キャリーケースを転がす女の子が多いのは、圧倒的に新宿、渋谷、池袋です。新宿でキャリーケースを転がしている、地下アイドルではなさそうな女の子に付いていくと、ライブハウスにたどり着きました。しかし、彼女達は出演者ではなく、観客だったのです。
新宿には、地下アイドルが頻繁に出演するライブハウスのほかに、ヴィジュアル系バンド専門のライブハウスも存在します。そこに足繁く通う女の子達もまた、キャリーケースを転がしているのでした。彼女達に聞いてみると、中には衣装やメイク道具が入っていると言います。
ヴィジュアル系バンドのライブでは、観客の女の子が、その時期に合わせたコスプレをする風習があり、ほかにも好きなミュージシャンの好きなアニメキャラや、本人の衣装のコスプレをする女の子もいるそうです。
これに準じて、彼女達の中にはコスプレやアニメを好きな女の子も多く、グッズを買いに行く日は、まず持ちきれないという理由で、次に人目に付かないように持ち帰りたいという理由から、キャリーケースを使用しているそうです。
彼女達にキャリーケースを定着させたのは、人気ファッションブランド「LIZ LISA」であると考えられます。ピンクを中心とした生地に、花柄やリボン、フリルを多用するLIZ LISAは、地下アイドルにも、ヴィジュアル系バンドのファンにも、アニメ好きな女の子にも、共通してフォロワーの多いブランドです。
当ブランドでは2005年頃より、福袋の入れ物としてキャリーケースを採用しており、中身の衣類込みで、1万円台で購入できる手軽さと、従来のキャリーケースには珍しい、ピンク、レース、大きなリボンを仕様したデザインで、若い女性がキャリーケースを手にする機会をつくってきました。
現在、カバン業界でも、若い女性間のキャリーケースブームは認識されているそうで、女性向けにデザインされたキャリーケースが増えてきています。
私も例に漏れず、地下アイドルとして活動を始めた7年前は、LIZ LISAのキャリーケースを使用していました。新人の地下アイドルが集まるライブの楽屋に、LIZ LISAのキャリーケースが何台も並んでいたのを覚えています。地下アイドルはライブの回数が多く、月に2、30本出演する子も珍しくないため、キャリーケースが壊れやすく、頻繁に買い換えなければなりません。また、LIZ LISAのキャリーケースは、福袋で年に一度、新作が発売されるのも、地下アイドルに人気の秘訣でしょう。
現在は活動初期と比べて、物販の量が増えました。特に書籍を出版してからは、旅行用のシンプルで頑丈なキャリーケースを使用しています。先日、キャリーケースをなくして本当に困りました。物販を収納しきれるほど大きな手持ち鞄はなく、あったとしても5分と持ち上げられません。周囲の地下アイドルの方々も、活動が長くなるにつれ、旅行用のキャリーケースを使用する人が増えています。
時々、背後を気にせず、人混みでごろごろとキャリーケースを連れている女の子も見かけますが、あれは可愛らしいデザインのキャリーケースに二輪タイプの製品が多いためです。日常は振り返らず、夢や、好きなミュージシャンや、アニメキャラをまっすぐ追いかけている最中なので、大めに見て……もらえないですよね……。