ビジネスマンが英語で仕事をする時に失敗する一番大きな理由が、「和文英訳」で考えてしまうことだ。特に部下や取引先に何かを問い質したいようなケースで、それは相手にとって攻撃的に聞こえてしまう。
新刊『大前研一の今日から使える英語』(小学館)を監修した経営コンサルタント・大前研一氏が、相手を非難せずに失敗してしまった理由を聞きたい時にふさわしい、丁寧に聞こえるフレーズを紹介する。
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Tell me why you did this.
「どうしてこうしたのか教えて」ということを和文英訳で話すと上記のようになります。しかし、これは命令形です。ネイティブには「おい、お前、なんでこんなことをしたのか言ってみろ」と乱暴なニュアンスで受け止められてしまいます。pleaseを付けても×。相手は自分の非を指摘され、激しく叱責されたと感じてしまいます。
相手を傷つけずに理由や原因を聞きたい時は、「I」と自分を主語に持ってくる言い方が有効です。
I want to know why this happened.
(どうしてこういうことになったのか知りたいのですが)
ポイントは、youという言葉を一言も使っていない点です。「私が教えてほしい」というニュアンスですから、相手が「自分が責められている」とは感じないフレーズです。次のような言い方も使えます。
Why do you think this has happened?
(どうしてこんなことが起こったとあなたは思いますか?)
こちらも「教えてほしい」というニュアンスになります。同じことを聞くにしても、Tell me ~ では解決には向かいません。相手が緊張しないで問題解決に協力してくれるように促す言い方を心がけましょう。
役立つフレーズをもう1例、挙げましょう。たとえば、「赤字になってしまった。どうしてこんなにコストが高かったのか?」と問い質したい時。I want to reconcileという表現が使えます。reconcileは、「仲直りさせる・和解させる」のほか「一致させる」という意味を持ちます。つまり「私自身の頭の中で整合性を持ちたい、理解したい」という意味になるのです。黒字だった前月と赤字の今月の数字、2つを突き合わせて……
I want to reconcile these two numbers.
(この2つの数字のつじつまを合わせたい)
そう話せば、相手を責めることなく(むしろ自分に非があるように装いながら)説明を促すことができます。
※『大前研一の今日から使える英語』(小学館)より