国際情報

東電は一気に5段階、中部電力、シャープも格下げラッシュ

日本企業格下げラッシュ

 国や企業の債務を履行する能力、つまり「信用力」を表わしている「格付け」。震災後、矢継ぎ早に日本国債や東京電力を始めとする民間企業が「格下げ」されたり、「格付けの見通しをネガティブ」と位置付けられたりするなどした。“格下げラッシュ”について20年近く米大手格付け会社・ムーディーズに在籍した森田隆大氏が解説する。

 * * *
 米大手格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は、5月30日、国内最大の社債発行企業である東京電力の会社格付けを「BBB」から5段階下の「Bプラス」に引き下げた。これは投資家が社債を購入する際「投機的要素が強い」とみなされる水準である。

 格下げの理由は、原発事故で金融機関の債権放棄の実施の可能性が高まっているためとしているが、信用力の高い発行体が格付けに織り込まれていない予測不能のリスクを理由に、このような急激な格下げに見舞われたのは極めて異例だ。

 東電だけでなく、震災後は「格下げ」「格付けの見直し」「ネガティブ」などの格付けに関するニュースが相次いだ。掲載したの表はその一部だが、日本国債を含めて「格下げラッシュ」だったことが分かる。

 電力業界のアナリストを長く経験した私の元には、東電の信用評価についての問い合わせが相次いでいる。「格付けはどこまで下がるのか」「東電はデフォルトするのか」といった将来を不安視する声が多い。

 格付けの影響力は、特に発行体の信用力が大きく変化した時に、無視できない。例えば、昨年から深刻な財政危機が続いているユーロ圏では、ポルトガル、スペイン、ギリシャ、アイルランドなどで国債や大手銀行などの格付けが相次いで引き下げられた。そのことで市場が過敏に反応し、結果的に財政危機がさらに深刻化するという悪循環に陥っている側面があることは否定できない。信用力の将来像を評価する格付けが逆に実体経済に影響を与え、一国の命運を左右するほどの影響力を持つとさえ言える。

 だが、その一方で、格付け会社は営利を目的とした民間企業に過ぎない。「いたずらに不安をあおり、リスクを増大させているのではないか」といった批判があるのも、また事実である。

 確かに、前出のムーディーズ、S&Pにフィッチ・レーティングスを加えた格付け大手3社は数々のミスを犯している。2001年には破綻直前のエネルギー大手のエンロンに「投資適格」等級の格付けを付与していたし、2007年にはサブプライムローンに上位の格付けを与え、金融パニックを引き起こしたと批判されている。

※SAPIO 2011年6月29日号

関連記事

トピックス

学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
尊富士
5月場所休場の尊富士 ケガに苦しみ続ける相撲人生、十両転落で「そう簡単に幕内復帰できない茨の道」となるか
NEWSポストセブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
世紀の婚約発表会見は東京プリンスホテルで行われた
山口百恵さんが結婚時に意見を求めた“思い出の神社”が売りに出されていた、コロナ禍で参拝客激減 アン・ルイスの紹介でキャンディーズも解散前に相談
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン