芸能

『半沢直樹』にはなし 連ドラに主題歌は必要なのか評論家考察

 ドラマ『東京ラブストーリー』なら小田和正の『ラブストーリーは突然に』、『101回目のプロポーズ』ならCHAGE and ASKAの『SAY YES』――過去の人気ドラマは主題歌とセットで、多くの人の記憶に刻まれている。しかし、最近のヒットドラマですぐに主題歌を思い浮かべられる作品はいくつあるだろうか。『半沢直樹』や『あまちゃん』に至っては主題歌がない。10月スタートの連ドラでは主題歌がある作品がほとんどだが、今一度考えてみたい。連ドラに主題歌は必要なのだろうか? 音楽評論家の富澤一誠さんに聞いた。

 * * *
『ラブストーリーは突然に』、『SAY YES』をはじめとして、過去のドラマ、とくに1990年代の人気ドラマは内容と主題歌がリンクしていました。

 登場人物にセリフで言わせるのではなく、シーン中に曲が流れることでその登場人物の気持ちを表現してくれてもいました。だから、曲によって登場人物の喜びや悲しみといった感情が増幅されたりする効果も生んだ。ある意味では、主題歌は脚本の中の“セリフ”のひとつだったんです。

 だから、われわれが曲を聞いたときに、ドラマのシーンを思い出すことができ、逆にドラマを見たときに、曲を思い出すことができるのです。

 当時はドラマのプロデューサーがレコード会社や歌手のところに脚本を持っていき、“この脚本に合う曲を書いてほしい”とオファーをしていました。だから、脚本と曲の内容がピタリと合っているんです。相乗効果が生まれるのも当然です。その結果、この時代、ドラマとのタイアップによって多くのヒット曲が生まれました。

 それがやがて、テレビドラマの主題歌にすれば売れるということで、レコード会社が積極的にテレビ局に働きかけるようになった。テレビ局としても音楽に制作費をかける必要がなくなるというメリットがある。そして、極端な話、どんな曲でもいいからくっつけようということになってしまったんです。タイアップ乱発です。その結果、ドラマ用に作るのではなく、でき上がっている曲をドラマの主題歌にするケースも増えてきた。

 すると、ドラマの視聴者にとっては“どうしてこのストーリーでこの曲なの?”“このシーンに合わないのでは?”という違和感が生じることも出てくるわけです。ドラマと関連性がない曲が主題歌になっているケースも目立ちました。もちろん、今でも必然性があるものはドラマと曲がリンクしているけれど、ビジネス的な狙いがあってタイアップにしました、というものはどうしても違和感がある。相乗効果も生まれません。

 だから、今はドラマ発の主題歌がヒットしづらいのです。

 そうなると、そもそも主題歌は必要ないのでは?という流れが少しずつ出てきたのが現在だと思います。

『あまちゃん』のオープニングテーマ曲も『半沢直樹』のテーマ曲も、歌詞はなくてもドラマの世界観と合っていましたよね。それはドラマの内容に合うように脚本を踏まえて、音楽家が制作した曲だからです。そこがブレていなければ、歌詞があるかどうかはそれほど重要ではないのです。『半沢直樹』は、テンポが速くて、次々に展開していくドラマだから演出上、曲だけのほうが緊張感が出て、歌詞が不要という面もあると思います。

 結局、ドラマの内容にあった曲を作る。歌詞が必要なものはつけ、不要のものにはつけない。そういう当たり前のことが重要なのです。ドラマの主題歌も、今一度、原点に戻って作るべきということではないしょうか。

関連記事

トピックス

嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン