名医が的確な診断で薬を処方した場合も、ヤブ医者が的はずれな薬を処方した場合も、窓口で請求される金額は基本的に同じ……というのは日本の医療制度の大問題のひとつだ。こうしたおバカ規制の背景について、政策工房社長の原英史氏が解説する。
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高度な医療を提供するためには、きちんと設備投資をして最先端の医療機器を導入する必要がある。しかし、日本の医療制度はこうした設備投資を制約しかねない仕組みであることをご存じだろうか。
大阪府泉佐野市にある「ゲートタワーIGTクリニック」はがん治療のために、血管内にカテーテルを通して薬剤を投入する特殊な療法に特化し、専門の医師や放射線技師などを集めた医療施設だ。
この療法は、血管造影画像とCT画像をリアルタイムで同時に見ることが必須なため、小規模のクリニックながら1台1.5億円するCTスキャンと血管造影のハイブリッド装置を2台備えている。
だが同クリニックの堀信一院長によれば、こうした高度な医療に特化した専門型のクリニックは日本ではなかなか出てこない。
「最新の高価な機器を購入して高度な医療を提供しても、得られる診療報酬は古い機器で治療するのと同じで、割に合わない仕組みだから」だという。
日本の医療制度は患者が窓口で支払う「値段」を国が決める。単価が上げられないため、医療サービスの質を上げるよりも、標準的な治療で多くの患者を集めるほうが合理的な仕組みなのだ。
ちなみに堀院長は、特殊な治療を求める患者を国内外から集めることに活路を求めるが、それでも規制の壁は厚い。
※SAPIO2013年2月号