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高齢の親に教えるスマホ操作の基本 最も大事な「タップ」に苦戦するシニアが多い!

「タップって何?」「ドラッグってどういう意味?」高齢の親がスマホを使い始めたけれど、そもそもどこを押せばいいかわからないし、押し方の力加減もわからない…。そんなスマホ初心者のシニアに操作方法を教えるときに役立つノウハウを解説します。

スマホ画面の狙ったところが押せない高齢の母

「80代の母がついにスマホデビューをしたのですが、“アイコンを押す”(タップする)という、たったそれだけの操作ができない…。『すべてのアイコンがプルプルと揺れ始めた!』って大騒ぎでした」(50代女性)

「スマホの操作に慣れている人にとっては“なんで?”と思われるかもしれませんが、“押す”という操作が苦手なシニアは意外と多いんです。

『狙ったところが押せない(タップできない)』、『力加減がわからず長押しになってしまう』など、シニアのみなさんは最初にぶつかる壁ですね」

 こう話すのは、シニア世代向けのスマホやパソコン講座を開催しているスマホ活用アドバイザーの増田由紀さんだ。

 ダイヤルボタンや十字キーを押して操作するガラケーと違って、スマホは画面を直接指で触れて操作しなければならない。

「スマホは、“画面を押す”という動作ひとつとってもさまざまなやり方があります。

 トンッと軽く1回なのか、トントンッと2回続けて押すのか、それともグーッと長く押すのか、押し方によってできることが違ってきます。それが直感的に操作できるという利点でもあるのですが、スマホ初心者の高齢者にとっては難しい場合もあるんです」

高齢の親に教えたいスマホの操作の基本3つ

 まず、基本操作として覚えておきたいのが、【1】タップ、【2】ピンチアウト・ピンチイン、【3】ドラッグの3つ。

 3つの操作の中でも最初にマスターしたいのが、あらゆる操作の基本となる“タップ”。タップが上手にできるかどうかで、スマホライフの快適さが変わってきますよ」(増田さん、以下同)

 それぞれの操作方法を、詳しく確認していこう。

【1】タップ(選ぶ):すべての操作の基本

 タップとは、指先で画面を軽く1回触れる操作。何かを選ぶときの操作で、メニューを決定するときや、アプリを起動するときなど使う頻度が最も多い。

「タップは、指先で画面に“トンッ”と軽く触れる程度。テーブルの上のゴマ粒を指先にくっつけて拾うようなイメージです。

 スマホ教室の生徒さんには、狙ったところが押せなくてイライラしてしまったり、自分ではちゃんと押しているつもりなのに反応しなかったりして、どうして自分はできないんだろうと自信をなくしてしまう人も。『タップ』で躓いてしまう人が結構多いんですよ」

タップが上手にできない原因は…

・押す力が強すぎるor弱すぎる

・目的の場所に命中していない

・別の場所も一緒に押してしまっている

・押す指以外の爪や他の指が画面に当たっている 

・指先が乾燥している などが考えられる。

「本人は押しているつもりでも、横からみ見るとちょっと下にズレてしまっているというケースも。

 また、指先が乾燥していると、タッチパネルの反応は鈍くなります。指先にはぁっと息を吹きかけるなどして対処してみてくださいね」

 また、狙ったところを押せないとこんな不便なことも…。

「間違った画面を出すと、必ず“戻る”という作業をしないといけなくなります。

 本来なら、2回の操作ですむことも、3回、4回、5回…と余分な操作をしなくてはいけなくなり、その結果、『スマホって面倒だし大変…』と、スマホに対してマイナスの感情が生まれてしまいます。

 思い通りにタップができるようになれば、そんなストレスを感じることもなくなりますよ」

タップをマスターするための方法とは?

「タップの命中率を上げるには、練習あるのみです!

 例えば、スマホで『介護ポストセブン』のページを開いて、左上のメニュー一覧を出します。介護制度、介護施設、芸能人…などのカテゴリーが出てきますが、それらをひとつずつタップして、ちゃんと自分の読みたい記事が一度で出せるかどうか試してみてください」

「いつも、自分が読みたいメニューより下の記事が表示される場合は、指先が寝てしまっているのかもしれません。それならもう少し指を立ててみよう…とか何回か繰り返しているうちに、自分のクセに気づくと思います。

 自分がタップしたいものが1回で押せるようになったら、スマホの操作の7割は手に入れたと思っていいでしょう。“タップを制したものはスマホを制す”といえるくらい、スマホにとって大切な操作なんです」

【2】ピンチアウト・ピンチイン:画面の拡大・縮小

 ピンチアウトとは、画面を親指と人差し指で広げることで、画面を拡大するときに使う。ピンチインとは、2本の指で画面を軽くつまむことで、画面を縮小するときに使う。

「ピンチアウト・ピンチインは、画面”を軽くつまんだり広げたりする操作。指の操作をお教えしていたとき、私のマネをして空中で指を動かされていた方もいましたが(笑い)、みなさんわりとスムーズにマスターされていますよ」

 地図を拡大表示したり、小さくて読みにくい文字を大きくしたりするなど、シニアにとってよく使う操作なので、ぜひマスターしておこう。

【3】ドラッグ:画面の表示や何かを移動するときに使用

 ドラッグとは、画面に指を触れたまま、ずるずると引きずる感じで上下・左右に画面を動かして、見えていない部分を表示させるときなどに使う。

「情報が多いと、スマホの1画面では収まらず、ちょうど長い巻物の一部が表示されているような感じになります。画面に指を触れたままゆっくり動かす(ドラッグする)ことで、まだ見えていない巻物の続きを見ることができます。

 また、アイコンやアプリを動かすときにも、このドラッグという操作を使います」

 基本操作をマスターして、スマホライフを楽しもう!

教えてくれた人

増田由紀さん

スマホ講師の増田由紀さん

2000年に千葉県浦安市で初心者向けのパソコン教室「パソコムプラザ」を開校。2020年10月より全国どこからでも学べるオンラインスクールにリニューアル。スマホ、iPad、パソコン講座の講師をはじめ、講座の企画、執筆、講師養成などを行う。丁寧な解説と、わかりやすい教材が人気。シニア世代のスマホの利活用に力を入れている。『いちばんやさしい60代からの』シリーズ(日経BP)著者。デパートカルチャー講座、新聞・雑誌への執筆・監修など多数。

取材・文/鳥居優美 イラスト/朝倉千夏

●高齢者向けスマホ教室での実話…忘れがちなパスワードは「スマホノート」で管理を

●シニアのスマホ選び4つの注意ポイント 高齢者向けより教える人と同じ機種にするのがおすすめ

●高齢の親に教えたい“スマホ”が必要な3つの理由|始めるなら一番若い今でしょ!

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