぎて新たに働く場合、体力的な負担がある業種はおすすめできないという。

「危険を伴う仕事や体力が必要とされる職場は、おすすめできません。自分のペースで長く続けられる仕事を選ぶことが大切ですね」

60才からの再就職Q&A…働く不安を解決!

 60才からの就職活動について、不安なことや疑問をQ&A形式で解説する。

Q.60代で資格もないけど採用される?

A.「事務職であれば、パソコンスキル(最低ワード、エクセル)は必須です。また、応募した業種に関係したスキルや資格を持っている人は強みになります。

 しかし、シニア世代の採用に重要視されるのは、むしろ人生経験の豊富さからくる判断力や指導力、若い世代とのコミュニケション能力や協調性です。たとえば接客業であれば、大人の振る舞いができることが、資格よりも必要とされるでしょう」

Q.年齢的に正社員の自信がない…パートのほうがいい?

A. 「年だから体力的に正社員は無理かもと考えるのは、早計。年を重ねるほど体力は個人差が大きくなるものです。

 年齢で仕事の形態を考えるのではなく、『体力には自信がある』『人に負けないスキルがある』『やる気がある』『こんなことをしてみたい』といった、ご自身のしたいこと、できることを武器に、チャレンジすればいいのです。

 50代でやる気がない人もいれば、80代でまだまだ現役の人もいます。自分で自分を狭い範囲に閉じ込めずに可能性を求めることです」

Q.面接で気をつけることはある?

A.「面接までに、自分に何ができるか、どんなスキルがあるか、何に関心があるか、どのような働き方をしたいかといったことを、明確化しておきましょう。

 採用されたいがために、『何でもできます!』とアピールする人もいますが、答えが曖昧だと理解されず、むしろ『どの仕事もあまりできないのではないか?』と思われてしまうかもしれません。

 面接では自分の考えをしっかり主張すること。謙虚すぎる必要はありません」

Q.履歴書・職務経歴書に書くべきことは?

A.「自分の経験やスキル、資格はもちろん、得意なこと、自信のあることを具体的に明記します。

 また、持病についても正直に書いたほうがいい。持病のことは隠しておこうと思いがちですが、健康診断などで必ず分かります。分かった時に、採用時に知らせなかったということで気まずくなって、結局辞めてしまったという人もいます。

 持病があったとしても、会社が問題ないと判断することもありますし、本当に欲しいスキルややる気のある人なら採用されることもあります」

***

「日本は超高齢社会です。60代・70代は支えられるのではなく、社会を支える一員としての役目も期待されています。

 60才だから、70才だからと…と諦めずに、どのように働いて生きていけば、よりよい人生を送ることができるかを考えてほしいと思います」

教えてくれた人

シニアライフアドバイザー・松本すみ子さん

有限会社アリア代表(https://www.arias.co.jp/)、NPO法人シニアわーくすRyoma21 (http://www.ryoma21.jp)理事長。キャリアコンサルタント、産業カウンセラーでもあり、企業や自治体などで「シニアのセカンドライフの生き方やと働き方」などについての講座の企画・運営、講師も務める。著書『定年後も働きたい。人生100年時代の仕事の考え方と見つけ方』、『55歳からのリアル仕事ガイド』など。

取材・文/本上夕貴

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