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浦和レッズ監督が「オズの魔法使い」と崇められる理由

天皇杯優勝を果たし撮影に応じるオリヴェイラ監督(時事通信フォト)

 それは、J1最終節(12月1日)のFC東京戦の試合後会見の席だった。「私から一つお話をしたいと思います」と自ら切り出したのは、4日後に控えた天皇杯準決勝・鹿島戦との大一番に向けたサポーターへのメッセージだった。

「水曜日の天皇杯準決勝の前日練習、移動日になりますが、その前の練習が通常は非公開になります。メディアに対してもファン・サポーターの方に対しても、試合前日がレッズでは非公開練習となってきました。今回は公開にして、たくさんのファン・サポーターの方々に来ていただいて、準決勝に向けて選手たちにエネルギーを与えてもらいたいと思います」

 今シーズン頑なに貫いてきた非公開練習を公開にして、大勢のサポーターの来場を呼び掛けたのだ。

 指揮官の動きはこれにとどまらなかった。その日の夜、ホームでの最終戦が終わって賑わう浦和の街に関係者とともに現れると、多数のレッズサポが集うことで有名な焼き鳥店「酒蔵 力」に入店した。

 オリヴェイラは居合わせたサポーターたちと飲み交わし「サッカーが呼吸する街」を体感しながら、前日練習への来場を呼びかけたという。驚いたことにこの指揮官は、単にアドバルーンをぶち上げるだけではなく、自ら現場の根回しの仕事までこなしたのだ。

 迎えた前日練習日。指揮官の意向に反応したサポーターが続々と大原練習場に集結した。

 平日の日中にもかかわらず駆け付けた約350人のサポーター。練習場の周囲には83枚もの横断幕を張り巡らされ、応援旗がうち振られる中で「浦和レッズ!」コールが叫び続けられた。クラブ関係者も見たことがないと言うほどの光景だった。

 日本一のサポーターの力を受けとめたチームは、鹿島との激闘を制し、12月8日の決勝にコマを進める。

 決勝2日前。オリヴェイラはまたしても躊躇なく「明日も公開練習です」と明言。そして、胸の内をこう明かした。

「もちろん、どの試合も重要であり、これをやっているから他の試合と重要度が違うわけではありませんが、(今回の天皇杯準決勝、決勝は)特別な状況であると思います。これを1年を通じて毎試合やっていたらファン・サポーターのみなさんも選手も疲れてしまうと思いますが、毎回やることではなく、この特別な状況で、浦和の特別な情熱を選手たちに感じさせたいのです」

 ここ一番でこそ発揮されるオリヴェイラの手腕。これぞ「オズの魔法使い」の真骨頂なのだろう。

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