2016年7月、相模原障害者施設殺傷事件が起きた「津久井やまゆり園」前の献花台(AFP=時事)

2016年7月、相模原障害者施設殺傷事件が起きた「津久井やまゆり園」前の献花台(AFP=時事)

 手に負えないと判断されると利用者は施設を断られるケースがある。たとえば強度行動障害などは本当に難しく、施設を転々とする事例もある。それでも最終的に誰かが引き受けなければならない。中井やまゆり園もまたそうした役割を担っていた。

「それが仕事、と言われればそれまでですが、この問題は現場の職員に押しつけ、非難するだけでは解決しないと思うのです。何より人手が足りない、待遇が悪い。この(中井やまゆり)園は公立ですからお給料も待遇も民間(社会福祉法人など)よりずっと良いと思いますが、それでも仕事内容に見合っていると思えません。同じ仕事をしてきたからというわけでなく、本当にそう思うのです」

 何より待遇の改善だと語る。浅慮な処罰やその施設だけの問題に矮小化しては解決しない、それほどまでに、日本の福祉の現場は限界ということか。

「虐待は絶対にいけません。しかし虐待にまで追い詰めるのは、利用者の行為だけではないと思うのです。他人事、綺麗事だけでは虐待は無くなりません。社会生活の完全に難しく帰る場所もない利用者がいる。職員は常に限界。これが現実です」

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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