戦後の教育は、文科省が認定したカリキュラム、つまりは学習指導要領に縛られてきた。だが、各教科をバランスよく学ばせることは、ともすれば生徒それぞれの個性や才能を削いできたのではないか。そんな反省を踏まえ、日本型教育の限界を突破する学校が今年4月に開校したルネサンス大阪高等学校である。政策工房社長の原英史氏がリポートする。
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筆者がこの学校に注目するのは、単に「株式会社立」といった形態が理由ではないし、増加する「通信制」だからでもない。この学校が革新的なのは、「通信制プラス」という新たなチャレンジに取り組んでいるところである。
同校のパンフレットを見ると、「医歯系コース」「スーパー進学コース」「スーパーサイエンスコース」「スーパーグローバルコース」などのコース設定がなされていることに目がいく。例えば、「医歯系コース」は「医学部・歯学部などの難関受験に特化した学習」、「スーパーサイエンスコース」は「専門性を高め、研究により深化した知識を身につける」などの目標が掲げられ、一般的な「通信制」とはかなりイメージが違う。
どういうことなのか、同校の桃井隆良校長に話を聞いた。
「全日制高校の授業では、学習指導要領に定められた科目の授業を全員が受けなければなりません。例えば、自分の好きな科学の実験だけをずっとやらせてあげるとか、英語の勉強に思い切り集中させてあげるといったことは、学習指導要領のもとでは認められません。すべての科目をまんべんなく学習しないといけないことになっているからです。
しかし、突出した教育プログラムを提供する学校もあってよいのではないでしょうか。そこで『通信制プラス』、すなわち『通信制』に加えて『通学』コースを設けることを考えたのです」
つまり、この学校では学習指導要領で求められることは「通信制」でこなす。その上で学校での授業は、いわば課外活動として、「実験ばかりやる」とか「英語に集中」といった突出したプログラムを、学習指導要領に縛られずに設計しようとしているわけだ。
これは、最近注目されつつある「反転授業」(講義は生徒がそれぞれビデオ授業などを視聴し、学校の教室は実習、個別指導、ディスカッションなどにあてようという取組。佐賀県武雄市などでも取組が始まっている)をさらに突き進めたものとも考えられる。安倍内閣の掲げる「教育の革新」につながる新たなチャレンジといってよいだろう。
※SAPIO2014年12月号