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在宅でも「看取り」は可能 老親の願いを叶えるために家族が「する」こと「しない」こと

小笠原文雄さんはこれまで在宅看取りを1800人以上、一人暮らしの看取りを120人以上経験してきた。日本在宅ホスピス協会の会長も務めている

小笠原文雄さんはこれまで在宅看取りを1800人以上、一人暮らしの看取りを120人以上経験してきた。日本在宅ホスピス協会の会長も務めている

 人生の最期は家で過ごしたいと願う人は多い。厚生労働省が2017年に実施した調査では63.5%が「自宅で最期を迎えたい」と希望している。しかし実際は、自宅で亡くなるのは17%、病院で亡くなるのは66%と希望を叶えている人は少ない。訪問看護師として在宅医療に長年携わる「ケアーズ」代表の秋山正子さんは、「訪問診療や訪問介護、介護保険サービスをうまく利用すれば、在宅での看取りは可能」だと話す。

「最期は施設で過ごしたい人もいるし、在宅がすべてではありません。ですが、ひとりで暮らす親でも本人が望むなら、日々の暮らしを大切にしながら旅立つことができます」(秋山さん)

 親を看取るのはまだ先だと思っていても、急な事故や病気で倒れてしまうことはある。「いつか」「そのうち」と先延ばしにせず、早めに「人生会議(ACP)」を始めておくと安心だ。

「ACPとは、『最期はどう過ごしたいのか』『何をしてほしくないのか』『大切にしたいことは何か』など、望む医療やケアを家族や信頼できる人と話し合い、共有しておくことです。

 65才を過ぎれば、いつ何が起きてもおかしくありません。実際、朝、元気にバス旅行に出かけた父親が旅先で転んで骨折。脳血管疾患があることがわかったのですが、さらに入院した病院でがんが見つかり余命わずかと告知を受けたというケースもありました。人生何があるかわからないというのが実感です。元気なうちに延命治療の希望などを話し合っておくことが、望まない治療を防ぐことにもなるのです」(秋山さん)

 とはいえ、元気な親に最期の過ごし方や延命治療の話を聞くのは、なかなか難しいもの。まずは芸能人の訃報やドラマの話題などを手がかりに、死生観を聞くことから始めるといい。

御本人の安心と家族の安心は違う

 いざ在宅診療を受けることになれば、医師や介護の専門家が本人と家族などを交えてACPを行う。『最期まで家で笑って生きたいあなたへ』著者で医師の小笠原文雄さんが説明する。

「ACPには家族、医師、看護師、介護士、ケアマネなど、患者さんのケアに関わる人はできる限り参加します。ACPを行い、医療と介護の体制を整えることで、一人暮らしでも笑顔で旅立つことができるのです。

 当日参加できなかった人には、後で内容を必ず伝えます。というのも、最期まで家にいたいという願いを親族に伝えていなかったために、救急車を呼ばれて病院で亡くなった人もいるからです。ACPは繰り返し行うので、途中で気持ちが変われば変更することができます」

 親の希望を叶えたいと思っても、“夜中に苦しみだしたらどうしたらいいのか”“24時間介護ができるのか”と不安が残る。「家族の安心はご本人の安心ではないことを知ってほしい」と小笠原さんは言う。

「入院していれば家族は安心かもしれません。でもまもなく死ぬとわかっている人が、ギリギリまで延命治療を受けることは、ご本人にとって苦痛となる。医療や介護をプロに任せれば、家族が体を使って介護する必要はほとんどありません。トイレに行くのが難しくなったとき、『尿道留置カテーテル』を使うことには抵抗を感じる患者さんも多いですが、実際に使ってみると、なんと8割の人が喜ばれるのです。

『夜間セデーション』といって、夜だけしっかり睡眠薬を使って熟睡させることで、痛みや不安を緩和することもできます」(小笠原さん・以下同)

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