ある動作をすると足の付け根に激痛が走るなど、特定の動作で股関節付近に痛みが起こるのが股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)だ。ゴルフやジョギングなどのスポーツや、自転車・バイクでの事故で起こる外傷の一種だが、股関節唇は軟骨でレントゲンでは写らないので発見されにくい。治療が難しい症例もある上、もともと股関節の臼蓋(きゅうがい)が若干浅い人の中には変形性股関節症になることもあり注意が必要だ。
股関節は骨盤の両側にあり、下肢と連結している。骨盤にある臼のような丸い窪みの臼蓋に、球形の大腿骨頭がはまり込んでいる関節で球運動を行なっている。これで脚を左右上下、回転など動かすことができる。股関節唇は臼蓋をぐるりと円形に縁取っている軟骨の組織で、骨頭が飛び出したり直接あたるのを防ぎ、股関節の動きを安定させるクッションの役割を担う。
高さは約1センチで、幅は先端が1ミリで臼蓋に付いている根元部分は3ミリ程の三角錐の形をしている。この軟骨の先端が裂けたり断裂し、切れた軟骨が関節内に挟まったり、骨頭が不安定になり擦れて炎症を起こし、痛みの元になるのが股関節唇損傷だ。
日産厚生会玉川病院(東京都世田谷区)の松原正明股関節センター長に話を聞いた。
「股関節唇損傷は瞬間的にしゃがんだり、90度以上深く股関節を曲げるといった動作をすると、足の付け根付近に激痛が走ります。普通に歩くだけでは症状がなく、ある特定の動作で必ず痛みを感じるのが特徴です。しかし軟骨はレントゲンには写らず、的確な診断がなかなかつきません」
原因はサッカーやラグビー、バレーボールなど身体を瞬間的に捻じる、しゃがむなどの激しい動作を継続するスポーツで起こるが、近年はジョギングやゴルフなどで、痛みを訴える人も増えている。
さらにもともと臼蓋が浅い人に起こりやすく、バイクや自転車などで強くひねるような事故に遭った人にも起こることがある。痛みを訴え整形外科を受診しても診断がつかないことが多く、痛みがあっても、2、3か月安静にしていることで症状が治まることもある。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年5月24日号